France フランス
Bordeaux ボルドー地方



Medoc メドック地区
Pauillac ポイヤック村

メドック格付け第1級(5大シャトー)

Ch. Lafite-Rothschild
シャトー・ラフィット・ロートシルト
ポイヤック (CS70,M15,CF13,PV2)
('74 \20,000位)('75 \43,000)('79 \25,000)('80 \15,000位)('00 プリムール)

 メドック格付け第1級の中でも筆頭の位置を務める銘酒中の銘酒。コンティ王子とのロマネ・コンティの畑の取り合いをしたことでも知られるマダム・ポンパドールが晩餐の席で欠かさなかったと言われるのが、このラフィット。1級格付けの中で、最も広い100haの畑から約2万5千ケースのワインが生まれます。収穫時には250人もの収穫人を雇い、ブドウが熟するのを待って一気に行われるという事。

 1974 : 憂いを含む優しい熟成香は、飲み頃を過ぎた感は否めません。ただそのワイン全体が持つ酒質はいままで頂いたラフィットのイメージに極似しているのです。生まれた年に恵まれなかったワインが時間と共に線の細さを感じさせながらも、決して自己の個性は崩さないワインの伝統。
 1975 : このワインの素晴らしいところは、常に魅了する優雅さなのでしょうか。飲み頃を思わす優しい果実に樽の風味、そして規律あるタンニン。そのバランスは格付け通りの1975です。
 1979 : 初めてこのワインを頂いたのが1979年。その時の印象は繊細、優雅。世間の評価も何故か他の1級格付けに比べて、地味な感じがする。今回、このラフィットをいただいて、ふと思った事。それは「このワインは、飲む人にもデリカシーが必要」という事。
 格付け第1級の筆頭、今でもその評価は変わらない。いかに新世界で美味しいワインが造られようと、このワインが持つものを表現するのは、最も困難。「精緻、優美」そして「洗練(フィネス)」、そういう意味では、唯一無二のボルドーワインかもしれません。
 そして、今となっては地味かなと思われるこのラベル。よく見ると「畑を耕す男性を見守る二人の貴婦人」が描かれています。この古き良き時代を彷彿させる風景に、ラフィットというワインを見るような気がします。
 1980 : 「メドック格付け筆頭」もうこの言葉は聞き飽きたでしょうか。1855年に定められた格付けは、格付けに見合わぬシャトーが多く存在する現在、すでに1世紀半を経て、未だ改定される事はありません。
 しかし、もし「筆頭」を務めるこのワインの品質が格付けにふさわしくないものだったとしたら・・・誇り高きフランス、ボルドーの人々は、格付けを見直すのではないでしょうか? ラフィットを頂くと常に感じるワインの品格。ワインの持つ要素が一体となって醸し出すデリケートで格調高い個性。
 1980というバッド・ヴィンテージ、20年経った今、どんな変化があるのか?素晴らしく透明感のある色合いから状態の良さが分かります。揮発香の中にシダーや枯葉、フレッシュ・オレンジと秀逸なメドックを思わせる土の要素。確かに果実味は少なくとも、まるで「無」を感じさせるが如く、口中に流れ込むワインに、ラフィットの個性を感じ、余韻の気品あふれる細やかなタンニンが舌の上で広がる様は、オフ・ヴィンテージと言えどまさに格付けの筆頭。1980のワインが最良の変化を遂げた姿に感動。
 1985 : ヨーロッパでは彗星が接近した年には良いワインができると言われ、この年のラフィットはボトルの肩にハレー彗星のレリーフが施されています。その希少性からコレクションの対象にもなっている1985ですが、R.パーカーは87ポイントとやや厳しい評価。さて、どうなのか?
 外観にも茶の多い熟成感。乾いた土、茶色のキノコ、ドライアプリコットのブーケ。1985としてはやや熟成が早い気もしますが、ピリッとした赤い東洋風香辛料、丸みを帯びたタンニン、キリッとした酸は、ブラインドでも高価なワインだと分かるだろう格付け一級ならではの気品。良好に熟した、良好に熟成したラフィット。【D:2002】
 2000 : RWG4号にて掲載済みで恐縮ですが、個人的な試飲ではその評価を凌ぐラフィットだと思う。濃度や強度というにはあまりに平易な、一流の経営者が持つ研ぎ澄まされた感性と内から湧き出るポジティブなエネルギー感。かつ決して自閉的ではなく、黒々とした果実、練れたタンニン、ミネラルと酸が見事に均衡を保ち、現時点でも十分に飲む喜びを感じさせてくれる。これがボルドー・ビッグ・ヴィンテージなのだと改めて実感する一本。【D:2004 P:94】[Real Wine Guide Vol.5 掲載]
(メドック格付け第1級 : Ch. Lafite-Rothschild


