DIRK BALTHAUS
少々、優等生過ぎる
"CONSOLATION"
DIRK BALTHAUS(p), SVEN SCHUSTER(b), SEBASTIAAN KAPTEIN(ds)
2008年2月 スタジオ録音 (HI5 RECORDS : HS-003)


DIRK BALTHAUSのアルバムというと2002年録音の"ON CHIDREN'S GROUND"(JAZZ批評 429.)を既に紹介しているが、繰り返し聴くほどに嵌り込んで行くような良さを持っていた。特にベテラン・サポート陣の健闘が光っていた。
一方、このアルバム、"CONSOLATION"はジャケットの写真を見る限り同年代のメンバーが集まったようで先のアルバムとは若干、印象を異にするが、真面目なアルバム作りで好感が持てるのは一緒だ。いわゆる、大向こうを唸らせるような仰々しさは全くなくて、生真面目で誠実な人柄だろうと推測させるに十分な丁寧なアルバム作りだ。全9曲のうち
ADH以外は全てBALTHAUSの書いた曲だ。DHはベースのSVEN SCHUSTERが提供している。

@"CONSOLATION" 
タイトル通りのほのぼのと心安らぐテーマとアドリブ。癒される演奏だ。
A
"PA'L LUNA" 美しいピアノのタッチは今回も変わらない。透明感が強くて爽やかだけど、スイング感もあるしタッチも強い。
B"GOODBYE FOR NOW" 
どうしても高音部のクリアなタッチが強い印象として耳に残ってしまう。このピアニストの特徴と言えるだろう。
C"PANDORA" 
D"ONE FOR CHARLIE" SCHUSTERの高音部のアルコで始まる。このベーシストのアルコは相当の技量だと思う。何と言っても、演奏に余裕があるもの。
E"SONG FOR SUSAN" 
いかにも誰かのために捧げたワルツという感じ。優しいメロディにワルツがピッタリと嵌っている。今度はSCHUSTERの柔らかくてふくよかなピチカートが聴ける。
F"BUTTERFLY" 
このベーシスト、SVEN SCHUSTERは基礎がしっかりしているから何をやらしても上手いね。絶対失敗しない安心感があるけど、それが逆に欠点にもなりうるのがジャズの世界だ。冷静沈着さにもっとエモーショナルな雰囲気が出てくるとさらに良くなるだろう。
G"B-TANGO" 
SCHUSTERのアルコは本当に素晴らしい。正確無比な音程とリズミックにも弾ける技量、これは凄いことだ。相当クラッシクの薫陶を得ているのではないだろうか?
H"WHITE MUSK" 

ベーシスト、SVEN SCHUSTERのコメントが多くなった。
一方、このアルバムのリーダーであるDIRK BALTHAUSというピアニストは生真面目で誠実な人柄であることは間違いない。その全てが音楽を通して表わされている。実に清々しいジャズと言えるだろう。だから、泥臭さやグルーヴィな演奏を期待すると裏切られるだろう。
このアルバム、色彩の豊かさにおいて"ON CHIDREN'S GROUND"に及ばない。前作に比べて、似たような楽曲が集まった。全9曲のうち、8曲がメンバーの提供した曲だから尤もな話かもしれない。
こういうジャズを聴いているとピアニストのみならず、メンバーの素性までも見えてくる。生真面目で誠実で柔和。多分、そういう人たちの集まりで間違いないだろう。
でも、ジャズに求めるものとして、これでは僕には物足りない。いわば、もっとエモーショナルに躍動して欲しい・・・と思うのだ。もっと灰汁が強くっても良いと思うし、もっとわがままであっても良いと思うのだ。言葉は悪いが、少々、優等生過ぎる。   (2009.03.17)


試聴サイト : http://cdbaby.com/cd/dirkbalthaustrio2
         
          http://www.youtube.com/user/dirkbalthaus



独断的JAZZ批評 544.