17歳という年齢のインパクトが大きかったことは否めない
若さに任せてゴリゴリと弾くピアノも凄いが、
しっとりと弾くピアノはもっと凄いと思う
"TAKASHI"
TAKASHI MATSUNAGA(p), DAIKI YASUKAGAWA(b), JUNJI HIROSE(ds)
2003年スタジオ録音(somethin'else TOCJ-68058)

このCDの宣伝を5月29日の新聞で見た。発売は前日の28日。30日にHMVに寄ってみたら試聴盤があった。1曲目を聴いてみた。宣伝文に負けずガリガリゴリゴリとピアノを弾いていた。迷わず購入した。
「弱冠17歳。5歳からピアノをはじめ・・・・・・」という宣伝文をみながら、日本人で17歳の少年がジャズをバリバリ弾いているということが印象に残った。果たして、宣伝文に違わぬ迫力とジャズ魂があった。

かつて、AKIKO GRACEの"MANHATTAN STORY"(JAZZ批評 101.)の試聴盤を聴いたときも「ぶっ飛んだ」が、今度も、「ぶっ飛んでしまった」。やはり17歳という年齢のインパクトが大きかったことは否めない。若さに任せてゴリゴリと弾くピアノも凄いが、しっとりと弾くピアノはもっと凄いと思う。

@"HOMEWORK" いきなりやってくれますねえ。邦題「宿題」だそうだ。アドリブでのドライブ感溢れる重低音と高音部の対比が面白い。
A"HIGH IN THE SKY" @に続いてこれもオリジナル。作曲家としても非凡だ。
B"BEAUTIFUL LOVE" ベースとピアノの絡みで始まるスタンダード・ナンバー。こういう演奏にこそ非凡なものを感じる。これが17歳だと?信じられない!こういうのを聴くと弱冠19歳の時にLEE MORGANが"CANDY"(JAZZ批評 64.)の中で演奏した"ALL THE WAY"を思い出すなあ・・・。
勢いだけで演奏していない大人の演奏。このCDの中のハイライト。

C"MELON" 16ビートのブルース。好みの分かれるところだけど、僕にとってはどうでもいい曲。
D"CARAVAN" この演奏スタイル、フランスのピアニスト・JACKY TERRASSONを髣髴とさせる切れ味の鋭さがある。多分、将来のジャズ界を背負っていく二人になるだろう。
E"NIGHT RIVER" オリジナルのワルツ。17歳でこんな曲書くなんて、これは天才だよ。何回も繰り返し聴きたくなる1曲。安ヶ川のベースも良く歌っている。

F"YESTERDAYS" テーマとアドリブの前半を7拍子で演奏している。若干、窮屈な感じ。正直なもので4ビートになった途端、活き活きとしたアドリブを取り始める。あえて7拍子にする必要性はあったのだろうか?
G"HIGHWAY BLUES" グルーヴィなブルース。
H"A CHILD IS BORN" 最後はピアノ・ソロ。

ジャズの世界に17歳も70歳もないのだけど、日本人で、しかも、この若さでパワフルな演奏をしているその一方で、歌心溢れる曲を作り、情緒たっぷりに歌い上げることが出来るなんてやっぱり非凡だ。どうかこの非凡さをすくすく育て上げて欲しいと願わずにはいられない。

余談だが、このCD、コピーコントロールCDでCD-Rへのコピーが出来ない。これは残念。オリジナルCDの1曲に加えたいのに・・・。
コピーコントロールする前にCD業界としてするべきことは一杯あるはず。売り上げ至上主義としか思えないような、あるいは、演奏する側の意思を無視した安直なアルバム製作が五万とある。CDの売り上げが落ちた理由はコピーが原因ばかりではないはず・・・と思うのだが。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2003.05.31)


TAKASHI MATSUNAGA

独断的JAZZ批評 136.