Carruades de Lafite
カリュアド・ド・ラフィット
ポイヤック 赤 (CS,M,CF,PV)
('93 \8,900)('95 \8,000位)
 上記のシャトー・ラフィット・ロートシルトのセカンドがこのカリュアド・ド・ラフィット。ラフィットでは、通常、全生産量の1/3がグラン・ヴァン用となり、約4割がこのセカンドとなります。
 1993 : その出来の良さに驚いた1本。パーカー氏は93年のラフィットに「甘いブラックカラント、青臭いタバコ、鉛筆の香りがちらり」と表現していますが、その複雑で、上品なニュアンスはこのセカンドでも十分伝わってきます。「91年、92年と残念なヴィンテージが続いた後、ラフィットのスタッフは、さらにかなりの選別を施したのかな」というのが感想でした。
 1995 : さすがに抜栓してすぐには開かず、珍しくデキャンタを。後にワインのミネラル分が綺麗に現れ、甘さとロースト香を感じます。ワインの持つ様々な要素がまだまだ溶け込んでいないよう、全体がまとまる時間が欲しいワイン。今開けるには、少しもったいない一本だったようです。
Ch. Lafite-Rothschild

メドック格付け第1級(5大シャトー)

Ch. Latour
シャトー・ラトゥール

ポイヤック (CS80,M15,CF4,PV1)
('53 \150,000位)( '60 ?)('65 \?)('72 \?)('76 \21,000位)('81 \25,000位)('93 \45,000位 1500ml)('98 \19,000位)

 言わずとしれたメドックの第1級、絶大な人気と実力を誇るシャトー。カベルネ・ソーヴィニオンの比率が約8割を占め、女性的なラフィット、マルゴーに対し、男性的で力強いワインと形容される。ジロンド河を望む65haの畑。その中でもシャトーを取り囲む47ha「ランクロ」と呼ばれる区画のブドウがグラン・ヴァンの重要な部分となります。不作の年でも安定した品質を保つ事でも有名。
 「いいワイン=重い」という観念は、捨てた方が良さそうです。ラトゥールはよく「男性的」と形容れますが、その意味は表面的なものではなく、ワイン全体の様々な要素が渾然となった複雑さ、内から湧き出るもののように感じます。

 1953 : 1953年はボルドーでの偉大なヴィンテージの一つ。色合いは奇麗なレンガ色。これが熟成というものなのでしょう。すでに熟成の頂点、やや枯れはじめ、揮発性の香りが漂い心を打ちます。そのフィネスは「グランヴァン」というにふさわしい。
 1960 : ボルドーの赤ワインの偉大な年、59年と61年にはさまれて、あまり目立たない1960年。ただ、ラトゥールに関しては不作の年でも安定した品質を保つ事も周知の事実。本当に凄いワインです。「出来の良い年、悪い年ということは関係ないのか」と思います。凝縮された味わい、芳醇で男性的なワインと言われるにふさわしい香り、厚みとヴォリュームには、出席者全員がため息をもらすほど。
 1965:60年代、70年代の最悪とも噂されるほどのオフ・ヴィンテージが65年と72年。ラトゥールを語る時に「不作の年でも安定した品質を保つ」という話をよく耳にしますが。。。生まれ年のラトゥール。確かに素晴らしいワインです。65年という年のワインでも、ラトゥールの名声の前では全く意味がないようです。抜栓後30分での瓶口からの甘い香り。官能的な揮発香がグラスを満たし、自分と同じ生を受けたワインに感動。素晴らしい体験でした。
 1972:1972も1965に本当に似ています。これがシャトーの歴史なのでしょうか。ふっとグラスの底から沸きあがるプラムの甘さは古酒の魅力。
 1981 : 1981年は、ラトゥールとしては、優しくしなやかなワインなのでしょうか。一緒に飲んだ方々は、香り、味わい共に少し物足りないといった感想。しかしながら、そのワインが持つ果実の豊かさや、質のよいタンニンは「重さ」を求めなければ納得出来るはず。
全世界のワイン生産者が一つの指標とするこの地区のワインは、「重さ」より「深さ」に特筆すべきものがあるように思います。
 1993 : 1993をマグナムで。。。しかし開けるのが早すぎると思うほど、まだまだ黒みの強い色合い。小粒のカラントを中心に、シダー、ミネラルと言った清涼感のあるアロマ。ふくよかでもないが難しさもない、じっと先を見つめるような正しい姿勢。ラトゥールとしては大きさを感じない部分は残念だけれど、朝露のような静寂感は、これから姿を変えそうな気がする。あと5年は待ってみたい。【D:2002】
 1998 : 2000年末、あるワインショップが社長のアンジェラ氏を招いた時にテイスティングできた最新の1998。まだ瓶詰めされて半年というワインはアンジェラ氏曰く「本来のエレガントさはまだ出ていない」というコメント通り、舌触りの落ち着きとまとまりはないものの、濃い紫色で、ロースト香とミネラル、黒果実の充実した味わい。偉大なヴィンテージではないかもしれないけれど、ラトゥールの良さを感じる試飲でした。
(メドック格付け第1級 : Ch. Latour



