戦略労務第374号(2024/7)

イントロダクション

 関東地方は梅雨入り後も暑い日が続いています。ほぼ全国的なようですが梅雨が明けたら・・・。梅雨の時期というのに降雨量の割には激しい雨のため、あまり地面にはしみこまずに流れて行ってしまいます。
「戦略労務」第374号をお届けします。今号では「年収の壁」についてご説明します。

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★いわゆる年収の壁について

 厚生年金保険及び健康保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料の負担が発生しません。

 こうした方の収入が増加して一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方がいらっしゃいます。その収入基準(年収換算で106 万円や 130 万円)がいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。

 年収106万円以上または年収130万円以上となることで健康保険の被扶養者から外れることにより保険料負担が発生することから就業調整してしまうことへの対応として、

① 106万円の壁対応では、パート・アルバイトで働く方が社会保険の加入に合わせて手取り収
  入を減らさない取り組みを実施する企業に対し支援する制度があります。

② 130万円の壁対応では、パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどし
  て、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養
  者認定が可能となる仕組みがあります。

・「従業員100人超企業に週20時間以上で勤務する場合」は、所定内賃金が月額8.8万円以上
 (年収約106万円)になると厚生年金保険等に加入
・「従業員100人超」は、令和6年10月に従業員50人超の企業まで拡大(下記参照)
・「従業員数」は、企業の「厚生年金保険の適用対象者数(被保険者数)」で判断

・健康保険・厚生年金保険の適用拡大
社会保険の被保険者数が51人以上の会社を対象に、正社員の4分の3に満たない時間働くパート・アルバイトなどであっても、要件を満たす場合には健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱い、社会保険に加入させることが義務付けられました。

※年収の壁は他にもあります。

・住民税の壁は年収93~100万円でそれを超えると課税されます。
・所得税の壁は年収103万円以下では税金がかかりません。→これも大きな壁です。
・配偶者が103万円以下であれば配偶者控除が受けられ本人の課税所得が減額されます。

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