TAKAAKI OTOMO
釣り上げたばかりのピチピチ跳ねる魚の如し
"NIGHTMARE"
大友 孝彰(p), 波戸 就明(b), 清水 勇博(ds)
2008年8月 スタジオ録音 (JAZZ LAB. : JLR0803)

僕はジャズ雑誌なるものを全く読まない。情報源は全てネットだ。最近ネットのジャズ・ショップで頻繁に目にした日本人プレイヤーがこの大友孝彰だ。何しろ、凄く若い。弱冠22歳という若さだ。関西学院大学に在籍中の身なのだ。関西の若手ミュージシャンで結成した"muz.quartet"でファースト・アルバムを既にリリースしているという。

ところで、このCDパッケージはシンプルな薄型。そして、収録時間も45分程度と短めだ。価格が1500円とリーズナブルなのも良い。日本盤では2800円や3000円という高値をつけるCDもある。そのために映像などの余計な付加価値をつけているけど、そういうのは無用の長物だ。早く、このCDみたいに1500円くらいが標準的な価格になってもらいたいものだ。
ジャケット・デザインがDAVE McKENNAの "THE PIANO SCENE OF DAVE McKENNA"(JAZZ批評 43.)を思い起こさせる。ジャケットから音がこぼれてきそうだ。

@"NIGHTMARE" 
何といっても22歳という若さだ。いきなりきました小気味の良いスイング感。ベースもドラムスもドライヴ感たっぷりのリズムを刻み、ピアノが気持ちよさそうに歌う。この曲の演奏に触発されて思い出したのがHORACE PARLAN "US THREE"(JAZZ批評 115.)。こういう、ドライヴ感満載で前へ前へと突き進む演奏は、昔だったら、当たり前の光景だ。今やジャズは、単純さよりも、より複雑な方向に向かっているので、むしろ、新鮮に聞こえる。波戸の力強いベースも清水のけれんみの無いドラミング、特に、ハイハットの心地よさが印象的だ。ピアノの大友の切れの良いピアノも特筆モノで3者の渾然一体となったドライヴ感を満喫できる。
A"COFFEE PLEASE" 
Cを除く全ての曲が大友のオリジナル。特にこの曲はセンスのよさが光る佳曲。ミディアム・テンポの心地よいリズムに酔い痴れよう。
B"EXPANDING RIPPLES" 
お定まりのように3曲目にボサノバ調が入っている。
C"WALTZ FOR DEBBY" 
この曲のみスタンダード・ナンバーに相当のアレンジを施している。他の名演との差別化を図っているのだろうけど、こんな手の込んだことしなくても十分なスイング感で差別化が図れている。小細工は必要ないね。
D"MORI" 
今度はワルツ。
E"EVENING GLOW" 
3拍子から4拍子へのシフトを繰り返して進む。

若者らしく快いスイング感に満ちている。これから先が楽しみなピアニストの登場だ。釣り上げたばかりのピチピチ跳ねる魚の如し。まだまだ伸び代がたっぷりと残っているから、これからもリスナーの期待にも十分応えてくれて、もっともっと素晴らしいアルバムを提供してくれることだろう。だから、焦ることはない。今回は4.5星にして、更なる成長を期待しよう。
そういえば、17歳でデビューした松永 貴志(JAZZ批評 136.)も今では23歳くらいになってると思うけど、どうしているのかなあ?  (2008.11.18)

試聴サイト: http://www.myspace.com/takaakiotomo



独断的JAZZ批評 513.