Les Forts de Latour
レ・フォール・ド・ラトゥール

ポイヤック 赤 (CS80,M10,CF10)
('75 \15,000位)('89 \8,500)('93 \6,000)
 上記のシャトー・ラトゥールのセカンドラベル。主にラトゥールの畑の樹齢の若いぶどう樹から造られる。初ヴィンテージは1966年。メドック全セカンドワインの中でも最上の評価を与えられるワイン。実際、ラトゥールのスタッフは第2級同等のワインを造ろうとしているらしい。平均年産29000ケースのうち60%がシャトー・ラトゥールとして瓶詰めされ、残りがレ・フォール、サード・ワインのポイヤック、そしてネゴシアン売却用にまわされます。
 1975 : 1975という古酒は珍しい。エッジに少しレンガ色が見える程度でまだ若さのあるガーネット。古典的な小粒の赤から黒の果実、丁子や甘酸っぱい杏。このヴィンテージにして、枯れかけた程度の良好な状態。タンニンも溶けはじめ、しなやかな印象だけれども、ボディ自体はやや細身。セカンドでここまで保つのもすごいが、ラトゥールと聞くと抜栓前の期待が高くなりすぎのが困ります(笑)。【D:2002】
 1989 : 1989年を2度飲む機会に恵まれましたが、いいワインです。ラトゥールは、メドックの中でも男性的と言われますが、ブドウの凝縮感、複雑な香り、色もかなり濃い赤、セカンドにしてこの味わいは感動です。そして、このワイン、まだまだ元気。抜栓して1時間後から、また違う優しい味わいに。。ただ、このワイン、89年ヴィンテージは、もうあまり残ってないのでは?あったとしても今では1万円は、軽く超えるでしょう。
 1993 : この93年も素晴らしい出来。秀でたバランス感覚の中に緻密な計算の入った深み。丁子やブラック・ペッパー、シナモン。咽喉にかけてぐっとタンニンを感じ、ワインの組成のよさを感じます。さすがラトゥールの弟!
Ch. Latour


メドック格付け第1級(5大シャトー)

Ch. Mouton Rothschild
シャトー・ムートン・ロートシルト

ポイヤック (CS80,CF10,M8)
写真左より('57 \50,000位) ('67 \30,000位)('70 \30,000位) ('75 \35,000)('84 \19,000位)('87 \19,000位)('90 \34,000)('91 \20,000位)('93 \23,000位)


