独断的JAZZ批評 704.

LARRY CORYELL / KENNY DREW, JR.
爽やかなドライブ感と見事なアンサンブル
"DUALITY"
LARRY CORYELL(g), KENNY DREW, JR. (p)
2011年リリース スタジオ録音 (RANDOM ACT RECORDS : RAR1004CD)


LARRY CORYELLの名前をネット・ショップで見つけたときに、懐かしい想いで一杯になったのと同時に、心が躍った。まだ、現役で頑張っていたのだと・・・。しばらく、その名前も、その活躍も見聞きすることがなかったので、もう引退しているのかと思っていた。
CORYELLといえば、いの一番に1967年録音でGARY BURTONがリーダーとなった"DUSTER"(JAZZ批評 74.)を思い出す。ベースにSTEVE SWALLOW、ドラムスにROY HAYNESを加えたカルテットの演奏。野性味あふれるCORYELLの演奏が強く印象に残った。そして、達者な3人のプレイヤーとの融合により新しい感覚を生み出していた。改めて、CDを引っ張り出して聴いてみたけど何年経っても古さを感じることがない。これが44年も前のアルバムとは俄かには信じがたい。素晴らしいアルバムである。その1943年生まれのCORYELLも今では68歳になった。
翻って、このアルバムはKENNY DREW, JR.とのデュオ・アルバム。名前に"JR."が付いているようにKENNY DREW(JAZZ批評 49. & 292.)の息子さんだ。偉大だった親父の影に隠れてしまった印象があるが、なかなかどうして、ここではCORYELLとピタリ息の合った演奏を繰り広げている。

@"SILVER'S SERENADE" HORACE SILVERの書いた曲。実に爽やか。夏のオフにビール片手に聴きたくなる。爽やかな一陣の風のよう。
A"FARMER'S WALTZ" 

B"THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES" 
邦題「夜は千の目を持つ」 ドライブ感溢れる演奏でぐいぐいと前に進んでいく。KENNYの奏でるベースラインが一層の躍動感を募る。息の合ったアンサンブル。気持ちいいなあ!
C"SZABODAR" 
CORYELLがGABOR SZABOに捧げた佳曲。スインギーな二人の対話が素晴らしい。
D"A SILENT WAR" 
E"NOSTALGIA IN TIMES SQUARE" 
CHARLES MINGUSの曲。ブルージーな演奏に終始する。ソロを執っている相方に対する互いのバッキングが素晴らしい。
F"OIL ON WATER" 

G"GOODBYE MR. JONES" 
KENNYがHANK JONESに捧げた曲。ここではHANKが参加していたCANNONBALL ADDERLEYの"SOMETHIN' ELSE"(JAZZ批評 145.)から"AUTUMN LEAVES"のベース・ラインを借用している。
H"DUALITY : NENAD'S SONATA" ギターだけの演奏でオーバーダビングしている。いまだ衰えぬCORYELLのギター・テクニックが確認できる。
I"MOANIN'"
 何気なくこういう曲が最後に入っているのは嬉しいことだ。「どうだ、参ったか!」と言わんばかりの泥臭さがいいね。ご機嫌な気分にさせてくれる「締め」

"DUSTER"を録音したときは、CORYELLが未だ24歳という若さの時。当時、ロックとフュージョン畑のギタリストとして脚光を浴びた。事実、そのアルバムではロックという新たな息吹を与えていた。そのCORYELLも、今や白髪の好々爺然とした姿で写真に写っている。いやがうえにも44年という歳月を感じさせる。ロック少年の面影はなくなった。今あるのは、まさにジャズ・ギターリストとしての勇姿である。
相方のKENNY DREW, JR. もデュオという最小ユニットの中で配慮と機転の利いたプレイを披露している。あたかも、KENNY BARRONのようでもある。
このアルバムの録音年月日は不明だ。しかし、GにHANK JONESに対するトリビュート・トラックが挿入されているところをみると、HANKが亡くなった2010年5月以降の録音であることは間違いない。
ギターとピアノのデュオ・アルバムというとSTEFANO BOLLANIとLUIGI TESSAROLLOの"HOMAGE TO BILL EVANS AND JIM HALL"(JAZZ批評 326.)をかつて紹介しているが、これと甲乙付け難い良いアルバムに仕上がった。共通するのは爽やかなドライブ感と見事なアンサンブルということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.07.10)

試聴サイト : http://www.randomactrecords.com/duality.html




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