独断的JAZZ批評 690.

MANABU OHISHI
もしこのアルバムを1枚の絵に表したとするとジャケット・デザインのような絵になるだろう
"WATER MIRROR"
大石 学(p)
2010年5月 スタジオ録音 (ATELIER SAWANO : AS 108)


昨年リリースされたアルバム"WISH"(JAZZ批評 643.)に引き続いて、澤野工房から発売になった大石学のアルバム。今度はソロだ。実は、このアルバムは"WISH"を録音した翌日と翌々日に同じスタジオでレコーディングされている。"WISH"とは一卵性双生児みたいなアルバムなのである。
"WISH"はとてもいいアルバムだった。携わった人々のジャズに対する慈しみみたいなものを感じることができた。僕はそのアルバムを2010年のベスト 3(JAZZ批評 667.)の1枚として選んだ。
その大石がほぼ同時にソロ・アルバムを作った。もう聴く前から、どんなアルバムであるかが予想できた。それはその人となりから醸し出される雰囲気みたいなもの、あるいは、情念みたいなものだろうか?

@"CALM" 
A"WATER MIRROR" 
B"PLEASURE" 
C"AFTER THE RAIN" 
D"HANAUTA" 
ここまでの5曲は大石のオリジナル。いずれの曲も美しくて、切なくて、優しい。多分、この音楽には大石の人柄が余すことなく表れているのだと思う。日頃の淀んだ心の中が浄化されて、少しずつ澄んでいくような気持ちよさを体感することができるだろう。 
E"HOW INSENSITIVE" ここからの4曲はいずれも有名なスタンダード・ナンバーが続く。
F"'ROUND MIDNIGHT" 
G"ALONE TOGETHER" 
この曲こそ、このアルバムのスパイス!一味唐辛子!
H"FLY ME TO THE MOON"
 これら4つの有名曲も大石の手にかかるとあたかもオリジナルような雰囲気を漂わせている。まさに「大石ワールド」なのだ。
I"TOSCA" 
おっと!GIOVANNI MIRABASSIのソロを彷彿とさせる!
J"OCEAN" 


大石のピアノは素性が良いというか、品格があるというか・・・そういう意味ではジャズ特有の泥臭さみたいなものは足りないかもしれないが、これはこれでひとつのジャズであると思う。優しさとか慈しみに溢れたアルバムである。とてもいいアルバムだと思う。もしこのアルバムを1枚の絵に表したとするとジャケット・デザインのような絵になるだろう。
僕は大石学というピアニストを前作の"WISH"で初めて知った。まだまだ、世の中には広く知られていない、謂わば「知る人ぞ知る」的なピアニストが沢山いるのではないかと思った。
一方で、このアルバムを聴きながら、このアルバムはGIOVANNI MIRABASSIのソロ・アルバム"AVANTI !"(JAZZ批評 60.)が微妙に影響しているのかなとも思った。

澤野工房がリリース100枚目の記念すべきアルバムに大石学を持ってきた眼力は凄いと思った。今後も第2、第3の大石学を発掘し、世に紹介してと願わずにいられない。日本には、未だ沢山の素晴らしいミュージシャンがいるということをさらに証明して欲しいと願いながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.04.24)

試聴サイト :  http://www.jazz-sawano.com/products_258-0-1.html



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