独断的JAZZ批評 729.

JORIS ROELOFS
痺れる演奏っていうのはこういうのを言うんだよね
"JORIS ROELOFS QUARTET LIVE AT THE BIMHUIS"
JORIS ROELOFS(as,bass clarinet), AARON GOLDBERG(p), JOE SANDERS(b),
GREGORY HUTCHINSON(ds)
2010年11月 ライヴ録音 (JJR RECORDS)


2007年録音の"INTRODUCING JORIS ROELOFS"(JAZZ批評 523.)では、ROELOFSはアルト・サックスとクラリネットを持ち替えて演奏していた。その美しい音色と溢れんばかりの歌心はとても24歳の青年の演奏とは思えなかった。今度のアルバムではアルトとバス・クラリネットを持ち替えている。ジャズの中ではバス・クラリネットというのは馴染みの薄い楽器だ。かつて、ERIC DOLPHYが演奏していたのが記憶に残るくらいだ。
オランダのTHE BIMHUISでのライヴ録音。前アルバムと同じくピアノにはAARON GOLDBERGが参加している。

@"THE MAGIC CHEF" 先ずはアルトを持って登場だ。GOLDBERGのピアノが冴え渡っている。このプレイヤーはリーダー(JAZZ批評 623.)よりもサイドメンとしてのほうがいい味出している。後半のHUTCHINSONの迫力あるドラミングもグッドだ。ライヴではこのくらい叩いてくれないと聴いた気がしない。
A"AUGUST 30" 
今度はバス・クラリネット。これがいい音色なんだなあ!高音部の魅力と重低音の迫力。一粒で2度美味しい・・・ような。ピアノの音色と見事にマッチングしている。
B"LOWER SPACE" 
今度もバスクラ。なかなか表現力豊かな楽器だけど、何で今まで使われてこなかったのだろう?擬音的な使い方も面白い。緊迫感に溢れ、躍動している。
C"BACKGROUND MUSIC" 
この曲は先の"INTRODUCING・・・"でも演奏されていた。そのアルバムの中のベスト・プレイと僕は書いていた。今回も超高速の演奏だ。アルトを持っている。渾然一体となった躍動感が満喫できる。ピアノもベースもドラムスも一体感溢れるアグレッシブな演奏に思わずニヤリとしてしまう。GOLDBERGのピアノが切れまくっている。是非、"INTRODUCING・・・"の演奏とも聴き比べて欲しい。
D"DAY DREAM" 
GOLDBERGがしっとりとしたピアノを奏でる。続くバス・クラリネットが泣かせるなあ。特に重低音が腹に響く。これから、この楽器がジャズの世界でも日の目を見ることになるかもしれない。GOLDBERGのピアノもいいね。伸び伸びとしているし、センスの良いバッキングも聴きものだ。
E"26" 
フリー・テンポのインタープレイで始まり、徐々にイン・テンポに。プレイヤー4人が各自の色を出しながらもまとまりがある。SANDERSの太くて奔放なベースワーク、HUTCHINSONの切れのあるドラミング、要所を突いたGOLDBERGのピアノ、そして、伸びやかなROELOFSのアルト・サックス、どれもが刺激しあって輝いている。
F"MY IDEAL"
 バラード演奏のバスクラ。何とも言えない音色だ。バス・クラリネットの魅力を最大限に引き出した演奏だ。ウーン、素晴らしい!続くGOLDBERGのピアノも輝きを放っているのだけど、その背後を流れるバスクラの音色がまるでベースのアルコのよう。ピアノとバスクラのデュオ。いやあ、参った。これは素晴らしい!痺れる演奏っていうのはこういうのを言うんだよね。

ジャズの世界では馴染みの薄いバス・クラリネットの魅力を存分に引き出している。木管楽器特有の温かで艶やかな高音部、腹に染み渡る重低音。その美しい音色と溢れんばかりの歌心は人を魅了してやまない。ROELOFSは1984年生まれというから現在、27歳。この若さにして、この歌心。末恐ろしいほどの才能と言えるだろう。
ライヴという環境の中で、オーディエンスの反応に呼応して熱い演奏を繰り広げた。4者個々の力量も、4者のインタープレイも申し分ない。今年を代表するアルバムの1枚になるに違いないと確信しつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.11.28)

試聴サイト : http://www.jorisroelofs.com/



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