うつわ歳時記 季節の話題 (2001/4/8-6/17) 目次     

石榴の花

 

2001/6/17

 花の鮮やかな朱色と葉の鶸色のくっきりした対照が印象的な石榴。現産地は西アジアとか。なるほど強い陽光の似合うわけです。実は鬼子母神、可梨帝母の採物として有名で更紗模様にもみかけます。インドやペルシャではなじみ深い植物なのでしょう。
 細かな葉のかげに鋭い棘を秘めて鬼子母の二つの貌を思わせます。

 花石榴安禄山の鼻のこと      おるか

 玄宗皇帝の唐の都長安は西域の文物が溢れた国際都市でした。

 安禄山は楊貴妃の養子となりましたがソグド人といわれています。伎樂面にあるような顔だったのだろうか、などと想像します。
 楊貴妃は暑い日には水晶の魚を口に含んで涼を取ったという、いかにも豊艶な美女らしい逸話があります。彼女ば石榴より茘枝を好んだそうですが。


またたび

2001/6/10   

 この季節山道を行くと高く這い登った蔓性の葉の、半ば白く変わっているのを見かけます。
あれが、またたびと教えてくださったのは黒田杏子先生でした。
 やわらかな暖かい白です。葉脈に淡いみどりを残していたり、片身変わりだったり、なかなか洒落た風情です

 涅槃経に沙羅双樹の白変のことがありますが、またたびの白変は花のさく時期とかさなるので、どうやら少し疲れただけなのでしょう。
日陰の渓流沿いに揃って揺れている姿は美しい。

 
木天蓼や水渡る脛白きこと   おるか




群れ咲く夏のあざみ

2001/6/3    

 薊は孤独な花のように思っていましたが、ここは道の脇から群落をなしています。写真を撮ろうと近づく闖入者に顔をそむけるように揺れて、花達のめいわくそうなひそひそ声が聞こえてきそうです。いつのまにかするどい棘が、指に刺さっていました。
 群生していても、薊はどこか一人ぼっちの花という感がぬぐえません。

 さざめきて人をおそれて夏薊   おるか                          


小学校への緑の中の通学路    2001/5/27

 ゆるやかに曲がっていく細い道。すっかり葉桜になった並木の下に、いまはマーガレットがさいています。
 野薊や野イチゴの花、さまざまな雑草の花。学校から帰る子供達は文字通り道草をたのしんでいるようです。この道でこのあいだはヤマドリを見ました。
 のどかで美しい道。でもここもそのうち、少し手前のところで産業道路とやらに横断されてしまうのです。

 百葉箱の影まみどりに日暮れかな       おるか



   早苗田    2001年5月20日

 早苗田に日暮れの迫るころ、心地よい風にさそわれてぶらぶら散歩していたら、二十センチばかりの亀が田の中を歩いていました。亀も散歩かな?首を伸ばしてなにか見ている様子です。
 これは写真を撮らなきゃと思ったときすでに遅く、亀は泥の中へ。でも田んぼを悠々と歩む姿はとても気持ちがよさそうでした。

 泥亀の泥喜びて鳴かぬまま     おるか  


   未だ死をしらず白糸草の闇         2001/5/13

     非時(ときじく)の菫や誰のものとなく   2001/5/6

     輪唱の風にとぎれて一輪草        2001/4/29 

 門灯やさくらうぐいの来るころか     2001/4/22


      水に散るさくらじんべえざめの夢      2001/4/8