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撮影機材の紹介
                         
       
       
ファーストステージ 天体写真
             

              

              
              銀塩4時間露出を成功させる工夫が施されています。



1.天体写真撮影システム紹介

●撮影鏡筒:ペンタックス125SDP
●ガイド鏡筒:タカハシFC-76
●赤道儀:タカハシシステム160P型赤道儀・ペンタックスMS-55i
●三脚:タカハシJ-S木製三脚
●カメラ:誠報社PRZ-69
●オートガイダー:SBIG ST-4
●プレート:強化特注平型プレート
●鏡筒バンド:アストロφ140鏡筒バンドX4本
●ピント検出装置:誠報社新型ナイフエッジピントテスター
●対象確認装置:誠報社K28mm対象確認アダプター(暗視野照明装置付)
●ファインダー:タカハシ8X40正立ファインダー
●その他:タカハシ製三脚アジャスター大X3個、その他に地面が軟弱なところには自作大型木製フラットナー有り。


2.銀塩天体写真は撮影が難しい。物理的ハードルが多い。

天体写真中、特に長時間露出を要求される星雲・星団銀塩写真の撮影は難しい。
その難しさは多々存在する。
・撮影対象が淡い。
・フィルム感度が時間経過とともに落ちてしまう相反則不軌の問題。
・フィルムは湿度に影響されやすく、その平面性を確保する難しさ。
・撮影対象が淡いため露出時間が長く、そのために要求される極軸合わせ精度、時間経過とともに発生する機材のたわみや沈み込み、正確なバランス等。
数え上げるときりが無い。
この物理的現象=悪玉要素をどのように克服していくかが成功の秘訣といっても過言ではない。


3.望遠鏡システムアップ

これらどれ一つを欠如しても撮影は成功しない。
撮影を成功させるには、トータル的サポートが必要となる。
以下に紹介するのは私が考案し改良を加え現在使用している撮影システム。
完全ではないが、かなり改善されたことは間違いない。

69カメラ押さえ金具
 
                          
                     鏡筒接眼装置の時間経過とともに発生するたわみを防止

露出時間2時間を越える辺りから重力方向にガイドが流れ始める。
いろいろな要素が考えられるが、とりあえず一つ一つ潰していく以外ないので写真のようなシステムを構築した。
125SDPには、接眼部根元下部に純正鏡筒バンドを取りつけた時、同じ平面状になるよう接眼部抑えネジM6X2本が装備されている。そのネジを利用して10mmのアルミ合金(5052)を後ろに伸ばし高さが合致するように鏡筒バンドを取り付けカメラ胴を抑えた。以前はカメラを強力なゴムひもで前方へ引っ張っていたがこの69カメラ押さえ金具を考案してからはそれから解放された。見栄えも良くなった。
接眼部ヘリコイドの僅かな遊びが改善された。

強化オリジナルプレート
                          
本システムはガイド鏡孫載せ方式を採用したため、要のプレートは単純に小さく強度が出せるように設計した。
厚みは18mm。タカハシEM-10系にも載せられるよう取り付けはフレキシブルに工夫・加工されている。
システム160に取り付けるときは、赤緯体の上部にt5mmφ70の出っ張りがあるので、t10mmφ130の円゜レートにφ71の穴の開いたドーナッツプレートを間に挟み上部が平らにしてから本プレートを取り付ける。。
鏡筒は、アストロφ140鏡筒バンド2本で支えている。アストロバンドの良い点は軽量で断面外がRになっているので強度的にしっかりしていること。但しバンドの内側にはフェルトではなくプラバンを貼り付けたわみ防止に一役かっている。

ガイドサポートプレート
                          
ガイド鏡を載せるためのプレートは、鏡筒本体に鏡筒バンドを絡ませ上部平ベースにt10X80X130mmのアルミ合金プレートを取り付けその上にFC-76鏡筒バンドを取り付けた。FC-76鏡筒バンドのフェルトもプラバンに交換している。
孫載せスタイルのメリットは、鏡筒がたわんだ場合ガイド鏡も一緒にたわむのでガイドミスの確立が低く抑えられること。しかし、これはあくまでも構想・考え方で実際は個々のたわみが有る為難しい場合が多い。

