戦略労務第348号(2022/5)

イントロダクション

 新型コロナウイルス感染症については、大型連休も終了して若干増加傾向ですが急増は無かったようでほっとしているところです。しかし影響が出るのはこれからかも知れませんのでまだ充分注意したいと思います。「戦略労務」第348号をお届けします。

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★「エンパワーメント」について

 言葉は常に変化していますが、ここ数年の間にも、次々と新しい用語が誕生し使われるようになっています。「エンパワーメント」という言葉も、そうしたものの1つでしょう。ジェンダー問題など社会的なニュースで聞く機会が増えましたが、ビジネスシーンでの使用も多くなっています。では、「エンパワーメント」とは、一体何を意味する言葉なのでしょうか。

 「エンパワーメント」は、英語の「empowerment」であり、その意味は「権限を持たせること」「自信を与えること」「力を付けてやること」といったもので、「人間に生来備わる能力を表に出す」といったニュアンスを持っています。日本語として使われる場合も、基本的にこのような意味合いになります。また、広い意味では「夢や希望を与え、人々を鼓舞する」といった使い方もされます。

 ビジネス用語としての「エンパワーメント」の主な意味は、「権限移譲」というものです。また、「自律性の促進」や「能力の開花」といった意味合いも持ちます。

 従来の企業経営では、従業員が細かいマニュアルや上層部の意思にただ従うだけといったケースが主でした。しかし、それでは従業員個々のやる気をそぎ、結果として組織全体の成長を阻むことにもなりかねません。ビジネスにおける「エンパワーメント」の概念は、そうした問題を解決するために、現場に権限を与えて従業員一人一人の自律的な行動を促そうというものです。それにより、企業としてのパフォーマンスを最大化する狙いがあります。

 ビジネスにおける「エンパワーメント」には、「管理部門→現場」「上司→部下」へと仕事の権限を移譲する「構造的アプローチ」と、従業員の自己効力感を高める「心理的アプローチ」の2種類が含まれます。「エンパワーメント」を導入することで、企業は社員一人一人の能力を高めて組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

 しかし、必ずしもそうしたメリットばかりではなく、注意点もあります。
 そのひとつは、「個人と組織の方向性がずれる可能性がある」ということです。個人の裁量が大きくなる分組織との連動がうまく働かなくなるおそれがあります。これを防ぐには、個々が判断できる範囲や、上司に相談すべきケースなどを事前に決めておく必要があります。

 もうひとつの問題は、「従業員の中には権限移譲に向かない者もいる」ということです。人によっては、自分で考えて動くことが大きなストレスとなり、場合によっては心身に影響を及ぼすこともあります。この対策としては、導入後の個々の社員の能力などを細かくチェックし、必要なら面談や一時停止などの措置を取ることが求められます。

 「社会人の教科書」より引用(一部編集)

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