戦略労務第359号(2023/4)

イントロダクション

 新型コロナウイルス感染症に関する話題が激減していますが完全な終息にはまだ長い時間が必要でしょう。来月8日からは感染症法2類から5類への移行が決まっていますが当分の間は頭の片隅に置いておく必要がありそうです。「戦略労務」第359号をお届けします。

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★休日出勤と年休消化について

 「年次有給休暇を取得した週の休日に出勤しました。この扱いはどうなりますか。」
このような質問が時々あります。

 完全週休2日制で平日に年休取得し休日に出勤したら?(法定休日は日曜日)
完全週休2日制(土日休日)の会社で社員が所用で2日間平日に年休を取得しました。その社員は業務の都合上、自らすすんで所定休業日である土日に出勤しました。この場合の賃金はどのように計算すればよいでしょう。

 例えば、水曜日と木曜日に年休を取得し、土日に出勤した場合を考えますと、一週間の実労働時間に変わりがありませんから時間外割増賃金の支払いは不要です。しかし、5日間の勤務ではなく7日間の出勤とみなすことになり、土曜日の分については割増のない賃金支払が必要であり、日曜日については法定休日労働として扱われ135%の賃金支払となります。

★年休取得時賃金について

 「歩合給の対象者が入院し、長期間休まざるを得ない状況です。最初は年次有給休暇を消化し、それから欠勤となり、2ヵ月経過後に私傷病休職を発令します。先月末に発病し、今月は丸々年休を消化するだけです。この場合、今月は歩合給がゼロなので、年休賃金の計算はどうなるのでしょうか。」

 年休の賃金は、①通常の賃金 ②平均賃金 ③健康保険の標準報酬日額
のいずれかを選択します(労働基準法第39条第6項)。一度決めたら、事業主の一存で他の計算方法に切り替えることはできません。就業規則改定等の手続を経る必要があります。平均賃金や標準報酬日額なら、当月に歩合給の実績がなくても計算は単純です。 「平均賃金」の場合、年休付与の最初の日を基準とし、その前日(賃金締切日があれば賃金締切日)から3ヵ月が対象期間となります。「標準報酬日額」は、定時決定等で定められた標準報酬月額を30で除して算定(5円未満切捨て、5円以上10円未満切り上げ)します(健康保険法第99条)。

 お尋ねのケースでは、「通常の賃金」を選択されているのでしょう。この場合、歩合給部分については、次の算式を用いて計算します(労働基準法施行規則第25条第6号)。

賃金算定期間に払われた歩合給総額÷当該期間の総労働時間×当該期間の1日平均所定労働時間

 ですから、月によって歩合給額が変動すれば、年休の賃金も変動します。注意が必要なのは、年休をたくさん取得して、歩合給総額が減ればそれに応じて年休賃金が下がるとは限らない点です。分子の歩合給総額が減っても、分母の総労働時間も年休分小さくなるので、通常のぺースで歩合給を稼いでいれば、年休の賃金は一定になります。

 当月、歩合給実績がゼロのときは、「歩合給が支払われた最後の賃金算定期間」を計算べースとしますから、この場合、前月の実績を基に年休の賃金を算定することになります。

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