オートガイダーST-4周辺機器
                 
               
イメージシフトと36.4天頂プリズム 36.4天頂プリズムには31.7強化スリーブが付いている
オートガイダーST-4はオートガイダーの先駆けである。現在の新型製品と比べると感度はさほど高くは無いがパソコンは必要としない。私の場合ガイド星の導入方法は、裸眼LV20でガイド星を確認し<イメージシフトで中央に導いている。
ここでは、誠報社のイメージシフト装置と36.4天頂プリズム、31.7強化接眼スリーブでST-4を支えている。裸眼確認用アイピースはST-4と同焦点のビクセンLV-20を利用している。LV-20でのピント位置がST-4でのピント位置となる。
ここでのポイントは36.4mmの天頂プリズムを利用していることだ。直視でガイド星探しは骨が折れる仕事である。直角に光路を曲げることにより見上げる苦しさから解放された。
またよくやってしまうミスだが、イメージシフト装置ロックネジ3本の2本の固定を忘れて撮影に入ってしまう場合がある。そんな時は大抵重力方向に僅かにガイドが流れてしまう。

誠報社PRZ-69アストロカメラ  ■オリジナル乾燥空気送風システム ■オリジナル吸引ポンプ                              PRZ69アストロカメラ          乾燥空気送風システム                   吸引ポンプ
PRZ69アストロカメラはブローニーフィルムを装填して撮影する天体写真専用カメラだ。前にも述べたが長時間露出の世界でフィルムは湿度の影響を受けやすく、それに応じて不可解な星像の流れを生み出してしまう。それを防ぐためさまざまな工夫がこのカメラの中に施され、それを支援するパーツ群が必要になってくる。
まずカメラにはシャッターは付属していない。露出は筒先開閉方式で行うことになる。望遠鏡の先端に紙などで軽く作ったキャップを被せたり外したりして希望する露出を調整する。
次にカメラの裏板=圧版にはフィルム吸引の為の13箇所の吸引口が空いている。吸引ポンプと連結していてフィルムの浮きを強制的に圧版に押し付けピントのムラを減少させる。
次にカメラには胴側とフィルムホルダー内の2箇所にニップルが取り付けられていて、そこに乾燥空気を絶えず流すことにより、フィルムが湿度でたわんでしまう現象を防ぐいでいる。
しかし、露がきついとそれでも外から湿度が浸入してくる場合がある。そんな時は乾燥空気を送りつつビニール袋でカメラをすっぽり覆ってしまうことが最も効き目がある。

露付着防止システム
       
     FC-76とサミコンラバーヒーター      125SDPとサミコンラバーヒーター         AC100V用変圧器
私は望遠鏡フード以外は先端にあまり付けたくない。というのも先端に大きいフードを付けると風で望遠鏡全体が揺れてしまい星像が甘くなってしまう経験をしたからだ。
よって望遠鏡フードの中にサミコンラバーヒーターを装填し、変圧器で上昇温度を調整し適温で露が付着するのを防いでいる。この方法は確実に成果があがる。
どんなに露がきつい晩でも決して付着すめことはないシステムだ。

その他の改良点

@.ガイド鏡には注意!
長時間露出では僅かなたわみも命取り。
屈折望遠鏡をガイド鏡に使った場合、レンズがセルの中で中に浮いた状態になっている。当然重力方向に落ちてくるので、その動きが僅かなガイドミスとなって現れる場合がある。しかし最近の屈折望遠鏡にはこの現象だいぶ少なくなってきている。ガイド鏡を購入する時実際に望遠鏡を手に持ち降ってみるのも確認の方法として良いだろう。僅かに振動や音が伴うようであればその機種はガタがある証拠。別品を選択したほうが良いだろう。
実際自分が使っているFC-76にはレンズの浮き上がりガタが僅かにあった。接眼部はしっかり出来ているので変えるには忍びない。その隙間を特殊なフィルムで埋めるようにした。
接眼部の強度も問題点の中の一つだ。
ドロチューブクランプが付いていることが最低条件ではあるが、ロックした時そこを中心にシーソーになるものもある。
余り価格の安いものはこのようになる場合があるので注意が必要だ。
やはりガイド鏡として、ロック反対方向に二本のレール付のものを選択したい。最近のビクセンや以前からのタカハシの屈折望遠鏡であればこの問題はクリヤーできる。

