TRIO ACOUSTIC
粗いというか、「やっつけ仕事」的な印象を強くする
"GIANT STEPS"
ZOLTAN OLAH(p), PETER OLAH(b), GYORGY JESZENSZKY(ds)
2007年1-2月 スタジオ録音 (TAPAS RECORDS : TPRD001)

タパスレコードの発足趣意書を見ると「タパス(小皿料理)のように気楽に楽しんでほしい」とある。また、「あくまでも気まぐれです」と書いてある。そうか、気まぐれでジャズ・CDを出せる時代になったのだ!気まぐれってことはこの破壊的価格の1200円も、気まぐれで変わるってこともあるのだろうか?
既存のルールをぶち壊す快挙とも言えるが、その真価を発揮できるのは継続し世に定着したときであろう。それが達成できるまでは、やはり「気まぐれ」の自己満足で終わってしまうのだろう。「気まぐれ」でなく、「意地になって」やり通してほしいと思う。そして旧態依然としたレコード業界に大きな風穴を開けてほしいと思うのだ。
しかし、このCD、ジャズの巨人の名曲ばかりがずらりと並んだものだ。@から順に、DIZZY GILLESPIE, ABOB DYLAN, BWAYNE SHORTER, CPAT METHENY, DJOHN COLTRANE, EVASILI PAVLOVICH SOLOVIEV-SEDOY, FCOLE PORTER, GLEONARD BERNSTEIN, HBILL EVANS, ITHELONIOUS MONK。AとEは日本へお伺いを立てた結果、選ばれた曲らしい。「いかにも」である。

@"BE-BOP" "SONNY CLARK TRIO"(JAZZ批評 83.)の1曲目にあるそれと聞き比べてみた。躍動感と切れが違う。CLRAKのピアノはシングル・トーンで至ってシンプル。でも躍動し切れている。3人のコンビネーションも抜群だ。OLAHのそれは粗いというか雑というか・・・。
A"BALLAD OF THIN MAN" ベースのパターンで始まるが、何やら乗りが悪い。策に溺れたか?
B"PRINCE OF DARKNESS" ボゴボゴと締りのないベースの音色が4ビートを刻んでも迫力に欠けるし、ピアノの左手のバッキングが単調で重たい。
C"ALWAYS AND FOREVER" リリカルな演奏であるが、これがぴったりと嵌っている。
D"GIANT STEPS" テーマに至るまでの2分半の大仰なピアノ・ソロは全く余分だ。イントロからテーマへの必然性を感じない。テーマからアドリブでは、イントロとは別次元の高速4ビートを展開するが、これは面白い。
E"MOSCOW NIGHTS" ウーン、日本人の受けを狙ったな。
F"IT'S ALL RIGHT WITH ME" ベース・ソロのイントロで始まる。冗漫なソロが延々と2分半ほど続いてテーマに入る。これも取って付けたようなイントロで本当に必要だったの?と思ってしまう。テーマの後は高速4ビートを刻む。後半部にドラムスのソロが3分ほど用意されているが、そのまま終わってしまう。
G"SOME OTHER TIME" 多分、このグループはCやこの曲のようなリリカルな曲が得意なのだろう。活き活きとしているもの。
H"TIME REMEMBERED" 
I"WELL YOU NEEDN'T" 

ドラムスの録音レベルが低いので、矢鱈とベースが耳につく。しかも、ボゴボゴとした締りのない音色だ。
全体的な印象として、粗いというか、「やっつけ仕事」的な印象を強くする。もっと、丁寧なアルバム作りをしないと安いだけのレーベルで終わってしまうだろう。「気まぐれ」でなく「意地になって」やり通して欲しいと願うジャズ・ファンは多いだろう。   (2008.01.20)



独断的JAZZ批評 461.