戦略労務第391号(2025/12)
イントロダクション
今年も残すところ1か月を切り寒さが厳しくなってきました。過日インフルエンザが流行していましたが幾分落ち着いているのでしょうか。「戦略労務」第391号をお届けします。
★労基署の調査について(前号より続き)
・調査後の対応
労働基準監督官調査の結果、法令違反が認められれば指導や是正勧告が行われます。この指導は、あくまでも事実上の指導であり、何らかの強制力があるわけではありません。
したがって、裁判所の判決のような法的拘束力はなく、労働者が強制的に権利を主張するには民事訴訟が必要です。民事訴訟では労基の判断と異なる結論が出る可能性もあります。とはいっても法令違反の状況がある以上は、是正のうえ報告を行う必要があります。
事実認定や法的判断に誤りがある場合には是正報告の中でその旨の主張を行います。弁護士や社労士などの専門家と相談しながら対応を行いましょう。
どのような事実について、どのような法令に違反したと認定されたのかを確認し、どのようにすれば法令違反の状態を改善できるのかを検討します。
ポイントとしては事業所にとって労基の調査の結果が直ちに重大な影響を与えるものではなく、労基の調査に対して敵対的に対応する必要はないでしょう。
勧告を無視して労働法違反の状態を放置し続けると、労働基準監督官によって刑事告訴や逮捕・送検の対象となる可能性が高まります。なお、裁判で指導の取り消しを求めるなどの法的手続きは用意されていません。これは、指導自体に法的な効果がないので、それを法的に取り消す必要がないためです。
・まとめ
労働基準監督署は敵ではなく、労働者と使用者の間に立つ中立の監督機関です。調査には指導を兼ねており、会社の将来に役立つことも多くありますから、怖がらずにチャンスととらえ、誠実かつ協力的に対応することが、会社の利益にとって最も望ましい対応です。不安がある場合は、専門家に相談して適切な対応を準備しましょう。
★健康保険関係
健康保険被扶養者状況リスト(協会提出用)の提出期限が12月12日なので、忘れずに控をとって提出してください。また、健康保険証の使用期限が過ぎていますが、協会けんぽへの返戻は不要なので記念に保管しておいても構いませんし、はさみを入れて廃棄処分しても構いません。

