FRED HERSCH AND JULIAN LAGE
生真面目にやり過ぎた?
"FREE FLYING"
FRED HERSCH(p), JULIAN LAGE(g)
2013年2月 ライヴ録音 (PALMETTO : PM2168)
FRED HERSCHとJULIAN LAGEのデュオ・アルバム。
HERSCHと言えば、2012年録音の"ALIVE AT THE VANGUARD"(JAZZ批評 777.)が何と言っても素晴らしく、完全復活を印象付けるに相応しい出来だった。今年の4月には東京のCOTTON CLUBでピアノ・ソロ・ライヴがあったので聴きに行ったけど、ソロの出来はもう一つで悔しさのあまりヤケ食いしたのを覚えている。
一方のJULIAN LAGEは最近、ネットでも話題になることが多いギターリストだ。最近のアルバムではGARY BURTONの"GUIDED
TOUR"(JAZZ批評 813.)に参加している。
@"SONG WITHOUT WORDS #4: DUET" 一聴、これはクラシックだね。ピアノのイントロが長めに入り、ギターが遠慮がちに合流する。絶え間のない演奏で音符がトラックを埋め尽くす。ジャズらしいフィーリングの欠片も感じない。
A"DOWN HOME" (FOR BILL FIESELL) HERSCHのオリジナルで、"ALONE AT THE VANGUARD"(JAZZ批評 685.)の中でも演奏されている。ギターリストのBILL FRIESELLに捧げられたものらしい。これもクラッシクを聴くよう。
B"HEARTLAND" (FOR ART LANDE) 美しいバラード。イン・テンポになることはない。
C"FREE FLYING" (FOR EGBERTO GISMONTI) GISMONTIはブラジルのマルチリード奏者であり、作曲家でもある。これもテーマがクラッシクのようだが、中盤では丁々発止のインタープレイを展開する。
D"BEATRICE" SAM RIVERSのこの曲が最近のアルバムで良く演奏されている。二人の息もあっているしいい演奏だとは思うんだけど、何かフィーリングが違うんだなあ。
E"SONG WITHOUT WORDS #3: TANGO"
F"STEALTHINESS" (FOR JIM HALL) これはJIM HALL(g)に捧げたHERSCHのオリジナル。どの曲も曲想が似ていて、まるでクラシックを聴いているかのような錯覚に陥る。
G"GRAVITY'S PULL" (FOR MARY JO SALTER ) このMARY JO SALTERという人はアメリカの女流詩人らしい。美しくて優しテーマだ。
H"MONK'S DREAM" 確かに"MONK'S DREAM"なのだが・・・。
僕の紹介してきたアルバムの中ではピアノとギターのデュオというフォーマットは少ない。BILL EVANSとJIM HALLの名盤と言われる"UNDERCURRENT"(JAZZ批評 122.)、STEFANO BOLLANIとLUIGI TESSAROLLOの"HOMAGE TO BILL EVANS AND JIM HALL"(JAZZ批評 326.)とかLARRY CORYELLとKENNY DREW JR.による"DUALITY"(JAZZ批評 704.)くらいしか思い浮かばないのだけど、この3枚はジャズ・フィーリングが横溢していてお勧めのアルバム。
対して、本アルバムはクラシック臭が強くて素直に受け入れられない。二人のインタープレイは息が合っているし上手いとは思うのだが、聴いていてちっとも楽しくない。「何か違うだろう!」という感じなのだ。丁度、超優等生の音楽を聴いているようなのだ。遊び心に欠けるというのだろうか、はたまた、ユーモアに欠けるというのだろうか・・・。9曲中5曲が誰かに捧げたHERSCHのオリジナルなので生真面目にやり過ぎたのかもしれない。 (2013,10,14)
試聴サイト : http://nextbop.com/blog/fredherschjulianlagetoreleasefreeflyingsept3
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