A.三脚の沈み込みには注意!
設置する地面が土や軟弱なアスファルトの場合、気温や霜の関係で浮き沈みが生じてしまう。メーカー製の小さな三脚アジャスターだけでは心もとない。そこで望遠鏡用の大きな下駄を準備しては如何だろうか。
30p四方で厚みが20mmぐらい、材質はラワン合板を使い、下側外周に沿って角材を当て木にすればそれでOK。
砂利や不正地、軟弱な場所に威力を発揮する。
このように仕掛けをすることによって極軸の狂いを最小限に留める努力が不可欠となる。

B.鏡筒バンドのフェルトは信用できない。
長時間露出を行うのであれば、鏡筒バンドフェルトも交換すべきである。いくら強く締めても鏡筒は中に浮いている状態には変わらずガイドミスの要因として他ならない。そこでプラバンという模型工作用プラステック板が加工がしやすくとても扱いが良い。厚さや大きさはまちまちなので適当に選択できる。カラーは何と行っても白が良いだろう。
乾燥ボンドで接着し、望遠鏡に抱かせておけば一晩でがっちり接着できる。


4.撮影を成功させるために
天体写真の成功失敗は機材のハード面の完成度如何によるところが大きい。
とりあえず機材の大まかなシステムアップがここに完了したとしよう。
これから長時間露出をどのように成功させるかはそのハード面の使い方如何による。

@極軸は正確に合わせる事が基本中の基本。
極軸望遠鏡の精度は正確ではない。どの赤道儀内蔵極軸望遠鏡でも必ず偏芯がある。その度合いは機材のグレートによってある程度の範囲以内で調整されている。この偏芯が長時間露出の天体写真では悪さを及ぼす要因の一つになるのだ。
中心がどの方向にどのぐらいずれているか自分の機材であれば知っておくべきだろう。最終的にずれている方向に北極星を同じ分ずらしてあげれば補正することができる。
また撮影途中、極軸がずれない工夫が是非とも必要になってくる。
これは地盤沈下や機材重量からくる機材自体のたわみなどで、ちょっとした工夫で解消できるものもある。

A赤径と赤緯のバランスとシステムプレートの関係
全て組み上げた時にクランプフリーで赤径と赤緯どの方向に向けてもピタリとそこで止まる事が出来るシステムは全く問題ない。僅かに重力方向に動きが生じるシステムはガイドミスの可能性が大きくなる。
現在撮影には、ガイドサポートシステムとしてオートガイダーが普通に使用されている。撮影中バランスが悪いと、重力方向に動きが偏るためオートガイダーが修正信号を出し続ける結果となる。赤緯にはバックラッシュという僅かなギヤー間の隙間があり機敏には反応しない。オートガイダーとしては反応が鈍いと大きく修正信号を出す結果となる、ここでオーバーシュートの原因となり、ガイドミスを誘発する。つまり行き過ぎた修正をしてしまい目標を通り越し、又逆方向に再修正を行い同じことを永遠と繰り返す結果となる。ガイドミスの要因はここにもあるのだ。
ここで大事なのがシステムを支えるプレートである。プレートがアバウトだと正確なバランスは無理になる。その機材機材に応じたシステムプレートが是非とも必要になってくる。

