独断的JAZZ批評 728.

JEAN CHRISTOPHE CHOLET
ピアノ・トリオはピアノが主役でなければならないのだ
"CONNEX"
JEAN CHRISTOPHE CHOLET(p), HEIRI KANZIG(b), MAECEL PAPAUX(ds)
2010年12月 スタジオ録音 (P-VINE RECORDS : PCD-93470)


JEAN CHRISTOPHE CHOLETのアルバム・レビューはこれが3枚目。かつて紹介した2枚のアルバムも優れものだった。1枚目が2005年録音の"UNDER THE WHALE"(JAZZ批評 512.)で、2枚目が2007年録音の"BEYOND THE CIRCLE"(JAZZ批評 514.)(「浮き輪」のジャケットが妙に印象に残った)で、僕は両方のアルバムに星5つを献上している。3者の力量も緊密感も抜群に高かった。更には、躍動感と美しさにも溢れており、3者から生まれるプラスαが協和音の倍音のように増幅して聴こえたものだ。
このアルバム"CONNEX"は、それから3年後の2010年録音。3人のアンサンブルに更に磨きが掛かっているのだろうか?

@"TRIPLETTES" おおっと!かのe.s.t(JAZZ批評 371.etc)と見紛う演奏にビックリ。
A"ODE TO CHARLIE M." 
アルト・サックスの御大、CHARLIE MARIANOに捧げたバラード。MARIANOと言えば、秋吉敏子の旦那さんだった時期もあり日本のジャズ・プレイヤーに多大な影響を与えた人だ。2006年録音の"SILVER BLUE"でCHOLETは競演している。
B"CONNEX" 
フェード・イン。中東風異国情緒のある曲でピアノは弦を押さえながら弾いたりしている。
C"CHORAL" 
今回のアルバムではベースのKANZIGのプレイが数多くフィーチャーされている。ゆったりとしたベース・ソロの背景でPAPAUXのブラシとCHOLETのピアノが効果的な合いの手を打つ。透き通るようなヨーロピアン・バラード。
D"SPONTANEOUS POINT" 
今度は明るくて、軽くて重いボサノバ・タッチの演奏。ベースとブラシのインタープレイがフィーチャーされている。
E"SWISS BLUES" 
背中がムズムズするようなハイトーンのアルコ演奏で始まる。イン・テンポになるとグルーヴィなアドリブを奏でる。PAPAUXのセンシティヴなドラミングが良いね。後に、ここでもベース・ソロが長めにフィーチャーされる。KANZIGのベースはビートもあるし、音色も素晴らしい。
F"LETTER FROM HK" 
このトラックの前半のアンサンブルは素晴らしい!美しく、躍動している。また、ここでもベースがフィーチャーされてるんだよね。少々、多過ぎでは?
G"SONG 13" 
PAPAUXのドラム・ソロで始まる。と、突然に重低音のピアノが絡んでくるが、抽象画的な色彩から一気に高速4ビートを刻みだす展開にシフトしていく。
H"AFTER THE CIRCLE" 
多分、このタイトルの"CIRCLE"とは"BEYOND THE CIRCLE"(JAZZ批評 514.)を指しているのだろう。
I"FANTINE"
 フリー・テンポで奏でる3者のインタープレイ。

一つ一つは悪くはないのだけど、全体としてこじんまりまとまった感じ。前作における躍動感とか美しさ、緊密感が少しずつ痩せ細った感じ。もっと、激しく、熱く、それでいて、クールに奏でて欲しかった。それと、今回はKANZIGのベースがフィーチャーされることが多かった。これも良し悪し。ピアノ・トリオはピアノが主役でなければならないのだ。その点で、物足りなさを残してしまう。   (2011.11.26)

試聴サイト : http://jeanchristophecholet.com/musique/discographie



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