 メドック格付け第1級ワイン。1855年の格付けでは第2級でしたが、1973年、例外的に第1級へ昇格。毎年、著名画家によりラベルが描かれる事でも有名。もともと、あのセギュール公爵が所有していた、ラフィットとムートン。畑は隣同士で地続き。どうして出来あがるワインがここまで違うのか?ムートンの醸造長曰く「5年までは、グレープジュースでワインではない。25年経たないとムートンにはならない!」
 1957 : 画家はアンドレ・マッソン。ボルドーの57年は、評価の低い年のようですが、さすがのムートン、依然とその力を保っています。ピーター・ツーストラップ氏の経由、ノン・リコルクでも状態のよさが伺えました。カシスやコーヒーのアロマとエキゾチックでスパイシーなブーケは、飲む人を魅了します。ワインを構成する酸味、そして緻密なタンニンは、グラン・ヴァンの風格。
 1967 : この年の画家はセザール・バルダチーニ。全体的にややフラットですが、ムートンの個性でしょうか、ボディは未だ逞しく、シャンピニオンのブーケ、強さのあるベリーが長熟を物語るワイン。
 1970 : この年の画家は、あのマルク・シャガール。タイトルは「母親が子供に与える葡萄・つぐみがついばむ葡萄」。70年という偉大なヴィンテージ。
 若々しさを残す深みのあるルビー色。ファースト・ノーズにやや不快なアルコールのアロマ。その後はカシス香りがあるものの、アシッドな酸の目立つ味わい。固い印象はないのに、どこか厳しさと難解な部分のあるボトルでした。
 1975 : この画家は、あのアンディ・ウォーホール。ようやく25年の年月を過ごしたムートン。彼が言うように、ワインの肉付き、深いカシスの芳香は、まだまだこれから。なにより思ったのは、「ブドウというものが、こんな深い味わいを持った飲物になる」ということ。確かに「男性的、豊潤、荘厳」という言葉が似合う。故バロン・フィリップ・ド・ロートシルト氏、ワインを愛し、ボルドーのワイン産業に数々の功績を残した人物。このムートンはやはり彼の魂だったのでしょう。
 1984 : 画家はアガム。ムートンの中では、珍しい現代アートの鮮やかなデザイン。珍しいのはラベルだけでなく、メルローの出来が悪かったこの年は、ほぼカベルネ・ソーヴィニオン100%でワインが造られています。(詳しくは「今月のお題目」をご覧下さい。)
 評価の低い1984年にして、実に魅惑的な香り。樽の甘いロースト、スパイス、丁子、鉄、レッドカラントといった、これぞボルドーというアロマ。カベルネ100%というその先入観からか、やや味わいは単調でシンプルな構成、余韻の短さはあるものの、十分にムートンの魅力を発揮しているヴィンテージだと思います。
 1987 : 絵画はハンス・エルニの作品。この年、バロン・フィリップ・ド・ロートシルトは85歳で他界し、ラベルにはバロン・フィリップの肖像が描かれています。そして「ムートンの改革者たる父バロン・フィリップ・ド・ロートシルトへ、あなたの65回目にして最後の収穫だった、この年のワインを捧げます。ムートンは変わりません。」という娘フィリピーヌの言葉が。この年以降、ラベルに入るサインはバロンヌ・フィリピーヌ・ド・ロートシルトのものに変わっています。
 84年と共にオフとされるヴィンテージ。しかしムートンはバロン・フィリップに捧げるかのように素晴らしいワインを生産しています。草原を感じるアルコール臭から心地よい西洋杉の香り。柔らかみのある果実にはきっちりとした酸とタンニンが存在し、甘いバニラが後から湧き出てきます。余韻の長さも申し分ない素晴らしいワイン。84、87というヴィンテージを頂き、ムートンの良さを痛感したように思います。
 1990 : 1990年のワイン、及びムートンの関連記事はこちらへ
 1991 : 1991年は日本人画家、クロソフスキー・ド・ローラ・セツコ(出田節子、ご主人は93年のラベルを描いたバルテュス)の作品。カシスやロースト香のアロマ、アタックで感じるタンニンの後は少し小じんまりとしていますが、心地よい飲み口のワイン。
 1993 : 毎年、著名画家によるラベルが変るムートン。93年はバルティスによる絵画が描かれているはずなのですが。。。このムートンのラベルは、真っ白。ラベルの絵画が消されています。(右はオリジナルのラベル。)実はアメリカでこの少女の絵が「ネオ・ピューリタン」による反対を受け、この年のアメリカ向けのムートンでは、左のように絵が消されて出荷された物。93年のムートンは、豊かなブーケを持つ上に、素直な飲み口と、濃密ではないものの、バランスのとれた味わい。今飲んでも果実の甘さを感じられるワイン。飲み終えた後には、ラベルに二人の名前を入れ、世界でたった一つのムートンのラベルを作るのもいいかもしれません。
(メドック格付け第1級 : Ch. Mouton Rothschild


Le Petit Mouton de Mouton Rothschild
ル・プティ・ムートン・ド・ムートン・ロートシルト
ポイヤック 赤 (CS,M,CF,PV)
('96 \10,800)
 こちらは、シャトー・ムートン・ロートシルトのセカンドラベル。長い間生産されなかったムートンのセカンドは、1993年にル・スゴン・ヴァン・ド・ムートン・ロートシルトとして復活。翌94年からル・プティ・ムートン・ド・ムートン・ロートシルトと改名されています。ラベル・デザインは、ジャン・カルリュ。
 抜栓の後、最初に?だったのが、異様な香り。「多分これは硫黄(So2)によるものかな」という推測。その香りが飛ぶまでは、ワイン自体も閉じていていたのですが、時間と共に秀逸な姿をのぞかせてくれました。カシスやオークの燻した感じ、多めのタンニンを含む果実は、まだまだ本領は発揮していないのでしょうが、期待の出来るワインだと思いました。あと3年から5年後が楽しみです。
Ch. Mouton Rothschild


Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド
ポイヤック 赤 (CS45,M35,CF12,PV8)
( '65 \15,000位)('79 \15,000位)( '88 \14,000位)('97 \10,000位)
 第1級同等の評価を受ける第2級の最高峰。50%の新樽で20ヶ月の熟成を行う。オーナーのド・ランクザン夫人が、78年より後を継ぎ現在の評価を作り上げたと言われます。
 1965:生まれ年のラランドは、気品ある素晴らしい味わい。リキュールのようなボディにカシスとミネラル感が生き抜いています。生まれ年のワインには、いつもただ感動するばかりです。
 1979:このヴィンテージの最高傑作と呼ばれるワイン。確かにそのスパイシーな香りはエレガントで、ポイヤックの中でも南端、サンジュリアンとの境に位置する畑から生まれるワインは果実の優しさと確固たる芯を感じます。時間と共に、バターやミルクの印象を増し、まろやかさを感じる好みの古酒。
 1988:88年は今飲んでも美味しいボルドーの一本かもしれません。シダー、石灰や線香、ハーブの香り。乳酸の丸さがあり、スタイルの良い女性を思わす、精妙にして複雑なラランド。ある方はラランドの個性を「湿り気」と表現されていましたが、なんとなく分かるような気がしました。
 1997:赤みがかったルビー色。その色の通り華麗な花のアロマやオークの甘味を感じる気品ある香り。やや中間域の味わいに乏しい分、タンニンの強さが前面にありますが、数年後には美味しく飲めるワインでしょう。
(メドック格付け第2級 : Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande


Reserve de la Comtesse
レゼルヴ・ド・ラ・コンテス

ポイヤック 赤 (CS50,M35,CF7,PV8) 
('93 \4,500)
 上記のシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドのセカンド・ラベル。
 最初に開けたときは、酸味が強く不安になりましたが、そこはラランドのセカンドです。一杯飲むごとにすべてのバランスを取り始めます。最終的にはしっかりした中にも優しい表情をもつ良いセカンドワインでした。
Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande



Ch. Pontet Canet
シャトー・ポンテ・カネ

ポイヤック 赤 (CS63,M32,CF5)
('89 \6,000)('90 \8,000位)
 メドック格付けシャトーの中でも、120haという広大な畑を持ち、ムートン、ダルマイヤックの南側に位置するポンテ・カネ。セカンド・ラベル(レ・ゾー・ド・ポンテ)を合わせると年間約4万ケースを産出。第5級ながら、それ以上の実力を持つとされる評判のよい赤です。
 1990 : まだインクを思わせるヨード香はあるものの、魅力的なカシスの風味とスパイス香はメドックの格付けワインならでは。抜栓後、1時間くらいに味わいのバランスがとれてきます。「これから飲み頃だよ」と言わんばかりのワインです。
 1989 : メドックのワインに感銘を受けた華やかなワイン。これぞメドックという感じ。気張った所がなくて、誰が飲んでも美味しいと思える希少な一本ではないでしょうか。
(メドック格付け第5級 : Ch. Pontet Canet


Ch. Haut-Batailley
シャトー・オー・バタイエ

ポイヤック 赤 (CS65,M25,CF10)
('75 \11,800)('80 \5,200)
 1942年にシャトー・バタイエの畑から分割され、あのボリー家(デュクリュ・ボーカイユ、グラン・ピュイ・ラコストのオーナー)の経営となったオー・バタイエ。この地区にしては22haというこじんまりとした畑は、ポイヤック村の南寄り、ジロンド河からかなり内陸に入った森の端に位置するそうです。
 1975 : どちらかといえば、サン・ジュリアンに似た個性を持つといわれるこのワイン。以前80年を飲んだ時には、その頼りなさにややがっかりしたものですが、1975年という長熟なヴィンテージは趣が違っていました。中くらいのルビー色にややオレンジが入りかけており、飲み頃を思わせます。ボルドーの古酒の良さを伝えてくれる複雑なブーケ、しかしながら未だにタニックで今飲んで最も楽しめる時期に入っているワイン。良い方に期待を裏切ってくれた1本です。
(メドック格付け第5級)