B赤道儀のクランプロック時のガタはありませんか?
天体写真で大事な要素として赤緯方向のクランプ時のガタの問題である。
最近の赤道儀は自動導入化が進んでいる為、軸受け強度精度やウォームネジとウォームホィール間の隙間調整が緩く調整されている。ロックしたにもかかわらず何となく軟弱さがぬぐいきれないとか、下手すると僅かなガタが生じている場合がある。
確認方法は簡単で、赤緯クランプをロックした状態で望遠鏡の先端を回転方向に軽くゆすると良く分かる。ここで動く場合はガタがあるとみて間違いない。悪作用としてガタがあると風で簡単に撓ってしまったり、バックラッシュが大きいためオートガイダーのオーバーシュートの原因になったりで、百害あって一利なし状態である。
但しこれは自動導入をスムーズに行うためメーカーの考え方で試行されている場合があり、メーカー基準以内という判断があることもある。
しかし、天体写真を撮影する場合はそれでは通用しないので、何とかメーカーに依頼し調整するようにしたいものだ。
赤径方向のガタは、地球が自転しているのであまり大きな問題にはならないが、風には影響を受けやすくなるので無いにこしたことはない。

Cトップヘビーは禁物
赤道儀に掲載できる重量は大まかに決まっている。
カタログ表示の最大同架重量というものがそうだ。できればそれ以内でシステムを構築したい。
これを超えると風の影響を受けやすかったり、システムが重力方向にたわみ極軸が狂ったり、モーター振動が伝わったりろくなことはない。
屈折望遠鏡のように高さが無くコンパクトな場合は、ある程度重くなっても何とかしのげる。逆にニュートン反射のように軽くても嵩があるものは出来るだけ軽く使うか一クラス上の赤道儀を使いたい。赤径軸回転体中心から撮影機材中心までの距離と重さが赤道儀にどのくらい負担をかけるかによって外部・内部的影響が効いてくるからだ。

D赤道儀赤緯ウォームネジとウォームホィールのバックラッシュ調整
前項でも説明をしたが、赤緯クランプをロックした時の回転方向のガタが仮にあった場合、撮影成功確立はかなり低いものになってしまうだろう。赤緯バックラッシュは撮影する場合どんなことがあってもあってはならないガタだ。ガタがある場合は速やかに対策をとっておくようにしたい。自分で調整が出来る方は必ず調整してから出かけるようにしたい。できない方はメーカーに早めに依頼しよう。

Eオートガイダーを使う前に基本的な天球の動きを確認する。
昔は肉眼でガイドを監視し、ずれた場合方向キーでアンチ修正をしながら長時間露出を行っていた。
今は冷却CCDカメラ搭載のオートガイダーが主流になっている。人間が自分の目でガイド星を感じ修正する場合は観たとおりアンチ修正を行っていけばよいのだが、オートガイダーは電子の眼で自動的にズレを検知しアンチ信号をコントローラーに伝えて修正している。その精度も肉眼では及びのつかない高精度な値で修正している。
オートガイダーを使う前に天球の動きを理解し、オートガイダーをしっかり使いこなすようにしたい。

天球上の星の動きとモーター修正スピードの関係

a.赤道上で星が見かけ上動くスピードは、赤径スピード1に対して赤緯スピードが1。仮にこれを1:1としよう。従ってモーター修正スピードは赤径・赤緯とも倍速として設定する。
b.天頂付近は赤道上のスピード1に対して、赤径がその1/2、赤緯が2倍となる。ここでモーター修正スピードを赤径を4倍、赤緯を1/4倍に設定する。
c.極付近は赤道上のスピード1に対して、赤径がその1/4、赤緯が4倍。ここでモータースピードを赤径8倍、赤緯を1/8倍に設定する。
結論:以上設定をまめに行うことによって、天球上何処に向けても修正スピードが常に赤径1に対して赤緯1に近づけられる。但し現実的にコートローラーの機能ではこんなにシビアな調整は出来ないので、赤径は倍速のまま、赤緯を出来るだけまめに調整してあげればオートガイダーの追尾精度を上げることができる。特にST-4の場合は有効である。

F露がきつい時
乾燥空気送風システムを持っていないときや持っていてもきつそうな時の露対策は、コンビニ袋をカメラに被せ外からの露をシャットアウトすることだ。ある程度凌げるはず。露がカメラの中に浸入する前がポイント。

ここでの説明はあくまでも長時間露出を行い追尾精度を上げるための機材の扱い方や考え方を説明した。こんなことをしなくても成功している方も多々いらっしゃると思われるが、そうでない場合は少しでも参考になれば幸いである。