一九九六年

一月〜二月?

|・“影の政府”、ロシア保有の“ピュリティー”を密輸。
| ロシアは、一九〇八年に、ツングースカ大爆発を引き起 |こした隕石が、火星から運んできた“ピュリティー”を用 |いて、そのワクチン開発を、独自に行っていた。その目的 |が、“影の政府”に代わって、地球の覇権を握る事にあっ |たのは、想像に難くない。
| その一方で、“影の政府”が、“ハンター”の監視をか |いくぐって行う、“ピュリティー”のワクチン開発は、遅 |々として、進展しなかったものと、推測される。
| だからこそ、“影の政府”は、“ピュリティー”が生息 |する隕石の破片を、ワクチン開発に利用すべく、ロシアに |無断で、米国に持ち出したものと、推測されるのである。

|・クライチェック、ロシアのスパイとなる。
| “影の政府”の動向を察知したロシアは、ミサイル基地 |に閉じ込められていたクライチェックを、救出した。クラ |イチェックは、MJファイルを解読した事で、“ピュリテ |ィー”のワクチン開発を初めとする、“影の政府”の内情 |に、通暁するようになったと思しい。そんなクライチェッ |クを、スパイに仕立て上げる事により、ロシアは、“影の |政府”に、対抗しようとしたのである。
| クライチェックは、米国に密輸された隕石が、“影の政 |府”に渡るのを阻止すべく、モルダーとスカリーに接触し |た。利用されているとは気付かぬまま、隕石を入手したモ |ルダーとスカリーは、その正体を突き止めるべく、NAS |Aのゴダード宇宙センターに、分析を依頼した。

|・モルダーとクライチェック、ロシアに渡航。
| コバルービアスの協力で、隕石の出所が、ツングースカ |である事を突き止めたモルダーは、クライチェックを、通 |訳代わりに伴って、ロシアに渡航した。
| しかしながら、ツングースカに到着したのも束の間、モ |ルダーとクライチェックは、スパイ容疑によって、強制労 |働収容所に連行されてしまう。

|・モルダー、“ピュリティー”に感染。
| 強制労働収容所の収容者は、隕石採掘の労働力であると |同時に、“ピュリティー”のワクチン開発における、実験 |台でもあった。
| モルダーもまた、例外ではなく、収容者と共に、“ピュ |リティー”に感染させられてしまう。
| 予め、投与されたワクチンのおかげで、一命は取り留め |たものの、そのワクチンはあくまで、開発中の未完成品で |あった。それゆえに、モルダーの脳内には、“ピュリティ |ー”が残留してしまう。

|・モルダー、強制労働収容所を脱走。
| ようやく、クライチェックの正体を知ったモルダーは、 |そのクライチェックを人質にする事で、強制労働収容所の |脱走に成功する。

|・スカリー、上院特別小委員会に召還。
| “タバコを吹かす男”の手腕に、懐疑的な“身だしなみ |の良い男”は、ソレンソン上院議員に働きかけ、上院特別 |小委員会を開催させる事で、隕石の消息を突き止めようと |する。
| スカリーは、偽証罪や反逆罪、議会侮辱罪に問われる危 |険を覚悟で、ソレンソン上院議員の執拗な追及に、黙秘を |貫いた。

|・クライチェック、左腕を切断。
| 強制労働収容所の周辺に暮らす人々は、種痘の際に移植 |された識別用遺伝子を、左腕ごと、切断する事によって、 |“ピュリティー”の感染実験を免れていた。識別用遺伝子 |が存在しない人間は、経過観察が不可能となり、実験台と |しては、不適格と見なされるのだ。
| モルダーの脱走に巻き込まれた結果、山中に一人、放置 |されたクライチェックは、一様に左腕を切断した、周辺住 |民の保護を受ける。
| クライチェックの左腕を切断したのは、その周辺住民で |あった。クライチェックの事を、遭難した一般人だとばか |り、思い込んでいた周辺住民は、親切心から、その左腕を |切断するに至ったのだった。

|・モルダー、帰国。
| しかしながら、全ては、後の祭りであった。
| モルダーの帰国後間もなく、ゴダード宇宙センターの隕 |石を初めとする、全ての物証は、ロシアのスパイ、パシー |リ・ペスコフによって、闇に葬られてしまった。

一月〜二月?

