MAGNUS HJORTH
一番肝心な歌心も豊かで、これからが非常に楽しみなプレイヤーの一人として注目していきたい
"LOCO MOTIF"
MAGNUS HJORTH(p), PETTER ELDH(b), SNORRE KIRK(ds)
2006年12月 スタジオ録音 (CALIBRATED : CALI060)


このアルバムも松山のジャズ友が2008年のベスト・アルバムのひとつとして紹介してくれたアルバム。このジャケット、最初はバスかと思ったが、機関車というのが正しいようだ。印象に残るジャケットだ。
このグループはデンマークのコペンハーゲンを拠点に活動する若手のグループで、このアルバムが初めてのアルバムらしい。ジャケットに写った3人の写真を見る限り、ロックバンドのような印象を受ける。二人の頭はスキンヘッドだ。しかし、その風貌と反対にやっている音楽はソリッドな感じのするカチッとしたジャズだ。これが初めてのアルバムというのも俄かには信じ難い。僕の印象ではスペインのMARTI VENTURA TRIOの"PAS DEL TEMPS"(JAZZ批評 287.)あたりと雰囲気が似ていて、硬派の匂いのする演奏だ。

@"LOCO MOTIF" 
アドリブでは4ビートを刻んでいくがHJORTHの左手のバッキングが表情豊か。コロコロと転がる右手とのマッチングがいいね。
A"THE LOCKSMITH" 
今度は間を持った演奏でシングルトーンが心地よい。リズム陣も硬派の匂いのする重厚な演奏スタイルだ。特に、ベースのELDHのベースは野太い音色でガッツが溢れている。
B"MOSCOW NIGHTS" 
何拍子か分からない変拍子。こういう曲は数えないことだね。しかし、こういう変拍子にあってもスイングしてるから凄いなあ。
C"BETWEEN TWO MOODS" 
いいバラードだなあ。一転して、しっとり系のバラード。ピアノに続くベースの・ソロも静かに躍動している。太くて重い音色だ。
D"THE PATTERN MAKER" 
E"GO EAST" 
ミディアム・テンポの4ビートに心地よさが満載。明るいクリアなタッチのピアノ、太くて重厚なベースのウォーキング、反対にアンニュイな印象のドラミング。どれをとってもスイングするためにある。
F"CANTANKEROUS" 
美しいピアノ・ソロでスタート。この若さでこういうピアノを弾けるというのも凄いね。ベースとドラムスが加わり、甘さだけに流されないカッチとしたソリッドな演奏になる。
G"7 REASONS 4 SEPARATION" 
PETTER ELDHというベーシストにも注目したいと思うのだけど、ピチカートの強さと太い音色で、LARRY GRENADIERを彷彿とさせる。このベーシストでなければ、このアルバムは薄っぺらになっていただろう!
H"T. N. T" 
このアルバムで燦然と輝くのがこのチューン。こいつぁ、いいね。このトラックはスタジオに生じた自発的なジャム・セッションで誰もテープが回っていることを知らなかったらしい。
若かりし頃のCHICK COREAの"NOW HE SINGS, NOW HE SOBS"を彷彿とさせる演奏に驚いた。コロコロと珠のように転がる右手のパッセージがいいね。右手もさることながら左手のバッキングも素晴らしい。これほどのピアノを弾けるというのはHJORTHの実力のほどが伺えるというものだ。この1曲のお陰で、このアルバムの価値が星半分は高まっている。考えてみれば、COREAがあのアルバムを発表したときは1曲のみならず、全ての曲でぶっ飛ばしてくれたからなあ。COREAってのは本当に凄かったと今更ながらに思ったりして!

かつて、同じデンマークの先輩、KASPER VILLAUMEの"117 DITMAS AVENUE"(JAZZ批評 243.)を「北欧発の硬派のジャズ」として紹介しているが、このアルバムもその硬派仲間に加えたい。
このHJORTHというピアニストの実力は相当のものと思う。きっと何をやらしてもそこそこには仕上げてしまうだろう。一番肝心な歌心も豊かで、これからが非常に楽しみなプレイヤーの一人として注目していきたい。
このアルバムも聴きこむほどに評価が上がってきた。最後は星5つに落ち着いた。スルメみたいに噛むほどに味が出てくるアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。日本酒でも飲みながら聴いたら、こりゃあ、堪らんわい。   (2009.02.18)

試聴サイト : http://www.myspace.com/magnushjorth



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独断的JAZZ批評 537.