Ch. Lynch Bages
シャトー・ランシュ・バージュ

ポイヤック 赤 (CS70,M15,CF10,PV5)
Ch. Haut-Bages Averous
シャトー・オー・バージュ・アヴルー
ポイヤック 赤 (CS75,M15,CF10)

メドック格付け第5級ながら第2級の実力を持つとされる、非常に評価の高いスーパーセカンド。オー・バージュ・アヴルーは、1976年から造りはじめたセカンド・ラベル。(メドック格付け第5級)
シャトー・ランシュ・バージュのワインはこちらでまとめています。
「葡萄酒の匠」

Ch. d'Armailhac
シャトー・ダルマイヤック

ポイヤック 赤 (CS50,M32,CF18)
('89 \8,500位)('95 \6,980)
 これもシャトー・ムートンの兄弟シャトー。故バロン・フィリップ男爵がこの畑を入手したのが1933年で、当時はムートン・ダルマイヤックと呼ばれていました。そして、1956年にムートン・バロン・フィリップと改名、1975年にムートン・バロンヌ・フィリップ、1989年からダルマイヤックと改称されています。(出世魚じゃないんだから。。。)
 1989 : 1989年は多大な収穫量だったにも関わらず、素晴らしい品質とされる年。ペッパーやハーブを含む複雑な香りはメドック格付けシャトーならでは。果実味に比べやや酸が勝ってきているミディアム・ボディのワインは、今飲んであげてよかったのかな?
 1995 : 1995年のダルマイヤックは近年の最良のヴィンテージという評判。まだ紫がかった色で、果実味、タンニン共に親しみやすさがあり、甘味もすでに感じるのですが、やはり今飲むのはもったいなかった。また5年後位に出会いたいワインです。
(メドック格付け第5級)

Ch. Clerc Milon
シャトー・クレール・ミロン

ポイヤック 赤 (CS70,M20,CF10)
('75 \8,600)('83 \5,300 375ml)
 このシャトーは、あの偉大なる故バロン・フィリップ・ド・ロートシルトの娘、フィリピンヌの所有。ムートンとは兄弟シャトーになります。畑は30ha、ムートンとラフィットに隣接する絶好の場所。現在は、二人のお人形が踊る愛らしいラベル(写真右)となっていますが、75年はまだ旧ラベル(写真左)です。

 1975 : クレール・ミロンは、とても外向的で若いうちでも飲めるというですが、さすがに75年という素晴らしい年のものは、今でもなかなかのもの。たしかに、熟成という意味では、ムートン他と比較するものではありませんが、格付けワインの素晴らしいところは、バランスを崩さないということ。すべてに丸みを帯びたワインは、「とても気さくなおじいちゃん」といった風。
 1983 : ハーフ・ボトルだったせいもあるのか、すでに飲み頃としてはすぎていたようです。ただ、ワインとして食事と共に味わうには、まだ大丈夫。メドックの上質な感は残っていました。
(メドック格付け第5級)

Ch. Pedesclaux
シャトー・ペデスクロー
ポイヤック (CS65,M20,CF5,PV5)
('97 \4,000位)
 畑はムートンの近く、メドック格付け5級にランクされながら、あまり話題に上ることのないペデスクロー。柔らかで赤い果実のクラシカルで可愛い味わいは、ポイヤックというよりマルゴーっぽい。決して欠点があるわけではないし、親しみやすいワインだけれど。。。 メドック格付けという事で比較的高い価格がついているが、このままではワイン好きに相手にされることはないかも?【D:2003 P:83】
(メドック格付け第5級)

Ch. Croizet Bages
シャトー・クロワゼ・バージュ

ポイヤック 赤 (CS60,M30,CF10) 
('92 \3,800位)
 メドック格付け第5級のクロワゼ・バージュ。17世紀まではあのランシュ・バージュなどと同じ敷地内だった。1934年からは、マルゴーの第2級、ローザン・ガシを所有する「キエ家」の経営。最近の評価から言えば格付け以下という評論家が多いこのワイン。
 ヴィンテージのせいもあるでしょうが、やはり少しこじんまりした印象。(そう言えば2級のローザン・ガシもあまり評判はよくない。)ただ、ポイヤックらしいニュアンスは十分感じられるし、価格的にもACポイヤックとして飲むのであれば手堅いワインでしょう。
(メドック格付け第5級)

|St-Estephe|Pauillac|St-Julien|Margaux|Haut-Medoc|

class30 "The Wine"

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