独断的JAZZ批評 691.

ED THIGPEN
酔うほどにいい気分になれること間違いなし
"LIVE AT TIVOLI COPENHAGEN"
CARSTEN DAHL(p), JESPER BODILSEN(b), ED THIGPEN(ds)
2002年7月 ライヴ録音 (STUNT RECORDS : STUCD 10092)

ED THIGPENは1930年12月生まれで亡くなったのが2010年1月なので、享年79歳だったことになる。このアルバムの録音がちょっと古い2002年というから71歳の時の録音ということになる。ジャズの世界では驚くほどの年齢でもない。
若いと思っていたCARSTEN DAHLが1967年生まれで、録音時には35歳。今では44歳になるというから驚きだ。同じくJESPER BODILSENは1970年生まれ、今年41歳になる。今でも若手といえるかは疑問だが、録音時には若手の部類といって差し支えないだろう。その息子ほど違う年齢の二人を迎えたTHIGPENのライヴ・アルバム。
THIGPENといえばOSCAR PETERSONを抜きには語れないのであるが、僕はそのPETERSONをほとんど聴くことがなかったので、残念ながら語ることが出来ない。

@"FUNK DUMPLIN" オープニングから心地よい4ビートを刻む。BODILSENのご機嫌なベース・ワーク、淀みのないDAHLのピアノ、負けじと太鼓を鳴らすTHIGPEN。役者がそろった。
A"YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO" 
お馴染みスタンダード。ベース・ソロに続いてDAHLが自由奔放で楽しげなソロを展開し、その後にはTHIGPENの長めのドラム・ソロが用意されている。サクサクと気持ちの良い音をたてながら、THIGPEN、大いに遊ぶ。
B"DOWN WITH IT" 
このアルバムを遡ること1年と3ヶ月。ベースに同じBODILSEN、ドラムスにはALEX RIELを率いて録音された"MINOR MEETING"(JAZZ批評 261.)の初っ端に入っている曲。大御所、BUD POWELLの書いた佳曲。とてもいい曲だ。こういう曲は黒人でないと書けないかなあと思ってしまう。高らかに歌うBODILSENのベース・ワークが素晴らしい。サクサクと軽快にスイングするTHIGPENのブラッシュ・ワークとスティック・ワークも聴きどころ。ライヴならではの高潮感を堪能できる。
C"MEANING" 
DAHLの手によるバラード。この人もなかなかのメロディ・メーカー。いかにも白人らしいメロディ・センス
D"SHUFFLI' LONG" 
今度はTHIGPENの曲。ここではライヴならではの「遊びとユーモアの楽しい演奏」が披露されている。手拍子、笑い声が溢れている。
E"WELL YOU NEEDN'T" 
T. MONKの曲をMONKのように(?)おどけて弾くDAHL。テーマが終わるとベースが力強い4ビートを刻み、一気呵成に高揚感を増していく。BODILSENのベースがいい音している。
F"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC"
 

CARSTEN DAHLにはARILD ANDERSEN(b)とPATRIC HERAL(ds)と組んだ「(僕が勝手に命名した)湖面に広がる波紋」シリーズ(JAZZ批評 333.246.)があるが、この二つのアルバムの丁度、中間の時期に録音されたのがこのアルバムだ。DAHLは器用なピアニストなのだろう。硬軟両用使い分けることが出来る。
僕の好みを挙げるなら「波紋シリーズ」だ。バップスタイルの演奏はDAHLでなくても出来るだろうけど、「波紋シリーズ」はDAHLにしか出来ないと思うからだ。最近はバップ・スタイルのアルバムが多いのが残念。
とは言え、この"LIVE AT TIVOLI COPENHAGEN"ではED THIGPENという大御所ドラマーを引き立てつつ、ライヴならではの遊び心とユーモアを交えて本当に楽しいアルバムに仕上がっている。このアルバムは、出来ることながら、一杯飲みながら聴きたいものだ。酔うほどにいい気分になれること間違いなし。   (2011.05.08)

試聴サイト :  http://www.challenge.nl/product/1293110644



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