GIOVANNI MIRABASSI
そして、今、PARKERの色が溶け出して違和感なく交じり合ってきた
"LIVE @ THE BLUE NOTE TOKYO"
GIOVANNI MIRABASSI(p), GIANLUCA RENZI(b), LEON PARKER(ds)
2010年4月 ライヴ録音 (DISCOGRAPH : 3230862)


MIRABASSIがLEON PARKERと組んだアルバムは、このアルバムが僕の中では3枚目に当たる。最初が"TERRA FURIOSA"(JAZZ批評 464.)で星4つだった。次が武蔵野スイングホールでのライブ(JAZZ批評 475.)で2008年4月の来日公演だった。その次が"OUT OF TRACK"(JAZZ批評 521.)で星4つ半だった。この間、LEON PARKERは彼本来のドラミングを徐々に発揮し始めてきたが、グループとしての完成度に満足は出来なかった。
PARKERとRENZIが参加してから早いもので3年の月日が経過した。これだけ長い間、メンバーを固定したのはMIRABASSIにとっても初めてのことではなかろうか?
このアルバムは今年4月の東京 BLUE NOTEでのライヴ録音である。聴き所は3者の緊密感であり一体感だろう。

@"NY #1" 
いきなりPARKERの軽妙なシンバリングで始まる。シンバリングが上手いというのはドラマーの絶対条件だと僕は思っている。JACK DEJOHNETTといいBILL STEWARTといいBRIAN BRADEといい、上手いといわれるドラマーは皆、シンバリングが絶妙だ。こういうPARKERを聴ければ、もう本物だろう。
A"IT'S US" 
RENZIのベースが4ビートを刻んでいくが、その音色が過度な増幅音。この音色はいただけない。ベースのピックアップの設定が悪いのか、アンプの設定が悪いのか分からぬがエレキベースのような音色には興が醒めてしまう。RENZIはかつてのライヴでヤマハのフレットレス・ベースを弾いていたという前科もあるからなあ!MIRABASSIのピアノはヨーロピアン・テイストに加えた耽美的なプレイが大分影を潜めてきた。このあたり、PARKERの影響があるかもしれない。
B"WORLD CHANGES" 
MIRABASSIはシングルトーンでドラムスとベースに絡んでいく。今までにないスタイルだ。なかなか面白い演奏だ。ここではRENZIも良いソロを執っているのだが、これだけの速弾きをするとなると増幅機のお世話にならないわけには行かないだろう。返す返すもチープな音色が勿体無い。
C"HERE'S THE CAPTAIN" 
饒舌、速弾きのRENZIのベース・ソロに続くPARKERのドラム・ソロが素晴らしい。気持ちの良い叩きっぷりに拍手。いやあ、流石である!
D"MY BROKEN HEART" 
リリカルなピアノ・ソロで始まるワルツ。こういう曲になるとMIRABASSIワールドが全開だ。
E"IT IS WHAT IT IS" 
じっとPARKERのスティック捌きに耳を傾けていたい。やはりPARKERは素晴らしいドラマーだ。
F"SIX FOR SEX" 
スリリングな展開でグループとしての成熟度の高さが分かる。3者の緊密感、一体感は素晴らしいものがある。
G"GOLD AND DIAMONDS" 
アンコールを催促する手拍子にのって登場。
H"WORLD CHANGES (SHORT VERSION)"
 何故に、Bと同じ曲をSHORT VERSIONとして収録しなければいけなかったのだろうか?演奏自体もあまり代わり映えしないものだ。

初めてLEON PARKERがこのグループに参加したと聞いた時は違和感を感じたものだ。それが3年前。そして、今、PARKERの色が溶け出して違和感なく交じり合ってきた。MIRABASSI自身もMIRABASSIワールドからもう片方の足も抜き出したかのようだ。今回のこのアルバムのネックはベースの音色だ。もっとアコースティックの匂いのする音色だったら良かった。無機質な電気の増幅音がいただけない。これはRENZIのせいとばかりはいえないだろう。
全体を通して感じるのは「仕掛け」が結構多いことだ。もっとシンプルであっても良いと思うのだが・・・この辺は好みの問題か。・・・と言いつつも、グループの緊密感と一体感はとても良い線いっていると思う。   (2010.12.12)

試聴サイト : http://www.bluenote.co.jp/jp/movie/giovanni_mirabassi/



.

独断的JAZZ批評 666.