戦略労務第341号(2021/10)

イントロダクション

 このところ嫌な湿気もなく良い季節になりました。今後も時にはまだ日中暑い日もあると思いますが、普通にしていれば汗をかくわけでもなく朝晩以外は寒くもないでしょう。
 コロナ禍の影響がまだまだ続いていますがようやく先が見えたような気がしています。しかし、10月になっても休業を余儀なくされている事業所もあり、今後もまたどうなるか予断を許しません。「戦略労務」第341号をお届けします。

top△

★休日の振替と代休について

 労働法の中核である労働基準法の中でもっとも重要な部分を占めているのが、労働時間・休日・休暇に関連するものです。しかも、内容的には複雑な要素が絡み合っていて、なかなか理解が難しい面があります。加えて、会社が社員数を削減する一方で、残っている社員には残業や休日出勤などの長時間労働を強いることが常態化し、社会的な問題にもなっています。

 そのような問題の解決方法の一つとして挙げられるのが、休日振替や代休の仕組みを積極的に採用し確実に実行することです。今回は、この休日振替と代休について、法律ではどのようになっているのか、両者の違いは何か、企業としてはどのような対応が必要か、などを中心に考えてみます。

 ◎新聞を賑わせているサービス残業や過重労働・過労死を回避するためにも、休日振替や代休は重要な選択手段である。

 ◎休日振替と代休の区分を正しく理解し適正な時間管理をすることでコスト削減に繋がる。

 過労死の急増、サービス残業の摘発、休日出勤手当・残業手当(コスト)の増加など、会社にとっても個人にとっても、大げさにいえば「ブラック」な「残業・休日出勤」(時間外労働)を低減するために、「休日振替」と「代休」の利用について考えます。

★休日の振替と代休の相違点

 まず、休日振替とは、会社が業務上の必要性(または天災地変や交通ストなど)から、あらかじめ就業規則や年間カレンダーで「休日」と定めている、例えば一般的には土曜・日曜・祝日などを「出勤日」に変更し、その代替として本来の「出勤日」(月~金曜など)を「休日」とすることをいいます。
 このように、本来の休日が変更されて、この出勤はもはや「休日出勤」ではなくなったのですから、「割増賃金」を支給する必要がなくなります。ポイントは前もって振替日を決めておくことです。

 これに対して、代休では前もって出勤日・休日が決まっていませんから、例えば今度の休日に出勤してもらいたい旨を社員に伝え、出勤できる人に出勤してもらいます。代休についてはとっても構わないし、本人と会社の都合が合わなければ取らなくても構わない。というようなことになりますと休日出勤となり割増賃金の対象になります。(所定休日であれば25%増し、法定休日であれば35%増し)
 代休をとったとしてもとらなかったとしても、休日出勤の事実がありますから、いずれにしても割増分は支払う必要が出てしまいます。

top△