ALEX RIEL
強面で鳴らしたALEX RIELも歳を重ねて好々爺の域に達してきたのかなあ
"GET RIEL"
KENNY WERNER(p), PIERRE BOUSSAGUET(b), ALEX RIEL(ds)
2007年11月 スタジオ録音 (COWBELL MUSIC : #43)

ALEX RIELがベテラン、KENNY WERNERと組んだトリオ。
若きピアニスト、HEINE HANSENと組んだトリオでは"WHAT HAPPENED ?"(2003〜4年録音、JAZZ批評 273.)と"THE HIGH AND THE MIGHTY"(2005年録音、JAZZ批評 450.)の2枚を今までに紹介している。
今回の肝はKENNY WERNERの参加でしょう。最近のKENNY WERNERの活躍は素晴らしいものがある。端的な例がアルトサックス奏者のJENS SONDERGAARDとのデュオ・アルバム"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)で、僕は2008年のベスト・アルバムのひとつとして挙げた。その半年前の2007年9月に録音した"WITH A SONG IN MY HEART"(JAZZ批評 510.)はWERNER自身がリーダーとなり、変拍子などを取り入れた一癖も二癖もあるアルバムだった。
今回のアルバムの楽しみは、リーダーのRIELに対しWERNERがどんなピアノを弾いているかだ。

@"ALLANJUNEALLY" 
WERNERの書いたワルツ。自身がリーダーとなった"WITH A SONG IN MY HEART"では一癖ある演奏を展開していたが、ここではとても素直。やはり、リーダーのRIELに遠慮をしたのかもしれない。
A"ALWAYS" 
IRVING BERLINはアメリカン・ポピュラー・ミュージックの創始者とも言われており、1900年代を代表する作詞、作曲家だったそうだ。"GOD BLESS AMERICA"や"WHITE CHRISTMAS"を作曲している。
B"BOUSS' LOAP" 
ベーシスト、BOUSSAGUETの書いたグルーヴィな8ビートの曲。
C"MOSQUITO" 
最初におりんのような「チーン」という音がして始まる。ドラムスのソロというよりもパーカッションのソロ。やはり、RIELも人の子。リーダーとしてはひとつくらいこういうチューンを入れたくなるのだろう。
D"POLOVTSIAN DANCE" 
ロシアの作曲家、ALEXANDER BORODINの手になる佳曲。オペラ「イーゴリ公」の挿入歌らしい。聴けば、誰しもこの曲かと思い当たるはず。ベースの重低音が効いているが、少々甘ったるいかな。
E"AUTUMN IN 3" 
これもWERNERの書いたワルツ。アコースティックなベース・ソロがいいね。
F"NHOP" 
ベーシスト、BOUSSAGUETの書いた美しい曲で、長めのベース・ソロが配置されている。このベーシストなかなか良く歌うベースを弾くし、技量も十分だ。音色も良いので覚えておこう。
G"IF I SHOULD LOSE YOU"
 最後にスタンダード・ナンバーを一発。RIELの真骨頂ともいうべき軽快なシンバリングが聞ける。節度のある「暴れ方」でありながら、十分に自己主張している。

ドラマーがリーダーでありながら、ドラムスがあまりでしゃばって出てこない。なかなか配慮がきいていて好感が持てる。従って、トリオとしてのバランスも良い。演奏曲数も8曲で、トータル時間も43分強と昔のLP並みだ。
全体の印象としてはすこぶるオーソドックスな仕上がりになった。RIELとWERNERの噛み合わせもまあまあだ。無難な線に落ち着いた。ベースのPIERRE BOUSSAGUETは1962年生まれというから今年47歳になる。二人の御大を前に楔を打ち込むいい仕事をしている。

かの強面で鳴らしたALEX RIELも歳を重ねて好々爺の域に達してきたのかなあという新たな印象も持った。1940年生まれのRIELは今年、69歳になるという。ジャズの世界ではまだまだ老け込む歳じゃあないけどね。   (2009.01.13)

試聴サイト : http://www.myspace.com/alexriel



独断的JAZZ批評 527.