宇宙の形


 『宇宙って、どんな形をしているんだろう?』とは、多くの人が考えたことのある問いだと思います。
 私が子供のころに読んだ本(注1)には、『宇宙は、限りがあるが果てはない。』と書かれていました。 しかし、当時は、その言葉の意味するところを理解できませんでした。ここでの『限り』と『果て』の意味がわからなかったのです。

 上記の内容は、数学的に言い換えると、『宇宙の形は、体積が有限な3次元閉多様体の一種である。』になるかと思います。 3次元閉多様体とは、境界のない(=果てのない)3次元空間です。

 しかし、私たちが普段感じている3次元空間は、前後、左右、上下の3方向に果てしなく広がる空間ですから、境界のない3次元空間 と言われても、イメージし難いものです。そこで、とりあえず、2次元空間で考えてみましょう。境界のない2次元空間、すなわち、 2次元閉多様体としては、球面、平坦トーラス(平坦トーラス 参照)、ドーナツ体の表面(平坦でない トーラス)、穴が2個以上のドーナツ体の表面、があります。ここで、球面は曲率が正、平坦トーラスは曲率がゼロ、残りの2つは曲率が 場所によって異なります。

 宇宙では、場所によって曲率が変わることは考え難いので、宇宙の形になりうる境界のない3次元空間=3次元閉多様体としては、例えば、 3次元球面ポアンカレ球面3次元平坦 トーラスザイフェルトウェーバー多様体、などが、候補として考えられます。 では、宇宙の形は、これらのうちのどれかなのでしょうか? もし、空間の曲率が正であれば3次元球面やポアンカレ球面など、空間の曲率が ゼロであれば3次元平坦トーラス、空間の曲率が負であればザイフェルトウェーバー多様体など、になるので、曲率から判定できるはずです。

 近年の COBE(注2)の観測結果から、この宇宙の曲率は、ほぼゼロであることがわかって来ました。 この結果から単純に考えると、宇宙の形は、3次元平坦トーラスである可能性が高そうです。しかし、実際には、さらなる観測や 理論的研究がまだまだ必要なため、宇宙の形が明らかになるまでには、だいぶ時間がかかるかもしれません。



(注1) 『宇宙の科学』 小尾信弥 著、日本放送出版協会 NHKブックス 1965年
(注2) Cosmic Background Explorer 宇宙背景放射探査のための人口衛星

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