DON FRIEDMAN
80歳になっても90歳になっても弾きつづけてほしい
"I'D LIKE TO TELL YOU"
DON FRIEDMAN(p), ATTILIO ZANCHI(b), TOMMY BRADASCIO(ds)
2008年11月 スタジオ録音 (MUSIC CENTER : BA 229 CD)


DON FRIEDMANは1935年5月生まれというから今年74歳になった。ここ数年の活躍ぶりは「老いてますます盛ん」という感じだ。
このアルバムのお目当ては二つあって、一つが74歳になっても意気軒昂なFRIEDMANがイタリアのプレイヤーとどうプレイするか?丁度、30年前の1978年にFRIEDMANは"LATER CIRCLE"(ジャズ批評 550.)という素晴らしいアルバムを残している。念願かなって、やっと今年の2月にこのリイシュー盤が発売になった。このアルバムはFRIEDMANの最高傑作だと思っているが、30年後のこのアルバム"ID LIKE TO TELL YOU"と比較してみたいと思った。
もう一つがKENNY BARRONが書いた名曲"SONG FOR ABDULLAH"をどんな風に演じているかだ。この曲はKENNY BARRON自身がGEORGE ROBERT(as,ss)とのデュオ・アルバム"PEACE"(JAZZ批評 147.)の中でソロで演奏している。この名曲をどんな風に料理したのか聴いてみたいと思った。因みに、この"PEACE"もKENNY BARRONの最高傑作のひとつだと思っている。

@"DELAYED GRATIFICATION" 
FRIEDMANらしからぬ泥臭いテーマで始まるがピアノのフリーなソロを経てイン・テンポに戻る。途中、フリーなベース・ソロとドラムスのソロを挟んでテーマに戻る。
A"I'D LIKE TO TELL YOU" 
ミディアム・テンポの明るい演奏。いかにも、FRIEDMANらしい。
B"SONG FOR ABDULLAH" 
改めて"PEACE"におけるKENNY BARRONのソロ・ピアノを聴いてみると,、今聴いてみても鳥肌モノだ。この曲はBARRONがABDULLAR IBRAHIM(改名前はDOLLAR BRAND)に捧げた曲で、作曲者の想いみたいなものがギューと圧縮して詰まっている感じ。対して、FRIEDMANの演奏は美しいけどさらっとした感じだ。

C"IT COULD HAPPEN TO YOU" 
30年前に比べるとグイグイ引っ張るようなドライブ感が薄れてきたかなあ。単にFRIEDMANだけの問題ではなくてサポート陣の影響もあるだろう。熟成度という点で、GEORGE MRAZ & RONNEI BEDFORDに及ばない。
D"SUMMER'S END" 
FRIEDMANのオリジナル・バラード。こういう演奏になるとFRIEDMANの独壇場とも言えるピアノ・プレイだ。
E"YOU GO TO MY HEAD" 
F"DONSONG" 
ベーシスト、ATTILIO ZANCHIの書いた曲で、"DONSONG"とはDON FRIEDMANのSONGということだろうか?
G"ALL OR NOTHING AT ALL" 


74歳にしてこの演奏。世間の74歳と比べたら、これは凄いことだ。矍鑠として右手も左手も良く動く。そうは言っても、"LATER CIRCLE"との比較で言えば、GEORGE MRAZの参加した30年前の演奏の方が濃密で芳醇、しかも、ドライヴ感満載だ。まあ、あの頃のMRAZは本当に凄かった。ジャズ・ベーシストといえばMRAZといえるほど、引っ張りだこだった。実際、この人が参加すると星半分位は採点がアップした。TOMMY FALANAGAN の"ECLYPSO"(JAZZ批評 90.)なんかもそういう1枚だ。

やはり寄る年波には勝てないのか?30年前の演奏を例えれば、大きな木の幹が大地に根を張って瑞々しい枝葉をつけているのに対して、最近の演奏は幹の部分に空洞が出来たりして力強さが少し失われた感じ。エモーショナルな躍動感が減って少し小手先になったかなあという印象を持った。
とはいえ、この年齢で、この演奏、これは凄いことだ。老いてますます盛ん。80歳になっても90歳になっても弾きつづけてほしい。   (2009.07.15)




独断的JAZZ批評 569.