戦略労務第344号(2022/1)

イントロダクション

 本年もどうぞよろしくお願い致します。新型コロナウイルス感染症のオミクロン株というのは感染力が強いと言われています。今までどおり、いや今まで以上に良く考えて行動しなければなりませんね。
 今年も当事務所全員が一丸となり、顧問先従業員の皆さんが定年まで勤めていたい、やめたくないと思うような職場創りに貢献したいと考えています。今年も良い年になるよう一年間頑張りましょう。「戦略労務」第344号をお届けします。

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★労働基準法の改正について(再掲)

 令和2年4月改正前の労働基準法第115条では、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」と定められていました。旧来は賃金請求権の時効を2年と定めていたものが、民法改正により契約に基づく債権の消滅時効期間は原則として債権者が権利を行使することを知った時から5年間に統一することとされました。しかし、いきなり5年間に統一してしまうことは事務負担の増加などが懸念され、実効性を確保する意味でも当分の間は3年間とすることとされました。
 この改正により、2020年4月1日以降に支払いが発生する賃金については2年から3年(当分の間です)に延長されています。よって、万が一不適切な賃金計算を行っていた場合、遡り是正となった場合には旧来よりも多くの額(単純に1.5倍)を支払う必要があるということです。

 一般的に身近な事例として残業代が挙げられます。遡り是正の対象となるのは、残業代の計算式が誤っていた場合、残業代の基礎単価が誤っていた場合、そもそも支払っていない場合などが想定されます。残業代は賞与や退職金と異なり、対象となった場合は法律上必ず支払わなければならないものであって、使用者側の裁量は一切はたらきません。

 また、労働基準法第41条に規定する「管理監督者」として取り扱っている事業場において、実態として管理監督者には当たらないと否認された場合にも、当該期間に生じた時間外労働については残業代として支払いが必要になることから、労務管理上注意すべき点となります。

 給与明細には支給額(基本給や残業代など)と控除額(所得税や社会保険料)ならびに残業時間数を記載しますが、それはあくまで使用者側からの一方的な通知であるため、正確でかつ労働者が同意しているとは限りません。よって、各月の残業時間については相違がない旨、本人の同意を書面で取得しておくことが、将来的に未払残業代を請求されるリスク低減には有効であると考えます。

 最後に残業時間問題は大きな問題になります。一律の労働時間制ではなく変形労働時間制(一週間単位・一か月単位・一年単位・フレックスタイムなど)を採用するとか、どうしても所定休日や法定休日の出勤が必要になる場合には「休日の振替」をおこなうなど、時間外労働や休日労働とならない工夫をすることが労使にもメリットになるものと考えます。

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