"US THREE"
PARLANの泥臭くグルーヴィなフレーズが鍵盤を叩く。
最高!軟弱なジャズメンはこれを聴け!
"US THREE"
HORACE PARLAN(p), GEORGE TUCKER(b), AL HAREWOOD(ds)
1960年スタジオ録音(BLUE NOTE CDP 7243 8 56581 2 9)

久しぶりに新宿のDISK UNIONで中古盤を何枚かゲットしたが、その中の1枚。
HORACE PARLANは小さい頃小児麻痺に罹り、その後、右手が不自由になったと聞く。その不自由さがPARLANの個性となって活きた。メロディやアドリブの大半を自由の利く左手で演奏するらしい。流麗とは言い難いが、逞しくも朴訥な演奏と言えるだろう。

GROOVY!タバコの匂いがぷんぷんする粘っこくも逞しさ溢れる演奏となっている。それをプッシュしているのがベースのGEORGE TUCKER。
RUDY VAN GELDERの手になる1960年の録音であることも付記しておこう。最近の軟弱なヨーロッパ・ジャズを聴きつけていると、このガッツ溢れる録音が、むしろ新鮮に聴こえるのが不思議だ。

@タイトル曲"US THREE" いきなりグルーヴィなベースのソロから始まる。その後、3者が一体となりアップテンポの演奏が展開される。このベースがいける!TUCKERのウォーキングは強烈なピチカートに裏づけされたビート感に溢れており、もう、これだけでスウィング感が湧き出してくる。本来、ベースが持っていなければいけない「音色」だ。
ブラッシュ・ワークも軽快にリズムを刻み、その上をPARLANの泥臭くグルーヴィなフレーズが鍵盤を叩く。最高!軟弱なジャズメンはこれを聴け!ピカイチの1曲。
A"I WANT BE LOVED" 流麗さや煌びやかさはないがしっとり系の演奏。
B"COME RAIN OR COME SHINE" 沢山のプレイヤーが演奏している名曲。しかし、ここでの料理の仕方は独特。やはりグルーヴィな雰囲気が一杯。

C"WADIN'" ベースの逞しいウォーキングで始まるミディアム・テンポのブルース。勿論、グルーヴィ。タバコの煙が立ち込める暗い地下の酒場のイメージ。
D"THE LADY IS A TRAMP" 珍しく軽やかなフィーリング。アフター・ビートを指で鳴らしたくなる。TUCKERの強靭なピチカート・ソロが堪能できる。硬く締まったいい音だ。ベースはこうでなくちゃあ。
E"WALKIN'" PARLANのピアノは時々手の不自由さを隠せないが、そんなことは気にしない、気にしない。
F"RETURN ENGAGEMENT" PARLANの手による軽快な曲。

全7曲、どれもタバコの匂いの染み付いたグルーヴィな演奏が多い。時々、手の不自由さを思わせるもたつきがあるが、仔細なことだ。
緊張感とドライブ感に溢れた@とスウィング感と楽しさのDがお勧めだ。

JAZZ批評 111.のWALTER BISHOP JR. TRIOの"SPEAK LOW"(1961年録音)の演奏を連想させるフィーリング〜泥臭さやタバコ臭さ〜がそこかしこに見え隠れする。録音時期から言って、こちらが手本。
両者とも良いベーシストに恵まれたことがピアノ・トリオとしての質を高めている。     (2002.12.31)


HORACE PARLAN

独断的JAZZ批評 115.