競い合う各県の農業試験所
<コシヒカリをめぐる7不思議>
2002(平成14)年産水稲の品種別収穫量・作付面積をみると、1位=コシヒカリ3,187,000トン、606,500ha 2位=ひとめぼれ851,700トン、157,800ha 3位=ヒノヒカリ
829,500トン、163,700ha(農水省「子ども相談電話」HPから)。
このコシヒカリは全額国庫負担の水稲育種指定試験によって育成された品種で、民間企業の研究開発・新製品発売とは違って、研究開発者には成功報酬としてのボーナスはない。後日発表される資料に育種した農業試験場の名前はあるが、研究者の名前はなかなか見当たらない。このようなとても地味な研究の成果であり、その研究者には職人的な性格さえ感じる。誕生から普及への歩みは平坦ではなく、特にコシヒカリは何度も、あわや廃棄処分という危機に見舞われるなど、波乱に満ちた歩みだった。
育種から普及までの歩みを見ると、いくつもの「不思議」があることに気付く。酒井義昭著「コシヒカリ物語」からその「不思議」を要約すると次のようになる。
(1)戦争末期から敗戦直後の食糧難時代に、なぜ日本一おいしい新品種が育成されたのか?
(2)イモチ病に強い新品種を生み出すのが目的だったのに、コシヒカリはイモチ病に最も弱い品種である。
(3)新潟県農事試験場が人工交配したのに、福井県で水稲育種試験が実施されることになった際、譲り渡された系統から誕生した。
(4)福井県はなぜか、県奨励品種に採用することを拒否し、後に一度諦めた新潟県農試が奨励品種への採用を決断した。