独断的JAZZ批評 777.

FRED HERSCH
HERSCH、完全復活!
"ALIVE AT THE VANGUARD"
FRED HERSCH(p), JOHN HEBERT(b), ERIC MCPHERSON(ds)
2012年2月 ライヴ音 (PALMETTO : PM 2159)

FRED HERSCHというピアニストは僕にとって、結構悩ましいピアニストで、今までに6枚のレビュー書いているけど心震わすアルバムがないというのが現実であった。なかなか良いピアニストだとは思うのだけど、その都度、ドラムスがバタバタしていたり、録音が悪かったり、HERSCH自身の体調が極めて悪かったり・・・。
特に今回と同じメンバーで録音された2010年のトリオ・アルバム"WHIRL"(JAZZ批評 641.)に至っては宣伝文句の「奇跡の復活」どころか、「奇跡の凡作」と酷評してしまったほどだ。
一時は昏睡状態にまで陥った体調不良から、ピアノが弾けるまでに回復したのは喜ばしいことだが、演奏にメリハリがなくて平坦、淡泊、退屈な演奏ではいかんともし難たかった。
このアルバムはそれから2年経った、2012年2月の録音だ。しかも、VILLAGE VANGUARDにおけるライヴ、2枚組。


DISK 1
@"HAVANA" HERSCHのオリジナル。演奏にキレがあるね。この演奏を聴いただけで体調がかなり回復しているという事が分かる。3者のアンサンブルも良好だ。これは期待できるかも。右手も左手も踊っている。
A"TRISTESSE" 
ピアノとベースがフリー・テンポのユニゾンで始まるバラード。ドラマーのPAUL MOTIANに捧げた曲らしい。
B"SEGMENT" 
C. PARKERの曲。3者のアンサンブルが良くなってきた。今までのアルバムでは、このサポート陣は少し弱いかなと思っていたが、これはいいね。ピアノ・トリオはこうでなくちゃあ!いいテーマにいいアドリブあり!
C"LONELY WOMEN / NARDIS" 
ドラムのソロからベースとピアノがかぶる。HEBERTのベースがいい音している。NARDISに入ったあたりからイン・テンポにシフトして4ビートを刻み出す。何よりもHERSCHのピアノが生き生きと輝いているのがいいね。
D"DREAM OF MONK" 
HEBERTの太くてアコースティックなベース音がいいね。
E"RISING, FALLING" 
F"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" 
テーマの演奏からスリリング!3者が有機的に結びついている。テーマから徐々に高揚感を増していくそのプロセスも聴きもの。
G"DOXY" 
物憂げなイントロから始まる。ミディアム・スローでの3者のインタープレイが泥臭くて、気怠い感じがいいなあ。

DISK 2
@"OPENER" 
A"I FALL IN LOVE TOO EASILY" 
B"JACKALOPE" 
C"THE WIND / MOON AND SAND" 
前半はリリカルなピアノ・ソロ。イン・テンポになって"MOON AND SAND"にシフトするが、美しいテーマと軽快なリズムが相俟って力強くも絶妙のトリオ演奏を披露してくれる。これは「HERSCH、完全復活」と言って良いでしょう!
D"SARTORIAL" 
E"FROM THIS MOMENT ON" 
F"THE SONG IS YOU / PLAYED TWICE"
 しっとりと酔い痴れよう!

このアルバムは、HERSCH、完全復活と言ってもいいのではないか?何よりもプレイに力強さが蘇ってきたし、ピアノ・タッチも実になめらか。それに釣られてサイドメンも躍動しているもの。
いつも「隔靴掻痒」的な気分を抱え込んできたけど、このアルバムはスカッとした。これはHERSCHのベスト・アルバムになろうということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.11.01)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=dRpJhELxfRM



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