PEOPLE ARE MACHINES
しかし、こいつぁ、生で聴きたいね!
"GETXO EUROPAR JAZZALDIA 2007"
MARIUS NESET(ts), MAGNUS HJORTH(p), PETTER ELDH(b), ANTON EGER(ds)
2007年7月 ライヴ録音 (ERRABAL : ER. 019)


テナー・カルテット・アルバムの第3弾。
"PEOPLE ARE MACHINES"の2007年 GETXO FESTIVAL のライブ盤だ。"PAM"のCDは2006年のスタジオ録音盤"PEOPLE ARE MACHINES"(JAZZ批評 562.)を既に紹介しているが、これは刺激的なアルバムだった。知性と野性を渾然一体にしたような演奏に圧倒されっ放しであった。しかも、これが北欧の20代の若者が演奏していたということで二度びっくり。インテリジェンスとエモーションが炸裂する演奏に口あんぐりといった風情だったと思う。
メンバーのMAGNUS HJORTH と PETTER ELDH は今年の6月に来日。いくつかのライヴ・ハウスでライヴ演奏を行った。そのときのドラマーは池長一美。僕は6月26日の御茶ノ水「ナル」のライヴに行った。エキサイティングなライヴで生涯最高のライヴだといっても過言ではなかった。閉演後、ELDH の手を見せてもらったけど、長い指先にはまん丸のタコが出来ていたのが強く印象に残っている。

@"D.S" 
スタジオ録音盤にも入っていた曲。哀愁を帯びた旋律が印象的だ。進むにしたがって昂揚感をどんどん増してきてNESETのテナーが咆哮する。次にアドリブを執るHJORTHのピアノが鋭さと美しさを兼ね備えている。このあたり、ピアノ、ベース、ドラムスのインタープレイは絶妙だ。「ジャズはこれだよ!」と思っている間に終わってしまう11分と36秒。
A"BLAME WILHELM" 
この曲もスタジオ録音盤に入っていた。テーマに続くアドリブではELDHのベースが強靭なビートを刻んでいく。ドスの効いたEGERのドラミング、アタックの強いピアノのバッキング。全てが鋭く切れている。4分半過ぎあたりからテンポがガラリと変わりピアノとベースがミディアム・テンポで絡んでいく。このHJORTHのピアノがときにひょうきんにプレイするが、徐々にテンポ・アップして珠を転がすような珠玉のパッセージを綴っていく。このピアニストは本当に凄い。御茶ノ水「ナル」の感動が蘇ってきた。HJORTHにべた惚れだと思わせる9分と28秒
B"FAR AWAY" 
一転して、美しいバラード。HJORTHのリリカルなピアノに心が吸い込まれていく。その後に続くNESETのテナーが切ない。圧倒的な高揚感とクライマックスの感動を味わえる5分と51秒。
C"CATCH THIS CAT"
 ここでは、ELDHのベース・ワークが存分に楽しめる。このPETTER ELDHというベーシストも凄いプレイヤーで東京ライヴでは度肝を抜かれた。じきにヨーロッパだけに留まらず世界を代表するベーシストになるだろう。強靭なビートの持ち主で歌心も満載だ。4ビートを聴いているだけで心が躍ってくる。最後は4人でおちゃらけて終わるところなんぞ、余裕だねと思わせる14分と16秒。
D"IN THE CREASE"
 忘れてならないのがドラムスのANTON EGER。重厚感のあるドラムスを叩くがドラミングに切れがあって常に躍動している。このEGERはPHRONESISのレギュラー・メンバーでもあり"ORGANIC WARFARE"(JAZZ批評 541.)や"GREEN DELAY"(JAZZ批評 567.)にも参加している。ド迫力でブローするNESET。渾然一体となった4人の白熱プレイに釘付けとなる13分と31秒。拍手、歓声、鳴り止まず。

日本ではまだ無名に近い"PEOPLE ARE MACHINES"であるが、こうして2枚目のアルバムがリリースされたのを機会に、なるべく沢山の方に聴いてほしいと思った。
MAGNUS HJORTHはトリオ・アルバムとしても既に2枚のアルバムをリリースしている。"LOCO MOTIF"(JAZZ批評 537.)と"OLD NEW BORROWED BLUE"(JAZZ批評 555.)がそれで、この2枚も一度聴いてもらいたいアルバムだ。
スタジオ録音盤の"PEOPLE ARE MACHINES"(JAZZ批評 562.)のレビューでも書いたが、このアルバムは今年のベスト・ファイヴには入ろうかというアルバムだ。そう考えていたら、このライヴ盤がリリースされた。さて困った。どちらをベスト・アルバムに入れようか?!実に悩ましい。まだ3ヶ月あるから、大いに悩んで楽しもうと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。しかし、こいつぁ、生で聴きたいね!   (2009.10.03))

試聴サイト : http://www.myspace.com/peoplearemachines



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独断的JAZZ批評 585.