GIOVANNI MIRABASSI
依然と"MIRABASSI WORLD"に片足を突っ込んだままなのだ
"OUT OF TRACK"
GIOVANNI MIRABASSI(p), GIANLUCA RENZI(b), LEON PARKER(ds)
2008年5, 7月 スタジオ録音 (VIDEOARTS : VACM-1365)

GIOVANNI MIRABASSI。衝撃的でさえあった初期のソロ・アルバム"AVANTI !"(JAZZ批評 60.)から8年の歳月が流れた。この間、MIRABASSIは試行錯誤を重ねながら現在に至った。録音の度にメンバーを替え続けてきたのも新たなる音世界を築いていきたいと考えた結果であろう。
昨年、2007年録音の"TERRA FURIOSA"(JAZZ批評 464.)ではドラムスにLEON PARKERを起用して「あっ!」と言わせた。しかしながら、そのアルバムでは熟成度という点で満足を得ることが出来なかった。当時のレビューに僕はこう書いた。
「熟成度という点でこのグループはまだ満足できる高みに達していない。特に、期待したPARKERのプレイが終始、遠慮がちで本性を現していないと思う。僕はPARKERの、もうそれだけでワクワクゾクゾクするシンバリングを聴いてみたいと思っていたのだが、残念ながらのこのアルバムにそれはない。あくまでも控えめなPARKERのプレイなのだ。・・・(中略)・・・できれば、このグループはこの面子でもうしばらく活動を継続して更なる熟成を期待したい。PARKERがかつてのPARKERに戻るまで。そして、そのことが"MIRABASSI WORLD"からの脱却という結果をもたらすに違いない。」・・・と。
このアルバムへの期待感も全く同じである。MIRABASSIとPARAKERがどう密接に絡み合うことが出来るかだ・・・。水と油が混ざり合って、新しい混合物が出来たのかどうか?"TERRA FURIOSA"の後に日本公演のライヴ(JAZZ批評 475.)を聴く機会があったが、ここでのPARKERのドラミングは期待に応えた素晴らしいものであった。完全にMIRABASSIを食ってしまっていた。それが今年の4月1日のことだ。このアルバムはそこから1ヵ月半後と4ヵ月後の録音だ。果たして、その熟成度はいかに?

@"DEAR OLD STOCKHOLM" 
グルーヴィなイントロから4ビートへ。出だしから今までのMIRABASSIとはちょっと違う。後に続くRENZIのベース・ソロも良く歌っている。
A"PIERANUNZI" 
B"VUELVO AL SUR" 
C"ALONE TOGETHER" 
しっとりしたイントロから2ビートのテーマへ。サクサクとしたブラッシュが気持ちよい。続くスティックによるシンバリングもいい音している。MIRABASSIのプレイも何時になくグルーヴィだ。饒舌、速弾きのベース・ソロを経てテーマに戻る。
D"LE CHANT DES PARTISANS" 
ソロ・アルバム"AVANTI !"の2曲目に入っていた美しい曲。1曲目とこの曲こそMIRABASSIがMIRABASSIたる所以の曲というべきもので、激情と哀愁が交差する。今、聴いても色褪せることがない。ここではトリオ演奏。
E"JUST ONE OF THOSE THINGS" 
ベースの太いソロでスタートし、アドリブでは高速のシンバリングが聴ける。そうそう、聴きたかったのはこういうPARKER!
F"ZOOM" 
ズンズンと進む4ビート。
G"IMPRESSIONS" 
J. COLTRANEの書いた曲。いきなりPARKERのソロから始まる。遠慮の塊だった前アルバムと比較すると思い切りよく叩いている。MIRABASSIはサスティンペダルを多用するピアニストだが、こういうグルーヴィな曲についてはもう少しセーヴして欲しいものだ。
H"SOUVENIRS SOUVENIRS" 
I"HERE'S THE INTRO" 深く沈んだピアノ・ソロ。
J"HERE'S TO YOU" 
K"CONVITE PARA A VIDA" 
この曲の演奏なんかは昔の"MIRABASSI WORLD"そのものだ。

MIRABASSIにとってはまさに、"OUT OF TRACK"したアルバムなのかもしれない。そのためなのか、レコード会社も澤野工房からビデオアーツに変更になった。前作、"TERRA FURIOSA"に比べれば、PAEKERも元気だしグループの一体感も増している。しかし、依然と"MIRABASSI WORLD"に片足を突っ込んだままなのだ。それが悪いというのではない。それがMIRABASSIのアイデンティティなのかもしれないが、この孤高のスタイルはいずれ聞き飽きてしまうということなのだ。   (2008.12.23)

試聴サイト : 
http://www.myspace.com/mirabassi 



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独断的JAZZ批評 521.