竹内由美子社会保険労務士事務所メインイメージ

コラム -職場のトラブル・職場のお悩み解決します-

経歴を偽るとどうなる?   (H26.10.12更新)



日本では、解雇のハードルは高い。
ですから、雇用の入り口である『採用』が大事になってきます。

とはいっても、たった数回、たった数時間の面接と、
履歴書や職務経歴書の告知資料だけでその人を判断するのは難しいことです。
ですから、お互い面接時には、正直に経歴や会社情報を交換する必要があります。

それなのに、一方が偽った情報を流していたらどうなるのでしょう。
雇う側は、応募者の告知を信じて採否や処遇を決定します。

そこにウソ偽りがあれば、

「よくも騙したな! 懲戒解雇だっ!」 と怒り狂う、がっかりする、人間不信・・となるか、

あるいは、

「確かに経歴にはウソがあったけど、今までよく働いてくれたよな。
 懲戒解雇は重いかな。」・・となるか。

その人、その業種、ウソの程度によって対応はケースバイケースでしょう。


それでは、具体的にみていきます。

●そもそも「経歴」ってなんでしょう?

学歴、職歴、犯罪歴 等です。

最近、ウツ病歴を隠して採用され、結局、業務が合わずウツ病が再発し休職に至る、
というパターンが増えているようです。

病歴に関しては、プライバシーや人権の問題もあり、別途の対策が必要になってきます。


●「経歴」を偽ると、どうなるの?

懲戒解雇とされるケースが多いようです。

たとえば、
・高卒だったら雇わなかったのに。
・未経験なら雇わなかったのに。

というように、採否の決定にかかわる重要な経歴を偽り、
実際にそのことで会社に実害があり、それを理由に解雇することが社会通念上相当
ということであれば、解雇は有効になるようです。

経歴を偽るということは、
会社の、社員に対する評価を誤らせ、それが会社の運営に大きな影響を及ぼすからです。

「もうこの人が何を言っても信じられない」と、
雇用関係の基本である信頼関係までも損なわれてしまうからです。


次は、その経歴詐称を細かくみていきます。

●学歴を偽った場合

まずは、
◇高卒を大卒と偽っていた場合。

 賃金額が学歴によって決められている会社だと、
 それが経営にモロ影響するので、解雇が認められやすくなります。

では逆に、
◇大卒なのに高卒だと偽っていた場合はどうなるのでしょう。

 こんな裁判例があります。

 現場作業員は高卒以下としているのに そこに大卒が入ると、
 協調性の面から、労務管理上支障が出てしまい職場が混乱する。
 したがって、これは重要な経歴詐称であり、解雇は有効。
 (日本精線事件、日本電気事件など 他多数)


 なぜ、このような逆学歴詐称が起こるのでしょう?

 昔は、学生運動歴を隠したいがために高卒と偽るケースが多かったようです。
 また、市営バスの運転手(公務員)になりたいがために大卒を高卒と偽って採用され、
 その事が後日発覚し、懲戒免職にされた事件もあります。
 
それでも、詐称の程度が軽い場合は解雇無効となったケース(三愛工業事件)
もありますので、やはりケースバイケースです。

いずれにしても、募集採用時に「大卒」「高卒以下」
という条件を明確にしていることが前提です。


●職歴を偽っていた場合

たとえば、
過去の懲戒解雇という事実を隠して採用されたタクシー運転手が、その事を理由に、
今の会社でも懲戒解雇されたという弁天交通事件。(名古屋地裁 S51.12.23)
 
それから、
豊富な溶接経験ありと偽り採用された者の諭旨解雇を、
有効と判断した生野製作所事件があります。(横浜地裁 S59.3.30)

会社は、中途採用者に即戦力を期待しています。
ですからその判断材料である過去の職務経験を偽られると困ってしまいます。

職歴詐称は、その後の配置や業務に多大な影響を及ぼすので、解雇になりやすいのでしょう。


●犯罪歴を偽っていた場合

意外かもしれませんが、過去の過ちは学歴や職歴詐称ほど厳格ではないようです。

たとえば、
強盗、窃盗の前科を隠して採用されたタクシー運転手への懲戒解雇を
無効とした「マルヤタクシー事件」があります。

過去の罪はきちんと償っているのだから、その後の実績が大事、とする傾向にあるようです。

ただし、これも業種によります。
信用第一の警備会社等では、過去の窃盗歴等の詐称は、懲戒解雇が有効になるようです。

イラスト:おちゃも

 

事業方針とお問い合わせ

 「どうしたいか」を優しくじっくりお聴きし、ご希望に沿ってご支援していきます。
 090-4455-0555(ショートメール歓迎)