AHMAD JAMAL
(尊敬の念を込めて)この爺さん、本当に凄いわ!!
"A QUIET TIME"
AHMAD JAMAL(p), JAMES CAMMACK(b), KENNY WASHINGTON(ds), MANOLO BADRENA(perc)
2009年7月 スタジオ録音 (DREYFUS JAZZ : FDM 46050 369452)


AHMAD JAMALを聴くのは何十年ぶりだろう?1958年録音の"BUT NOT FOR ME"あたりは、昔、良く聴いた記憶があるのだが、最近はさっぱりだった。
JAMALは1930年7月生まれというから、今年、79歳。少なくともこの演奏からはそういう年齢を感じさせない。というよりも、実に若々しい演奏で、最近の軟弱な若いピアニストには爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいと思うほど。
ピアノ・トリオにパーカッションが加わってカルテットの演奏だが、このパーカッションが程よい彩を添えている。それが、独特のJAMALカラーになっているように思う。
全11曲中、9曲がJAMALの曲で、
DがRANDY WESTON、Jがスタンダード・ナンバーとなっている。

@"PARIS AFTER DARK" 本当に79歳の爺さんが演奏しているの?この力強いタッチとグルーヴ感に溢れた演奏は何なんだ!4ビートを刻めば力強く躍動しているし、ピアノは気持ちよく飛び跳ねているし・・・。恐るべし!JAMAL。
A"THE LOVE IS LOST"
 一転、リリカルな演奏になった。いやあ、達者なピアノだ。ところどころで入るパーカッションが効果的。
B"FLIGHT TO RUSSIA"
 陽気なテーマ。切れ味鋭い演奏を披露する。パーカッションがここでも効いている。「間」と「ダイナミクス」に溢れている。憎いことに、エンディングまで洒落ている。
C"POETRY"
 しかし、驚きを通り越して、慄くね。
D"HI FLY" CAMMACK、WASHINGTON、BADRENAのサポート陣は超強力だ。JAMALが好き勝手やっても全く動じるところがない。泰然自若としている。
E"MY INSPIRATION" 
F"AFTER JALC(JAZZ AT LINCOLN CENTER)" 
素晴らしい一体感。
G"A QUIET TIME" 
良く動く指先には「切れ」が宿っているし、音に艶がある。本当にこれは神業だよね。
H"TRANQUILITY" 
こういうの生で聴いたら痺れること間違いなし。日本に来ないかなあ?
I"THE BLOOMING FLOWER"
 
J"I HEAR A RHAPSODY" このスタンダード・ナンバーをこういう風に弾くのか!

AHMAD JAMALといえば、かのMILES DAVISが"KIND OF BLUE"(JAZZ批評 70.)の中にある"FREDDIE FREELOADER"に1曲だけに参加させたWYNTON KELLYに対し、JAMALの「間」と「ダイナミクス」を賞賛し「JAMALのように弾け!」と言ったという逸話が残されている。ついでにWikipediaによれば、このとき、既にピアノはBILL EVANSの後任としてWYNTON KELLYに決まっていたというが、モード奏法にはEVANSということでKELLYの出番は上記のブルース1曲だけになり、拗ねてしまったとある。
それから丁度、半世紀。今もってJAMALの「間」と「ダイナミクス」は健在だ。このアルバムは明らかにJAMALのワンマン・ピアノであるが、見事なアンサンブルがそのことを忘れさせる。
言葉は悪いが、「ジャズ界の生きてる化石」の天晴れアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
(尊敬の念を込めて言うならば)この爺さん、本当に凄いわ!!久しぶりに黒人ピアニストの凄い演奏を堪能できたし、超刺激的だった!!ここ数年の中で聴いた黒人ピアニストのアルバムでは圧倒的な素晴らしさだ。若手の黒人ピアニストも負けずに頑張ってほしい。   (2009.11.18)


試聴サイト : http://www.emusic.com/album/Ahmad-Jamal-A-Quiet-Time-MP3-Download/11638387.html



独断的JAZZ批評 592.