LARRY GOLDINGS
やはり、僕にはピアノだ
"MOONBIRD"
LARRY GOLDINGS(org), PETER BERNSTEIN(g), BILL STEWART(ds)
1999年2月 スタジオ録音 (PALMETTO RECORDS : PM 2045)


LARRY GOLDINGSのアルバムは今までに2枚紹介している。1枚がBILL STEWARTがリーダーとなった"INCANDESCENCE"(JAZZ批評 483.)で、もう1枚が、HOLLYWOOD TRIOと銘打った"UP FOR AIR"(JAZZ批評 530.)だ。前者のトリオはオルガン、ピアノ、ドラムスの変則トリオでリーダーのBILL STEWARTの狙いがもうひとつはっきりせず、ダメ出しした。後者のアルバムでは、LARRY GOLDINGSは全ての演奏をピアノで通しているので、改めてGOLDINGSのオルガン・プレイを聴いてみようと思った。で、選んだのがこのアルバム。
メンバーのBILL STEWARTが参加したアルバムは数多く紹介しているので、今更であるが、サイドメンとして参加したアルバムでこそ、その実力が伺える。ピアニスト、BILL CHARLAPのレギュラー・トリオであるNEW YORK TRIOやAKIKO GARCE(INDEX)との作品はその最たるものだろう。
PETER BERNSTEINのアルバムは1枚だけ"STRANGE IN PARADICE"(JAZZ批評 178.)を紹介しているが、BRAD MEHLDAU(p) のほかにLARRY GRENADIER(b)とBILL STEWART(ds)というメンバーが参加している。そのメンバーの豪華さに比べると、オーソドックスで地味な印象が強い。これこそがPETER BERNSTEINの持ち味というべきものなのかも知れないが。

@"CRAWDADDY" 
何とも軽いノリの曲でスタートする。オルガンの音色そのものも軽いので当然といえば当然かもしれない。考えてみれば、オルガンという楽器は両手のほかにベース・ラインを演じる足技まで必要で、苦労の割りに努力が浮かばれない楽器かもしれない。尤も、やっているプレイヤーはそんなこと微塵も考えないだろうけど・・・。下衆の勘繰りかもしれない。最後はフェード・アウトで消えていく。
A"MOONBIRD" 
この4ビートはいいね。足で弾くベース・ラインは前ノリで心地よい。電子音の音色だけはいかんともし難いが・・・。BERNSTEINのギターにSTEWARTくらいの遊び心があれば良いと思うのだけど、ちょっと、硬いね。
B"WOODSTOCK" パーカッションのリズムで幕を開けるが、最初は鍋釜でも叩いているのかと思った。
C"CHRISTINE" 明るくて少しひょうきんなテーマ。こういうテーマにはオルガンは合っているんじゃない?
D"EMPTY OCEANS" 
E"XOLOFT" 
高速な4ビートを左足で刻むベース・ラインはオルガン・プレイヤーには大きな負担が掛かるだろう。GOLDINGSのプレイには同情の念すら生まれてくるが、この楽器を選んだ宿命ともいえるものだろう。後半部にはいつもながらのSTEWARTの切れの良いドラミングを経て、またしても、フェード・アウトしてしまう。
F"COMFORT ZONE" 
STEWARTのドラミングを聴いているだけでも楽しさが生まれる1曲。
G"I THINK IT'S GOING TO RAIN TODAY"
 

H"隠しトラック" Gが終わってから30秒後にジャケットにも記載されていないトラックが始まる。こういう隠しトラックにどれほどの意味があるのか分からないが、2分と50秒の抽象的な演奏が挿入されている。ここではピアノを弾いている。というか、後から、ピアノを多重録音したものだろうか?


演奏の良し悪しよりも音色の良し悪しに耳(目)が向いてしまうのは残念なことだが、このオルガンの音色というのは僕には相性がよくないようだ。ピアノに比べて抑揚だとかデリカシイ、あるいは、表現力という点で満足がいかないし、アコースティックなベーシストもいないのだから余計寂しい感じがする。やはり、僕にはピアノだ。   (2009.03.20)

試聴サイト : http://www.emusic.com/album/Larry-Goldings-Trio-Moonbird-MP3-Download/10827600.html




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独断的JAZZ批評 545.