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コラム -職場のトラブル・職場のお悩み解決します-

中途採用(スペシャリスト)の解雇  (H26.10.12更新)



『一定の能力』を期待されて中途採用されたのに、
見掛け倒しだった、期待はずれだった、という場合に解雇できるのか。


ちなみに普通解雇は、たとえば、
仕事が出来ない、勤怠が悪い、反抗的な態度を取る、ぐらいの理由では認められないのが現状です。
なぜなら、日本は長期雇用制度を採っているので、裁判所も、労働者を保護する立場に立っているからです。

ですから、解雇を検討する段階にあるならば、
注意、指導、教育、配置転換等の解雇回避努力をしておく。
その客観的な証拠も残しておく。退職勧奨も試みておく。

それでも改善の見込みがないのであれば、解雇もやむなし、という手順を踏むのが一般的です。。


では、
『一定の能力』を期待されて採用された場合の解雇はどのように判断されるのでしょう。

まずは裁判例を見てみましょう。

【ヒロセ電機事件 H14.10.22 東京地裁】
業務上必要な語学力、品質管理能力に期待して、それなりの高待遇で採用したが、
その予定された能力を有しておらず、また、それを改善しようともしない場合は、
解雇もやむを得ない。


【フォード自動車事件 S59.3.30 東京高裁】
高度の職業能力を買われて中途採用されたのに、それを発揮しなかった場合は、
配転等の解雇回避努力の程度は軽減され、また、能力不足・適格性欠如
を理由とする解雇の有効性も、通常よりは肯定されやすい。

つまり、
即戦力を期待された中途採用者の能力が、期待はずれで終わった場合の普通解雇は、
通常の解雇よりも認められやすい、ということです。


とすると、争点になるのは、

◆そもそも、『一定の能力』を期待しての契約内容だったのか。

◆賃金等の労働条件は、その職務にふさわしく優遇されていたのか。

◆この中途採用者の能力が、本当に解雇に値するほどに低かったのか。

◆能力不足、適格性欠如とした会社の判断は、
 本当に本人だけの責任なのか。社内体制に問題はなかったのか。

などが争われます。

そして、これらの要件を満たせば、解雇は認められやすくなるということです。


以上のことを踏まえ、企業側は、採用時や面談時に、

●どのような業務内容なのか、
●どういうスキルやレベルを求めているのか、
●どのような仕事を任せたいのか、

等を明記した雇用契約書を取り交わし、
その際の賃金額は、職務に見合う程度に優遇されたものにしておくこと。

さらに、採用までの経緯(人材紹介会社を経由した等)の証拠も残しておくこと、 
をお勧めします。


労務問題は、いつ勃発するかわからないのが恐ろしいところ。
であれば、最悪の場面(訴訟)を見据えた対策を講じておくのが、
一番のリスクヘッジになるでしょう。

イラスト:おちゃも

 

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