戦略労務第360号(2023/5)

イントロダクション

 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に合わせるかのように、新規感染者数はほとんど増えていないようです。ゴールデンウィークは何とか乗り越えたのでしょうか。ここからの急増は無いかも知れませんが手洗いうがいなど基本的なことは心がけておきたいと思います。「戦略労務」第360号をお届けします。

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★身元保証人とは(身元保証に関する法律)

 労働者を採用する際、当該労働者が横領等をして使用者に損害を与える場合に備えて、身元保証人との間で、身元保証契約を交わす企業も多いでしょう。近頃は「身元保証人」をおく定めがある就業規則も少なくなっているようですが参考になればと思います。

 実際に、身元保証人に対して損害賠償を請求しようとするときを考えると、身元保証契約は、その契約期間を定めていない場合にはその成立から3年間の効力とされ、3年を経過した後は効力を失います。ただし、商工業の見習者の身元保証については、5年間とされています。

 なお、身元保証の期間を定めた場合には、その期間内は効力を有することになりますが、5年間を超える期間を定めた場合には、5年間に短縮されます。5年目以降も身元保証契約を交わしたい場合には、更新することができますが、更新の場合にも、5年が限度となります。

 また、当該労働者に損害発生に対する故意・重過失があり、当該労働者に対して損害賠償請求ができる場合でなければ、身元保証人に対しても、損害賠償請求をすることはできません。

 身元保証人に対する損害賠償請求の可否及びその額は、使用者の当該労働者に対する過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由、その注意の程度、当該労働者の任務又は身上の変化等に照らして、身元保証人に責任を課すべき状況であるか等により判断されます。使用者側(上司)の過失もある場合には、身元保証人に対して損害賠償請求をすることができない場合もあります。

 すなわち、当該損害の発生に当たり、使用者側(上司)の監督に過失がある場合、損害賠償請求が認められないか、認められたとしても、減額されることが考えられます。

 なお、使用者は、身元保証人に損害賠償請求を請求することになる事由、例えば労働者の横領行為等を発見した場合には、遅滞なく、身元保証人に対して通知しなければなりません。

 参考判例
労働者が勤務先から現金や小切手を横領した事案において、勤務先が6年間にわたり着服行為に気付かなかったことや、勤務先の経理が杜撰であったこと等から、損害額のうち、身元保証人である父については6割、身元保証人である友人については3割の限度で当該労働者と連帯責任を負うとした事例(東京地判平23・8・10)

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