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コラム -職場のトラブル・職場のお悩み解決します-

真実告知義務  (H26.10.12更新)



いったん採用したら、簡単に解雇はできません。
そんな人を雇った会社が悪い、となります。
だからこそ、採用は慎重の上にも慎重を期しなければならない。

それなのに、その労働者の告知自体にウソがあると、会社は本当に困ってしまいます。
確かに、労働者の「採用されたい!」という気持ちもわからないではありませんが・・・。


ここで思うのです。

そもそも、自分に不利になる真実を会社にわざわざ告知する義務が、
労働者にあるのでしょうか?


炭研精工事件(東京高裁 H3.2.20)では、

 雇用関係は、労働者と使用者との相互の信頼関係が基礎となる継続的な契約であるから、
 使用者から、
 ・その労働力評価に直接関わる学歴、職歴、犯罪歴等の告知や、
 ・職場への適応性、意欲などの企業秩序を維持するために必要な申告  
 を求められたら、労働者は正確に応答する信義則上の義務がある、としています。


私も過去、「できる」という触れ込みで採用された人と一緒に仕事をしたことがあります。
しかしその人は、仕事の能力以前に、業務遂行の前提であるパソコンの操作自体怪しく、
方々に迷惑をかけ倒していました。
最後には、仕事を放置したままの欠勤が続き、問いただすと居直る始末。
結局は契約解除になったと記憶しています。


ちょっとの経歴詐称でも、このように正常な業務運営に支障をきたし、
それが生産性や売上に直結することを考えると、
より重要な経歴詐称は、懲戒解雇が認められやすくなるというのも頷ける気がします。

そんな大事な経歴を偽っていること自体、会社に対する背信行為であり、
このような事件を未然に防ぐためにも、懲戒解雇処分は必要なのかもしれません。

バレなければ、その処遇がそのまま続いてしまい、
経営にも何らかの影響が及ぶことになるのですから。

ただ、実際に採用を決定する場合、このような本人の告知だけではなく、
その人の印象、話し方、考え方等をも考慮して、
最後は担当者の主観で決定しているのが通常でしょう。

ですから、そういう意味では、確かに経歴詐称は許されないことですが、
その後の労使双方の努力も、採用を失敗させない為には必要な気がします。

イラスト:おちゃも

 

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