独断的JAZZ批評 689.

MADS VINDING
超絶バトルを繰り広げたというよりは協調路線を行った感じ
"OPEN MINDS"
JEAN -MICHEL PILC(p), MADS VINDING(b), BILLY HART(ds)
2010年11月 スタジオ録音 (STORYVILLE : 1014267)


今までに、MADS VINDINGはENRICO PIERANUNZIやJACOB KARLZONなど、色々なピアニストと組んでピアノ・トリオ・アルバムを世に送り出している。その際たるものがCARSTEN DAHLとALEX RIELと組んだ傑作アルバム"SIX HANDS THREE MINDS ONE HEART"(JAZZ批評 322.)であろう。丁々発止の白熱したライヴ・ハウスの高揚感と楽しさを余すとこなく伝えた極上のライヴ盤であった。
今回のピアニストは一癖もふた癖もあるJEAN-MICHEL PILCときたもんだ!これは興味津々。一体、どんな演奏が聴けるのだろうか?・・・と心待ちにしていたアルバムだ。
PILCといえば、ALI HOENIGと組んだ"NEW DREAMS"(JAZZ批評 460.)がとても刺激的で絶妙だった。どちらかというと正統派のVINDINGやHARTが異端児ともいえるPILCとどうバトルしたのか・・・ここが聴きどころだ。

@"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" テーマの初っ端からインタープレイの趣。
A"MY FUNNY VALENTINE" 
終始静かな演奏で、らしくないと言えばらしくない。
B"SUMMERTIME" 
このアルバムの中での一押し。VINDINGの定型パターンのイントロから期待感を抱かせる。HARTのドラムスが絡み、PILCが待ってましたとばかりに登場する。こういう演奏にこそ一筋縄でいかないPILCの味が生きてくる。続くVINDINGのソロもグルーヴィ!8分12秒が短いと感じるトラック。
C"HARDLY LIKE AN EVENING SUNSET" 
PILCのオリジナル。なるほどPILCらしいテーマだ。フリー・テンポのインタープレイという色彩が強い。
D"OPEN MINDS" 
VINDINGのオリジナルで自身がテーマを執る。途中、曲調が一変して急速調になったかと思うと、また叙情的なテーマに戻る。
E"HOW DEEP IS THE OCEAN" 
これまた有名なスタンダード・ナンバーの登場。PILCが暴れてる中、VINDINGが堅実な4ビートを刻んで進む。HARTのセンシティブなスティック・ワークを経てテーマに戻る。
F"SAM" 
VINDINGがテーマを執るが、何か不自然な印象を与えるPILCが書いたバラード。
G"IRAH" 
至極真っ当すぎてPILCらしくない。
H"STRAIGHT NO CHASER" 
T. MONKの書いたブルース。ははーん!やはりPILCが弾くとこうなるのだ.。一気呵成に突き進む高速4ビートに乗って脱線しそうで脱線しないPILC。
I"GOLDEN KEY" 
J"I SKOVENS DYBE STILLE RO"
 最後は"DANISH TRAD"の愛らしい曲で終わる。

個性的なPILCが正統派のVINDINGとHARTにどう絡んでいくのかがポイントかなと思っていたが、意外と真っ当な線を行っている。若干、PILCがリーダーのVINDINGに遠慮したという感じか。超絶バトルを繰り広げたというよりは協調路線を行った感じ。そういう意味において、PILC自身がリーダーとなって、ALI HOENIGと組んだ"NEW DREAMS"(JAZZ批評 460.)の方がより刺激的で面白かった。特に"STRAIGHT NO CHASER"を聴き比べてみるとドラミングの差が表れており、結果として"NEW DREAMS"の方がPILCの持ち味がより活かされていると思うのだ。   (2011.04.22)

試聴サイト :  http://www.vinding.dk/TRIO_PILC_HART/open%20minds%20dansk%20index.htm



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