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コラム -職場のトラブル・職場のお悩み解決します-

年俸制だと残業代はつかないの?   (H26.10.21更新)



会社で年俸制というと、やはり管理職の人でしょうか。

年俸制だと、1年間の金額があらかじめ決まっているから
残業代はつかないんでしょ? とよく聞かれます。


本当にそうなのでしょうか?


結論。

年俸制でも、時間外、休日出勤、深夜の割増はつきます。
ただし、管理監督者『以外』の一般労働者の場合です。


では、管理監督者は?

(注:ここでいう管理監督者とは、
   単なる役職名だけの管理監督者ではなく、
   労働基準法第41条でいうところの管理監督者のことです)

で、その41条の管理監督者には、
・労働時間
・休憩
・休日
に関する規定は適用されません。

したがって、時間外や休日出勤の割増はありません。
これは、年俸制であろうと、月給制であろうと変わらないところです。
ただし、深夜労働をした場合は、管理監督者であっても深夜の割増はつきます。


以上を整理すると、

原則 年俸制でも割増はある。
例外 管理監督者には割増はない。ただし、深夜割増はある。


では何故、年俸制に残業代はつかない、という誤解が生じているのでしょう?


誤解その1

 年俸制が採用されているのは大多数は管理監督者
      ↓
 管理監督者だから残業代がつかない
      ↓
  年俸制だから残業代がつかない

 ということでしょうか?


誤解その2

 年俸制は、1年間の賃金をあらかじめ定め、
 それを毎月及び賞与時に、分割して支払っているのが大半かと思います。
 そしてその年俸額に残業・休出・深夜の割増分を含めている場合もあるでしょう。

 そして、その範囲内であれば、たとえ残業をしても、割増分を支払う必要はありません。
 必要ない、というよりも、すでに含まれているからです。

 そういう理由から、年俸制には残業代がつかない、
 という誤解が生じているのでしょうか?
 
「え? そうなの?」
と不安になった人は、一度、雇用契約書や就業規則等を確認してみてください。


ここで注意点!

たとえ、その年俸額に割増分が含まれているとしても、
その「割増部分」と「基本賃金部分」が明確に区別されているでしょうか?
もし区別されていないのであれば、割増分は原則どおり支払わなければなりません。

また、明確に区別されているとしても、
実際の残業が、その範囲を超えれば、その超えた分の割増はやはり支払わなければなりません。


年俸制は会社によって様々です。

割増分を支払うことになったとして、
では、その割増金額の計算の基礎に賞与分を入れるのか、入れなくていいのか、
という更なる問題も出てきます。
これは、年俸の運用の仕方によって異なります。

年俸制を採用する場合、また、年俸制で雇用契約をする場合、
よく確認するのがいいと思います。


【関連通達】
 一般的には、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが
 労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と
 通常の労働に対応する賃金部分とに区別することができ、かつ
 割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は
 労働基準法第37条に違反しないと解される。(H12.3.8基収78号)


イラスト:おちゃも

 

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