ALEX RIEL
まさに"WHAT HAPPENED ?"
"WHAT HAPPENED ?"
HEINE HANSEN(p), JESPER LUNDGAARD(b), ALEX RIEL(ds)
2003年2月 & 2004年4月 スタジオ録音 (COWBELLMUSIC #14) 

前掲のJAZZ批評で、「JESPER LUNDGAARD〜ALEX RIEL」のリズム陣を従えるようになったら、これは素晴らしいピアノ・トリオが期待できると書いたばかりだが、そのチャンスが早くも巡ってきた。
ジャケットの写真は多分、ALEX RIELの幼少の頃の写真だろう。僅かに、幼少の面影が今も残っている。両手をジャケットに突っ込んで「ハイ、チーズ!」のポーズが可愛らしい。今や、ヨーロッパを代表し、しかも、強面のする面構えの今日とは大違いで、この人の人間性を表した良いジャケットだ。
そのALEX RIELがベースに盟友、JESPER LUNDGAARDを迎え、ピアニストには(ジャケットの写真を見る限り)若手のHEINE HANSENとトリオを組んだ最新アルバムだ。

このアルバムには面白い「落ち」があるので最後を楽しみに!

@"YESTERDAYS" アップ・テンポで演じる名曲。ドライブ感とスウィング感満載で脳細胞ほか体中の細胞が起き上がりスイングし始める。ピアノ・トリオはこうでなくちゃあ!チンチキ・チンチキとシンバルを刻み、ベースがビート感豊かに4ビートを刻む。
A"NATURE BOY" 最近ではSTEFANO BOLLANIの名演が"MI RITORNI IN MENTE"(JAZZ批評 210.)の1曲目にある。聴き比べるのも面白い。

B"100M SPURT" ピアニスト、HEINE HANSEのオリジナル。どんな曲にあっても躍動感が溢れんばかりにあるというのがいい。
C"WITHOUT" これもHANSEのオリジナル。しっとりとした曲想。
D"I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU" ミディアム・テンポの軽快な曲。「ジャズっていいなあ!」と思わせてくれる演奏。リズム陣の堅実で確かなビートに乗ってピアノが切れる。RIELのドラムスはいつも配慮が行き届き、実に快い。世によくあるドラムスがリーダーのドタバタ劇は決して演じていない。LUNDGAARのベース・ソロは、今やヨーロッパ・ジャズ・ベーシストの第1人者としての自覚と自信がみなぎっている。

E"AC-CENT-TCHU ATE THE POSITIVE" 軽妙なブラッシュ・ワークが最高!このピアニストもいいね。今後の活躍が楽しみだ。
F"GIANT STEPS" COLTRANEの曲も巧みなシンバル・ワークが印象的だ。
G"DREAMING STREAMING" ベースがハイ・トーンでテーマを弾く。自信に溢れたピチカートが素晴らしい。アコースティック・ベースはこうでなくちゃあね。
H"3RD DIMENSION" 
I"IDAHO" 最後を締める軽快4ビート。肩のコリがいっぺんに取れる。

と、ここまでで誰しも「おしまい」と思うだろう。事実、ジャケットにはここまでの記載しかない!
ところがである!Iが終わって60秒経つと次の曲が始まるのだ!丁度、60秒というのがミソだと思う。これは意図的に60秒の間をおいたのだと・・・。多分、気が付かないで終わってしまう人も多いのではないか。"WHAT HAPPENED ?"
この続きを言ってしまうと、推理小説の結末を明かしてしまうようなものなので、敢えて、言わない。この結末は皆さんの耳で確かめて欲しい。
J"??????" 何で?

僕は正直言って、これは海賊盤で、デッド・コピーを買ってしまったのかと思った。しかし、よくよく考えるとこれは
洒落ではないかと!それがタイトルの"WHAT HAPPENED ?"ということなのではと思った。
もしかして、これは僕の買い被りかもしれない。本当に海賊盤のまがい物かも知れない。でも、そんな夢と楽しみを与えてくれたこのCDに乾杯!
内容の素晴らしさに加え、もし、この遊び心が本物なら拍手喝采!ウ〜ン、やられた!
勿論、笑顔を添えて「manaの厳選"PIANO & α"」に加えよう。   (2005.05.29)

<2005.06.10追記>
まがい物かと心配していたこのアルバムも、どうやら本物らしい。11曲目が遊び心で入っているのだろう。その11曲目とは?
J"TEARS IN HEAVEN" 急逝した息子に捧げたERIC CLANPTONの曲としてあまりに有名な曲だ。何故か、この曲はギターがリードとリズムの2本にベースとドラム。だからピアノ・トリオとは関係ないと思われるが、真相は不明だ。でも、このアコースティック・ギターの演奏が素晴らしいのだ。JAZZ批評 .のPAT METHENYを連想させる牧歌的で美しい音色が心に沁みる。   (2005.06.10)



独断的JAZZ批評 273.