独断的JAZZ批評 828.

BILL EVANS
温故知新
"INTERPLAY"
FREDDIE HUBBARD(tp), JIM HALL(g), BILL EVANS(p), PERCY HEATH(b),
PHILLY JOE JONES(ds)
1962年7月 スタジオ録音 (RIVERSIDE : 00025218630825)


何で今更、EVANSなのかという声も聞こえてきそうだ。
新譜を中心にレビューを書いてきているのだが、最近、FB友達とやり取りしているうちにEVANSの重要な2枚が所蔵アルバムの中に含まれていないことに気が付いた。そのうちの1枚が本アルバム。昔、何回となく聴いたアルバムである。録音から50年以上経った今聴いても全く色褪せることがないし、新しい発見もあった。
トランペットには当時24歳のF. HUBBARDとギターに31歳のJ. HALLを配したクインテットだ。ベースにMJQのPERCY HEATHが入っているのも嬉しいではないか!

@"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC" ペットとギターがユニゾンでテーマを弾く。EVANSに続くHUBBARDの若々しいペットがいいね。盤石のベースとドラムスに乗って迷いがない。派手さはないけどHALLのギターはこのアルバムで見事な彩りを添えている。
A"WHEN YOU WISH UPON A STAR" 
邦題「星に願いを」 映画「ピノキオ」の主題歌。美しいバラードだ。誰もがシンプルに歌い上げた。これで十分、これ以上いらない。
B"I'LL NEVER SMILE AGAIN (take 7)" 
JONESの軽快なスティック・ワークで始まる。HEATHの4ビートがいいね。シンプル・アンド・ステディ!こういうのを聴いていると今のベーシストはあれこれやり過ぎだね。ベースっていうのはまさに「土台」で太くて逞しい音色があれば、それだけで十分だという気にさえなる。これは新しい発見だった。8小節交換を挟んでテーマに戻る。
C"I'LL NEVER SMILE AGAIN (take 6)" 
ボーナス・トラック。
D"INTERPLAY" 
何と言っても本アルバムの白眉はこの曲だ。EVANSの書いた12小節のマイナー・ブルース。兎に角、曲がいい!ブルースなのに洗練されていて、少々の灰汁もある。1コーラスのイントロの後にテーマに入るが、このテーマがお洒落なのだ。ついつい口笛を吹きたくなる。
3コーラス目にはHUBBARDがミュートを効かせて合流する。このフィーリングが最高!続く、HALLのギターは無駄な音が一つもない。さらにEVANSがコロコロと転がるシングル・トーンでソロを執る。続く、ミュートしたペットが切ない。特筆したいのがHEATHのウォーキング・ベースだ。無駄なもの、余分なものを排した前ノリの4ビートが太くて逞しい。

E"YOU GO TO MY HEAD" 
直訳では「あなたが私の頭に来ます」だが、ここは「あなたが頭に浮かんでくる」と訳されたり、「諦めきれないあなた」と意訳されているようだ。BILLIE HOLIDAYやFRANK SINATRAが歌って話題になったという。ギター→トランペット→ピアノ→ドラムスと繋いでテーマに戻る。
F"WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS" 
これも陽気な佳曲。メロディがとても覚えやすい。みんなが楽しげでいいね。EVANSが盟友・SCOTT LAFAROを失ったのが1年前。傷心のEVANSも努めて明るく振る舞っている。

5つの個性が一つの方向に向けてベクトルが合っている。盤石のリズム陣に乗ってそれぞれの個性も発揮されている。
特筆すべきはHEATHの基本に忠実なベース・ワークだ。まさに「土台」になっている。太くて逞しい音色があれば、それだけで十分。そういう新しい発見があった。
「温故知新」 まさにそういうことを教えてくれたアルバムということで、遅まきながら「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2013.10.18)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=bxKo7kp5a6Y&list=
PLBDD0A296D3E46DF9

         このサイトではアルバムの全6曲を試聴できる。


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