戦略労務第335号(2021/4)

イントロダクション

 新型コロナウイルス感染症の感染者数はまた増加傾向になってきています。オリンピックの聖火が日本各地をまわっていますが開催は予定通りにできるのでしょうか。世界的に見て日本は感染者数・死者数ともに少ないかも知れませんが、このままの状態ではどこもが様子見で他の国の不参加表明を待っているような気もします。早期のワクチン接種が待たれますね。
「戦略労務」第335号をお届けします。

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★説明できない待遇差を禁止・・・同一労働同一賃金

 コロナ禍の中、中小企業にも同一労働同一賃金が義務化されました。
これは、同じ会社で同じ仕事(職務の内容が同じ)をしているのであれば正社員と非正規社員(パートタイマーやアルバイト、契約社員)という雇用形態の違いによって、賃金などの待遇に差をつけることを禁止するというものです。

 「職務の内容が同じ」とは、正社員と比べて
①業務の内容(職種)が同じ
②従事している業務のうち、中心となっている業務が同じ
③業務に伴う責任の程度が著しく異ならない
とすると職務の内容が「同じ」と判断される可能性が高く、そうでなければ職務の内容は「異なる」と判断される可能性が高い。

 「職務の内容・配置の変更の範囲が同じ」とは、正社員と非正規社員を比べて、
①転勤は正社員だけ
②転勤の範囲が正社員の方が広範囲である
③職務の内容・配置の変更は正社員だけ
④正社員は配置の変更の範囲が広い
などであれば職務の内容・配置の変更の範囲が「異なる」と判断される可能性が高く、そうでなければ職務の内容・配置の変更の範囲が「同じ」と判断される可能性が高い。

 仕事内容や責任の程度が全て正社員と同じで、転勤や配置転換も同じように実施されるのであれば、これは非正規社員にも同様の待遇を与えるべきであり、差別的な取り扱いをすることが禁止されます。これが「均等待遇」です。

 一方で、これらが正社員と異なっているのであれば待遇に差があったとしても容認されますが、その違いの程度により均衡の取れた待遇(「均衡待遇」)を与えることが必要で、その待遇差を説明できなければなりません。説明できないものであれば「不合理な待遇差」として是正が必要になります。

 「均等待遇」と「均衡待遇」のどちらの対象になるかは、「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」について、正社員と非正規社員を詳細に比較して判断することになります。

 均等待遇の対象者と判断した場合であれば、全ての待遇を同じ扱いにしなければなりません。また、均衡待遇の対象者であれば、待遇にどのような差があり、その差の理由は何なのかについて確認することが求められます。

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