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コラム -職場のトラブル・職場のお悩み解決します-

哀しいリストラ  (H26.10.12更新)



整理解雇は、解雇される方も、解雇を告げる方も、それを見守る従業員も、
傷つきます
動揺します
将来が心配になります
モチベーションも下がります。

たくさんの犠牲や哀しみ、怒りを伴う整理解雇。

整理解雇の明文規定はありません。
しかし、判例により積み上げられてきたルールはあります。

その整理解雇の4要件を見ていきます。

1.人員整理をする『必要性』はあるか

 この『必要性』とは、
 『いま整理解雇をしなければ、会社が倒産してしまうかもしれない!』
 という危機的な状況にあるか? ということをいいます。

 しかし、必ずしも『倒産が必至!』ということまでは 求められていないようです。
 また、客観的な資料をもとに総合的に判断されます。


2.解雇『回避努力』を尽くしたか

 解雇は、対象になった人の生活設計を狂わせ、プライドを深く傷つけます。
 その人の家族をも傷つけることになります。

 ですから、解雇は『最後の最後の手段』です。
 解雇しなくてもいいような努力は絶対に必要です。

 具体的には、

 ・役員報酬のカット

  これは当然でしょう。企業業績の悪化は、経営者の責任ですから。

  以前私が働いていた会社では、とある追徴金を払うために経営が悪化し、
  全従業員の給与をカットする賃金改定をしておきながら、
  役員報酬だけはなぜかアップするしくみになっていました。
  
 
 ・役職者の手当のカット⇒役職者を含めた全従業員の給与カット

 ・賞与や昇給をストップ

 ・労働時間の短縮による光熱費等のカット

 ・新規採用をやめる

 ・配転や出向、希望退職者の募集

 など、人事を尽くすことが、のちのち遺恨を残さないことになるでしょう、
 納得もしてもらいやすくなるでしょう。


3.人選基準に『合理性』はあるか

 当然ですが、経営者の好き嫌いで選んではいけません。
 そこには客観的で合理的な基準、公正さが必要です。

 たとえば、
 ・会社の秩序を乱す者
 ・職務怠慢な者
 ・勤怠の悪い者
 ・職務能力の低い者
 ・病気による長期欠勤者
 ・経営効率に寄与する程度の低い者 

 などは、判例で「合理性のある基準」と認められています。
 

4.手続の妥当性
 
 整理解雇をするにあたり、なるべく早くに労働組合や従業員に
 ・なぜ解雇されなければならないのか
 ・なぜ対象者になったのか
 ・解雇の条件

 等の説明をきちんと行い、その上で、解雇対象者と今後のことも含めて十分に
 話し合わなければなりません。

 その中で、求めに応じ、再就職の斡旋をする、退職時期を遅らす、
 経済的な援助として十分な退職金を支払う、などの温情的な措置が必要となるでしょう。

 出来る限りの誠心誠意で対応することが肝心です。


以上の4要件が整理解雇の一応の目安です。
ですが、近年の不況により、この基準もケースバイケースのようです。


私の話になりますが、ちょうどリストラが断行され始めたばかりの会社に
入社したことがあります。

やっと名前と顔を覚えた頃に1人、2人といなくなってしまうのです。

「今日で終わりです」と笑顔でご挨拶にきた方が、
実はリストラで辞めさせられたんだと後で聞いたとき、
なんとも言えない空気になったものです。

それなのに、その会社は高価な事務用品を使っています。
福利厚生費にも、中小企業を経験してきた私には考えられないぐらいの予算を使っています。
余剰在庫も相当抱えているようでした。

残された従業員の中から、こんなのにお金をかけられるぐらいなら、
リストラなんかやる必要なかったんじゃないか?

と、会社に対する不信、不満など、
負の感情が社内に蔓延し、ギスギスした感じになっていました。

残された従業員の口から必ず出る言葉。それは、『次は自分かもしれない・・・』


他にも整理解雇のデメリットはあります。
助成金がもらえなくなる、企業イメージが悪くなり、必要になったときの求人が困難になる、など。


確かに会社を守るためにリストラは必要です。
しかし、リストラ=人員整理 ではありません。

リストラの本来の意味は、経営の基本的構造を改革することです。

不採算部門を整理し有望な部門を構築する、ムダを徹底的に排除するなど。

日ごろから会社の良くない情報をも開示し、全社員に協力を求め、
全社的に本来の意味のリストラを断行することが、
人員整理のないリストラにつながるのではないでしょうか?

イラスト:おちゃも


 

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