|・スカリー、鼻咽頭ガンを発病。
| 
前年、盆の窪に移植された金属片を、摘出した事が原因 |で、スカリーは、治療困難な鼻咽頭ガンを、発病する事と |なった。

|・モルダーとスカリー、UFOサークルを再訪。
| やはり、前年に、スカリーは、UFOサークルのメンバ |ーによって、ガンの発病を予言されていた。
| スカリーは、自身の発病原因を突き止めるため、モルダ |ーと共に、問題のUFOサークルを、再訪する。しかしな |がら、スカリーと同様、鼻咽頭ガンと闘病中のノーザンを |残して、メンバーは全員、ガンで死亡していた。

|・モルダー、ロンバード研究所に潜入。
| モルダーは、国立不妊治療施設の患者名簿に、UFOサ |ークルのメンバーと共に、スカリーの名前を発見する。
| 不妊治療の経験など、存在しないにもかかわらず、スカ |リーの名前がなぜ、患者名簿に記載されていたのか――モ |ルダーは、それを突き止めるべく、“ローン・ガンマン” |の協力を得て、国立不妊治療施設の上位機関・ロンバード |研究所に、潜入する。
| ロンバード研究所には、スカリーを初めとする、交配種 |研究の実験台となった女性から、採取された卵子が、大量 |保存されていた。問題の患者名簿は、交配種研究の材料と |して、卵子を採取された女性の、一覧表だったのである。

|・モルダー、スカリーの卵子を入手。
| モルダーが、スカリーの卵子を入手して、ロンバード研 |究所を脱出した直後、ノーザンは、闘病死を遂げた。その |死に対して、動揺を隠せないスカリーを前に、モルダーは |どうしても、ロンバード研究所で突き止めた事実を、打ち |明ける事ができなかった。
| モルダーはその後、スカリーの卵子を、専門家の元に持 |ち込み、生育可能性について、分析を依頼する。実は、U |FOサークルのメンバーは全員、不妊に悩んでおり、果た |して、スカリーの卵子もまた、生育不可能と診断される。

五月二十七日〜

|・“影の政府”、“ピュリティー”の伝播実験を実施。
| “影の政府”の手配で、七つの小包が、サウス・カロラ |イナ州ペイソンにある、JFK小学校へと、密かに発送さ |れた。その発送元は、モルダーが、
半年前に発見した、カ |ナダの秘密施設であった。
| 七つの小包には、“ピュリティー”を伝播するために、 |遺伝子操作を施された蜂が、潜んでいた。“影の政府”の |目的は、それらの蜂を、JFK小学校において、実際に放 |ち、研究成果を確認する事にあった。
| 遺伝子操作を施した、天然痘を代用して行われた、この |伝播実験は、見事に成功を収め、“ピュリティー”の伝播 |研究は、ほぼ完成したものと、推測される。

日付不明

|・“太った男”、モルダーの監視を開始。
| 失態や独断が相次ぐ“タバコを吹かす男”に、“身だし |なみの良い男”を初めとする、“影の政府”の面々は、不 |信感を募らせていた。
| “タバコを吹かす男”の専権事項であった、モルダーへ |の対応に、“太った男”が乗り出したのは、“影の政府” |の不信感が、決定的になった証拠であろう。
| “太った男”がまず、取りかかったのは、モルダーの動 |向を、監視する事であった。モルダーの監視任務には、国 |防先進研究計画庁の職員、スコット・オステルホフが、F |BIのブレヴィンズと協力して、あたる事となった。
| ブレヴィンズは、一九九二年、“タバコを吹かす男”の |命を受けて、スカリーを、X−ファイル課に配属した、張 |本人であった。

|・モルダー、地球外知的生命体の死体を発見。
| モルダーが、旧知の人類学者・アーリンスキーの連絡を |受けたのは、オステルホフが、監視任務に就いてから、少 |なくとも、二ヵ月後の事であった。
| アーリンスキーは、カナダのセント・エライアス山で発 |見した、地球外知的生命体の氷結死体を、無事に発掘すべ |く、モルダーに、協力を依頼してきたのだった。
| しかしながら、問題の氷結死体は、複数の生物細胞で構 |成された、キメラ細胞の産物であり、国防先進研究計画庁 |が手がけた代物であった。そうとは知らぬモルダーは、ア |ーリンスキーと共に、カナダに渡航し、問題の氷結死体を |発掘する。

|・モルダーとスカリー、マイケル・クリッチュガウの接触を受ける。
| 国防総省・先導宣伝部門の職員である、クリッチュガウ |の目的は、内部告発にあった。その内容は、米国政府が、 |地球外知的生命体やUFOに関する偽情報・誤情報を、氾 |濫させる事で、米国民の注意を、戦争と軍備拡張から逸ら |している、というものであった。
| 問題の氷結死体も、スカリーの発病も、戦争と軍備拡張 |を隠蔽する煙幕として、モルダーを利用するための、巧妙 |な嘘に過ぎない――クリッチュガウの内部告発は、モルダ |ーとスカリーの双方に、激しい衝撃を与えた。
| その後、アーリンスキーは、“影の政府”に暗殺され、 |問題の氷結死体も、クリッチュガウの予言通り、持ち去ら |れてしまう。

