独断的JAZZ批評 732.

PEOPLE ARE MACHINES
肌で受け止め、肌で感じるジャズ
"FRACTAL"
MARIUS NESET(ts,ss), MAGNUS HJORTH(p), PETTER ELDH(b), ANTON EGER(ds)
2008年12月 スタジオ録音 (CLOUD : DDCJ-4005)


今年のベスト・アルバムの選定を締め切ろうという矢先に届いたアルバム。
PEOPLE ARE MACHINESのアルバム・レビューはこれが3枚目。過去の2枚はいずれも5つ星。1枚目がグループ名を冠した2006年録音の"PEOPLE ARE MACHINES"(JAZZ批評 562.)。2枚目が2007年のライヴ録音"GETXO EUROPAR JAZZALDIA 2007"(JAZZ批評 585.)で、こちらは2009年の年間BEST 3の1枚として選定している。いずれも、知性と野性を渾然一体にした演奏に圧倒されたものだ。
このアルバムを含めた3枚、メンバーは不動だ。MAGNUSとPETTERのコンビにPHRONESIS(JAZZ批評 541.)でMAGNUSと競演経験のあるEGERが加わった。それにテナーのMARIUSが加わったカルテット。MARIUSに至っては弱冠26歳。彼らの共通点はコペンハーゲンのリズミック音楽院の卒業生ということか。
この4人から繰り出されるジャズはホットでクール。じっくりと堪能いただきたい。

@"8-BIT MOMENTS" 難しいリズムを刻むが、これが一糸の乱れもなくピタリと決まっている。リズミックなテーマの後にELDHのベースがソロを執りビートを刻む。これが凄い!躍動しまくっているものね。本当に凄いベーシストだ。
A"21/8-27/8" 
これも難しいリズムだ。数えてはいけない。考えてはいけない。肌で感ずるのだ。
B"SEEDING" 
リリカルなピアノで始まる。打楽器のように打ち込むELDHのベースが意識的にビートを遅らしているのだろう。続くベース・ソロには痺れるね。EGERのブラシ・ワークが心地よい。高揚感を醸成していくMAGNUSのピアノが素晴らしい。
C"THE RAPPORT" 
どんなに難しいリズム、難しいテーマであってもピタリと合っているのがこのグループの凄さ。この曲、"GETXO"の中にある"BLAME WILHELM"に良く似ている。同じ曲かと思った・・・。
D"FAR AWAY" 
この曲は先の"GETXO"でも演奏されている曲。一度聴くと耳から離れないNESETの書いたバラード。たった4人の演奏がまるでオーケストラのように分厚い。
E"ZOODIAKK" 
これも難しいテーマだけど、小憎らしいことに彼らは平然と演奏してるんだよね。MARIUSはソプラノ・サックスを吹いている。
F"CATCH THIS CAT" 
この曲も"GETXO"とかぶっている。これも難しいリズムだ。何故にかくも簡単に演奏できるのか?やはりタイム・キーパーとしてEGERの果たしている役割は大きい。ここではEGERのドラミングに注目したい。このドラマーはこのグループには欠かせない存在だ。切れと力強いドラミングがこのグループにピッタリと嵌っている。MAGNUSとELDHとの相性もいいしね。
G"AUD LHOC" 
ここではテナーとソプラノ・サックスの音色が聞こえるのでオーバー・ダビングか?まさかROLAND KIRKのように二つのマウス・ピースを咥えて吹いてはいないでしょう。最後は、まさに野性になった姿で演奏を終える。

知性的でありながら野性の匂いもプンプンする。頭で理解しようとしないほうが良い。肌で受け止め、肌で感じる・・・そういうジャズだ。
滑り込みセーフで2011年のベスト・アルバム選定に間に合った。こういうのも運というか、そのアルバムが持っているパワーということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。ついでに録音の良さも追記しておこう。   (2011.12.14)

試聴サイト : http://www.boundee.jp/catalog/details/product_18126.html



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