ERNST GLERUM
古くて新しく、新しくて古い無骨な味わい

昔、忘れてきた落し物に巡り会ったような気分
"OMNIBUS TWO"
ERNST GLERUM(p), SEAN FASCIANI(b: @〜I), JOOST PATOCKA(ds: @〜I),
JESSE VAN RULLER(g: J), JIM GLERUM(eb: J), HENRY WIJNHARD(ds: J),
2007年3月 スタジオ録音(Jのみ2006年6月 ライヴ録音) (FAVORITE : 5)

ERNST GLERUMの2004年録音の"OMNIBUS ONE"(JAZZ批評 481.)はネットでもかなり評判になったアルバムだが、僕は購入しなかった。今回、"OMNIBUS TWO"が発売になったので、評判にあやかろうと購入してみた。"ONE "のジャケットはモノクロでバスも1台。乗客はいない。"TWO"ではご覧の通り、カラーで2台の連結。乗客も満員だ。ついでに言うと、ディスクのデザインは車のスピード・メーターのようだ。なかなかユーモアがあるね。
"ONE"の時とはメンバーも変更になっている。"ONE"ではドラムスにHAN BENNINKが何曲かで参加していたし、GLERUMはピアノとベースの両刀使いだったらしい。GLERUMは、過去には1994年のHAN BENNINKのリーダー・アルバム"HOME SAFELY"(JAZZ批評 281.)などで競演している。

@"SYMPHONY" トレイにディスクを置いて流れてきた音楽は僕の想像していた音楽にとても近かった。端的に言うと「古くて新しい」という感覚なのだ。多少、無骨な匂いの演奏するでありながらもドラムスは最後までブラッシュで通している。
A"AM I STUCK" 
聞き古された8ビートで演奏されている。いかにも古臭い演奏だ。
B"KLOOK YA" 
テーマとシングルトーンの面白さがマッチング。軽快にぶっ飛ばす4ビート。
C"LOST IN HAZE" 
マイナー調なテーマで日本人には受けそうだ。シングル・トーンとわずかしか入らないバッキングがいい塩梅に調合されている。後半は熱くガンガンと鍵盤を叩きまくる。
D"OMNIBUS TWO" 
お囃子太鼓のようなドラムスのソロで始まり、図太いピアノがガツンガツンとテーマを奏でる。音が踊ってるね。こいつぁ、小気味いいや。

E"RESTAURANT" 
一種、おどけたようなピアノの弾くテーマが印象に残る。
F"LE COEUR QUI JAZZ" 
高速のブラッシュワークに乗ってベースが4ビートを刻みピアノがシングルトーンで跳ねる。無謀運転風ドライブ感を堪能できる。TOMMY FLANAGAの演奏でお馴染みのC. PARKER作、"RELAXIN' AT CAMARILLO"(JAZZ批評 37.90.)のワン・フレーズが挿入されている。GLERUMのピアノは流麗とは言い難いが、無骨なりの味わいがある。
G"BILL'S HAIRDO" 
途中からテンポ・アップしてテーマに戻る。最後はフェード・アウト。
H"MAMBO BUNDOLO" 
テーマ良し、アドリブ良しで快いスイング感が満喫できる。そう、難しくすることばかりが能じゃないよね。シンプルでもこんなにも楽しいもの。
I"LEFT SHOE, RIGHT SHOE" 
芯の通ったというか骨太なというべきか、シンプル アンド パワフルであれば、流麗でなくても十分に楽しめることを実証して見せた。バラードであっても甘さに流されず、粒の立ったメリハリ・ピアノがいいねえ。
J"YOU ARE STUSK" 
ボーナス・トラック。この曲のみライヴ録音。何故このトラックをボーナス・トラックとして追加する必要があったのか?これこそ、余計なお世話と言わずに何と言おう!はじめからないほうが良かった。アルバムとしての統一感も損なわれるし、第一、演奏そのものも面白くない。全く余計なことをしてくれたものだ。

このアルバムは、最近の流行に真っ向勝負で敢然と立ち向かう潔さがある。すなわち、シングル・トーンでいたってシンプルにスイングするということ。
音符過剰でテーマやアレンジに凝るという最近のジャズに対するアンチテーゼでもある。昔、忘れてきた落し物に巡り会ったような気分。
こいつぁ、嬉しいわいとうなずきながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2008.01.12)



独断的JAZZ批評 459.