独断的JAZZ批評 727.

ROBERT HURST
ライヴでこの生演奏を聴いたら評価もガラッと変わってくるかもしれない
"UNREHURST VOLUME 2"
ROBERT GLASPER(p), ROBERT HURST(b), CHRIS DAVE(ds)
2007年3月 ライヴ録音 (BMI : 820467-11113-8)


過去のレビューを調べてみると、僕はアメリカの黒人ピアノ・トリオのアルバムをあまり聴いていない。
先日紹介したERIC REEDの"SOMETHING BEAUTIFUL"(JAZZ批評 725.)は久しぶりの黒人トリオ。黒人トリオが5つ星をゲットしたのはAHMAD JAMALの"A QUIET TIME"(JAZZ批評 592.)以来で何と2年ぶりのことだった。(正確にはこのJAMALのアルバムはパーカッションを加えたクァルテットの演奏だったが・・・。)
何も黒人トリオを毛嫌いしているわけでも何でもない。たまたま僕の好みにフィットしなかっただけだ。今回のアルバムもそうなのだが、概して、黒人トリオはモーダルな演奏が多い。モード奏法は演奏者にはより高い自由度を与えるのだろう。自由度が高いほど良い演奏になるかというとそうではない。自由度が高いことと良いアドリブが演奏できることとはイコールではない。自由度が高いゆえのリスクがある。逆に定型的な演奏に嵌ってしまうという陥穽があるのだ。事実、モード奏法のアドリブは似たような演奏が多い。僕の持つモード奏法の印象は音数が多くて無機質な感じ。
勿論、プレイヤーの実力っていうのもあるのだろう。まあ、MILES DAVISの"MILESTONES"や"KIND OF BLUE"(JAZZ批評 70.)は別格中の別格といっても良いだろう。
コード進行という制約があって、その中で如何に自分の色を出していくかに面白みがあるといっても過言ではない・・・と思っている。だからスタンダード・ナンバーが面白い。どうアレンジし、どうアドリブしていくかはプレイヤーの腕に掛かっているのだから。僕は、初めてそのアルバムを試聴するときに、もしスタンダードが含まれていれば、まずはスタンダード・ナンバーを聴くことにしている。それを聴けばそのプレイヤーの実力のほどが窺えると思っているからだ。

@"I LOVE YOU" そのスタンダード・ナンバー。テーマ以外は思いっきりモーダルな演奏だ。確かに制約を受けないアプローチでやりたいようにやったという印象が強い。で、楽しい演奏かというとそうではない。僕には色艶のない無機質な印象が強いのだ。
それと、このHURSTのベース音。これっていい音なのだろうか?ビートはありそうだが、音色がアンプで増幅した音色だ。ブガブガ、モゴモゴ・・・これじゃあね!

A"TRUTH REVEALED W/INTRO" 
B"BOB'S 5/4 TUNE" 
C"MONK'S DREAM" 
D"BOB'S BLUES"
 このアルバムのベスト。これはブルースそのもの。HURSTのベース・ワークもグルーヴィ。願わくば、増幅がもう少し控えめで音色に締まりがあれば良かった。ベースがリーダーだから仕方がないのかもしれないが、ベースが突出していて3者の音のバランスが悪いのが残念。演奏時間はこのアルバムとしては短めの8分弱。

たった5曲で70分。1曲平均14分。ライヴならでは長尺演奏。ライヴのように張り詰めた雰囲気で聴くのではないから、途中で欠伸のひとつも出てしまう。
ライヴでこの生演奏を聴いたら評価もガラッと変わってくるかもしれない。   (2011.11.20)


試聴サイト : http://www.cdbaby.com/cd/roberthurst2




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