TERJE GEWELT
この音楽は優雅にして躍動感溢れるものだ
付け加えるなら「上質感」みたいなものもある
"OSLO"
ENRICO PIERANUNZI(p), TERJE GEWELT(b), ANDERS KJELLBERG(ds)
2008年8月 スタジオ録音 (RESONANT MUSIC : RM21-2)
年末も押し迫ってきた12月中旬過ぎにこのアルバムのリリースが発表された。GEWELTとPIERANUNZIという組み合わせに躊躇なくオーダーを入れた。こんな組み合わせのCDが発売になるとは夢のようだった。GEWELTにとってもPIERANUNZIとの共演は1992年以来16年ぶりの夢の実現だったらしい。このアルバムはタイトルにもなった"OSLO"で3日間にわたって録音されたという。
TERJE GEWELTの最高傑作というと2002年録音のCHRISTIAN JACOBとのデュオ・アルバム"HOPE"(JAZZ批評 275.)を挙げたい。一方、ENRICO PIERANUNZIのアルバムといえばライヴならではの熱気溢れる演奏を繰り広げた"LIVE
IN PARIS"(JAZZ批評 324.)を挙げたい。
この二つのアルバムの良いところがぶつかり合ってひとつのアルバムが出来上がるとしたなら、一体、どんなに素晴らしいアルバムが出来るのだろうかという期待感が風船のように膨らんだ。
@"BLUE WALTZ" PIERANUNZIが書いた耽美的なワルツ。ここではPIERANUNZIの真骨頂ともいえるうねるように躍動し、昂揚感が徐々に増幅してくる演奏が聴ける。3者の緊密なインタープレイが素晴らしい。
A"OSLO" 牧歌的なバラード。いつもながらにGEWELTのベースは優しさと暖かさに満ち溢れている。
B"PLAYTIME" こ3人が織り成す演奏は透明感があって、それでいて優しさと暖かさに溢れている。冷たいという印象は皆無だ。
C"NORTH PROSPECT" スロー・バラードが少しずつ躍動して昂揚感を増してくる。
D"WORLD OF WONDERS" ボサノバ調に軽く跳ねる。
E"SUSPENSION POINTS" フリー・テンポのインタープレイ。
F"SMALL COUNTRY" ベースとピアノのユニゾンでテーマを奏でる。KJELLBERGは珍しく最初からスティックを持っている。軽やかに鍵盤を行き来するPIERANUNZIのピアノが歌っている。左手のバッキングも表情豊かでいいね。
G"SNOWFLAKE" GEWELTのソロで始まる。いい音だなあ!哀しみを湛えたバラード。合間に挿入されるKJELLBERGのドラミングが効果的。
H"TRIO SUITE PART 1" フリー・インプロビゼーションと思われる抽象画的演奏の組曲。
I"TRIO SUITE PART 2" 瑞々しい水彩画のよう。
J"TRIO SUITE PART 3"
K"HOMECOMING" 16ビートで躍動しながら大きくうねって進む。
全12曲のうちPIERANUNZIが@、D、Eの3曲を、3者の合作がH、I、Jの組曲、残り全てがGEWELTの作曲だ。
イタリアのピアニスト、ノルウェイのベーシスト、スウェーデンのドラマーが奏でる音楽は優雅にして躍動感溢れるものだ。付け加えるなら「上質感」みたいなものもある。これは、まったくもって夢の組み合わせの実現と言いたくなる。そして、期待通りのアルバムだった。勿論、僕が採点の基準としている「美しさ、躍動感、緊密感」をも十分に満足させるアルバムであることも付け加えておこう。
PIERANUNZIのうねるような躍動感が次第に増幅されて大きな波となって打ち寄せてくる。透明感がありながらも冷たくならない。優しさと暖かさに包まれた稀有なアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2009.01.13)
試聴サイト : http://www.mic.musikkonline.no/shop/displayAlbum.asp?id=36024