BILL CARROTHERS
謂わば、絶対に媚びないという信念すら感じるアルバムなのだ
不思議なことにそう思いながら聴いていると、この多少偏屈で頑固な音楽が身近なものに感じてくるのだ
"HOME ROW"
BILL CARROTHERS(p), GARY PEACOCK(b), BILL STEWART(ds)
1992年1月 スタジオ録音 (PIROUET : PIT3035)

2008年の年末にかけてCDをいつもより多めに注文したために、手元に在庫が溜まり始めた。在庫が溜まってくるとレビューに拍車をかけないといけないという強迫観念が生まれてきて落ち着いてレビューが書けなくなってくる。手持ち在庫は最高でも5枚以内と決めているのだが、年明けに注文したCDがこれから入ってくるので、少しピッチを上げてレビューを消化して行かないと強迫観念に迫られることになる。
BILL CARROTHERSは初めて聴くピアニストだ。メンバーにGARY PEACOCKとBILL STEWARTという当代きっての役者が揃った。このサイド・メンを要したトリオ・アルバムでは2006年録音でSTEWARTの万華鏡のようなドラミングが堪能できるMARC COPLANDの"MODINHA"(JAZZ批評 396.)がある。また、1990年録音のFRANCK AMSALLEMの"OUT DAY"(JAZZ批評 247.)もあるが、これはピアノが少し役不足でサイドメンに煽られているという印象を持った。録音年月でいえば、このアルバム"HOME ROW"は後者に近い。

@"WHEN WILL THE BLUES LEAVE" 最初のこの曲を聴いて、一筋縄でいかないのがこのピアニストのスタイルだと悟った。曲もO. COLEMANが書いている。フリー・ジャズではないが多分に抽象画の色彩を強くしている。だから、メロディアスな演奏を期待していると「あれっ?」ってことになる。
A"JESUS' LAST BALLAD" この曲はTOOTS THIELEMANSの曲ということになっているが、どこかで聞いたことのあるメロディが散りばめられている。スロー・テンポであるが、バラードと呼べる甘さはない。力強いPEACOCKのベース・ソロは何時聴いても素晴らしい。
B"A SQUIRREL'S TALE" テーマからして「手ごわいぞー」という感じだ。CARROTHERSのオリジナル。低音部をゴリゴリと弾くピアノはさながらバトルという感じ。
C"HOPE SONG" 
D"MY HEART BELONGS TO DADDY" へえ!C. PORTERの曲もやってるんだ!こういう演奏を聴くとこのピアニストの確かな技量というのを感じる。が、C. PORTERらしいメロディーやハーモニーの美しさは感じ取れない。
E"OFF MINOR" 今度はT. MONKだ。文句あるか!なんてね。
F"LOST IN THE STARS" 
G"HOME ROW" アルバム・タイトル曲。下記のMySpaceの中で、CARROTHERSは「特に影響を受けた音楽はない」と言い切っている。こういう演奏を聴くにつけ、このピアニストは孤高のピアニストとしてその存在を揺るぎないものとしているのかもしれない。
H"BALLAD OF BILLY MILWAUKEE" B、C、Gに続くCARROTHERSのオリジナル4曲目。タイトル通りのバラード。流石に甘さのこれぱっかしもない。

このアルバムのジャケット・デザインはこのCDの内容を上手く表現出来ていると思う。詳しいことは分からないが、もしこの鶏が軍鶏(しゃも)だとすれば、その戦闘的なイメージや妥協を許さない頑固一徹さはこのアルバムに共通したものだ。謂わば、絶対に媚びないという信念すら感じるアルバムなのだ。不思議なことにそう思いながら聴いていると、この多少偏屈で頑固な音楽が身近なものに感じてくるのだ。ジンワリと味が沁みてくるような珍味をご賞味いただきたい。ただし、ストレートな味わいが好きという人にはお勧めできない。
かくいう僕も、これを連日聴くのは少々疲れる。忘れた頃に聴き直してみると、一層味わい深く感じるのではないだろうか?   (2009.01.10)

試聴サイト : http://www.myspace.com/bridgeboymusic  



独断的JAZZ批評 526.