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コラム -職場のトラブル・職場のお悩み解決します-

問題社員を解雇するには  (H26.10.12更新)



退職勧奨が不調に終わった場合の次の手段に「普通解雇」があります。

みなさんの会社の就業規則には、解雇に関する規定がありますね。

たとえば、
第○条 社員が次の各号の一に該当するときは解雇する。
「勤務状態が不良で、改善の見込みがないと認められるとき」
「職務遂行能力または能率が著しく劣り、上達の見込みがなく、
 他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められるとき」 などなど。

この規定は、会社によってさまざまです。

そして、この規定に基づき、会社が問題社員を解雇したとします。
しかし、この問題社員は納得せず、「解雇は無効だ!」と訴える。

・・・さあ、どうしましょう。


この場合、裁判では、

◆その問題社員の不良の程度。 
◆他の従業員に比べてどうか。
◆現に会社に損害を与え、または 損害を与える恐れがあるか。
◆これらの事実を、具体的、客観的に証明できるか。
◆そもそも、問題社員に対する会社の評価は、正当か否か。

など、さまざまなことが厳格に問われます。

また、たとえこれらすべてに該当したとしても、すぐに解雇が有効となるわけではありません。
今度は、会社側の対応が厳格に問われます。

たとえば、その問題社員に対して、

●きちんと注意、指導、教育をしてきたか。 (これはとても大事なところです)
 始末書や、事実を記したメモ等、その客観的な証拠はあるか。
 問題社員に改善の見込みはあるか。

●会社の高圧的な態度に反発していただけ等、問題社員に同情の余地はあるか。

●解雇に至るまでの過程で、他の部署への配置転換や降格など、
 雇用を維持するための努力をしたか。
 
という会社側の解雇回避努力なども問われます。

やはり解雇は、簡単には出来ません。
労働者への影響が大きいからでしょう。


とはいっても、解雇が有効になった裁判例もあります。
たとえば、
◇都度、きちんと注意、教育を行い、その証拠もちゃんとある。
◇配置転換、降格等を実施するなど、改善の機会は与えてある。
◇しかし、やはり改善が見込めないので、まずは「退職勧奨」を実施。
◇それでもダメなので、最後の手段 「解雇通告」。

と、この手順を踏んでおけば、解雇が有効となる場合もあります。(三井リース事件 他)


ここで注意。

退職勧奨の号でも触れましたが、どうしても辞めさせたいからと、
嫌がらせや脅迫などは、決してしないでください。

法的リスクはもちろんですが、当の問題社員が、それが原因で精神障害をわずらい、
最悪の事態にならないとも限りません。
そうなれば、労災や損害賠償の問題にも発展していきます。
また、それを見ている他の従業員へも悪影響が及びます。
誰にとっても無益です。

ですから、急がず慌てず、上記の解雇手順をきっちり踏みましょう。
それに、この手順をミスなく踏むことで、問題社員に『争っても負ける』と思わせることが出来れば、
円満退職に持って行けるかもしれません。

訴訟はお金も時間も労力もかかります。精神的苦痛も伴います。
争ってもムダだ、と思わせるところまで準備が出来れば、会社としては一安心です。


逆に、労働者側は、会社もそのように準備していることを踏まえ、
そうなる前に猛省し、労働契約の義務を果たすべく、努力をする必要があります。

とはいえ、たとえ問題社員をスムーズに辞めさせることが出来たとしても、
ここに至るまでの担当者の精神的、時間的なロスを考えると、
会社にとって一番いいのは、このような問題社員が出ない組織風土を作り上げていくことなのではと思うのです。

元をただせば、このような問題社員を採用したこと、注意や指導を怠ってきたことなど、
会社側にも少なからず落ち度はあったはず。

このように、今の日本では、解雇は困難です。
ならば、労務管理の入り口である募集・採用を妥協せず、
その後の社員教育にも力を注いでいくことが、会社の発展に寄与することになるのでしょう。

イラスト:おちゃも

 

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