|・モルダー、国防先進研究計画庁に侵入。
| クリッチュガウの助言によって、モルダーはようやく、 |オステルホフの監視に気付いた。しかしながら、尋問を行 |う間もなく、抵抗にあった結果、モルダーはやむなく、オ |ステルホフを射殺する。
| オステルホフの残した通話記録から、モルダーは、FB |Iに、内通者が存在する事実を突き止める。その内通者を |特定するため、そして、クリッチュガウの内部告発につい |て、裏付調査を行うため、モルダーは、オステルホフを装 |って、国防先進研究計画庁に潜入する事を、決意する。
| そして、潜入調査の時間稼ぎを行うべく、オステルホフ |の死体を利用して、自身があたかも、自殺を遂げたかのよ |うに、FBIに報告するよう、スカリーを説得する。

|・モルダー、金属片を発見。
| 国防先進研究計画庁で、クリッチュガウと合流したモル |ダーは、その案内で、レベル4・生物学検疫棟に向かう。
| そこにあったのは、問題の氷結死体と寸分違わぬ、地球 |外知的生命体の死体であり、スカリーのように、人体実験 |を受ける、一般女性の姿であった。その光景を目の当たり |にしたモルダーは、それまでの信念を放棄し、クリッチュ |ガウの内部告発を、信じざるを得なかった。
| さらに、地下通路を介して、国防総省に侵入したモルダ |ーは、スカリーに移植されていたものと同種の、金属片を |入手する。

|・スカリー、危篤状態に。
| スカリーの虚偽報告を受けて、FBIは、モルダーの自 |殺を調査すべく、特別調査委員会を開催した。
| しかしながら、その席上での証言中に、スカリーは、鼻 |咽頭ガンの末期症状に、倒れてしまう。
| 国防先進研究計画庁を脱出したモルダーは、事態を知っ |て、スカリーの元に駆けつけたがために、その生存が、公 |になってしまう。そればかりか、オステルホフの殺害容疑 |で、一転、窮地に立たされる。

|・“タバコを吹かす男”、モルダーに取引を持ちかける。
| “タバコを吹かす男”は、殺人容疑からの救出を交換条 |件に、モルダーを、自身の傘下に加えようと、画策する。 |それはまるで、モルダーへの対応はあくまで、自身の専権 |事項なのだ、と、“太った男”に対して、誇示するかのよ |うであった。
| モルダーの信頼を勝ち得るべく、“タバコを吹かす男” |はまず、スカリーの治療法を教示する。

|・スカリー、金属片を移植。
| モルダーが入手した金属片を、盆の窪に移植する事―― |それが、スカリーの患う鼻咽頭ガンにとって、唯一の治療 |法であった。
| モルダーの説得を受けたスカリーは、最後の望みを託し |て、金属片の移植に同意する。

|・モルダー、ブレヴィンズを告発。
| スカリーの鼻咽頭ガンに、回復の兆候が見られない事も |あって、モルダーは結局、“タバコを吹かす男”との取引 |を拒否し、殺人容疑で、告発される危険も顧みず、特別調 |査委員会に出席する。
| その席上で、モルダーは、一か八かの賭けに出た。FB |Iの内通者として、ブレヴィンズを逆に、告発したのだ。
| 結果的には、これが奏効した。ブレヴィンズとオステル |ホフの関係が、判明した結果であろう。モルダーは、刑事 |訴追を免れたのである。
| ブレヴィンズはその後、“影の政府”によって、口封じ |に暗殺された。

|・“タバコを吹かす男”、狙撃を受ける。
| “タバコを吹かす男”は、“太った男”の命を受けた暗 |殺者・“静かなウィリー”の狙撃を受ける。“影の政府” |に渦巻いていた、“タバコを吹かす男”排斥の気運が、つ |いに、直接行動として、表面化したのである。
| しかしながら、重傷を負ったものの、“タバコを吹かす |男”は、一命を取り留め、カナダに逃れる。

|・スカリー、全快。
| モルダーはほとんど、希望を失っていたものの、スカリ |ーに移植された金属片は、“タバコを吹かす男”の言葉通 |り、鼻咽頭ガンを、全快に至らしめた。
| しかしながら、モルダーはそれでも、クリッチュガウの |内部告発をきっかけに、失ってしまった信念を、取り戻す |までには至らなかった。
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続く

※参照
 二世/731(3x09, 3x10)
 海底/アポクリファ(3x15, 3x16)
 支配者(4x01)
 紫煙(4x07)
 ツングースカ(4x08, 4x09)
 メメント・モリ(4x14)
 ゼロ・サム(4x21)
 ゲッセマネ帰還(4x24, 5x01, 5x02)
 ジ・エンド(5x20)
 創世記第六の絶滅(6x22, 7x01, 7x02)
 受胎(8x13)
 真実(9x19, 9x20)