GEORGE GRUNTZ
リリシズムが溢れ、なおかつ、冷静沈着な演奏で「危なっかしさ」がないのだ
贅沢を言えば、そこが物足りない
"RINGING THE LUMINATOR"
GEORGE GRUNTZ(p)
2004年12月 スタジオ録音 (ACT 9751-2)

多分、
GEORGE GRUNTZの名前を聞いて、その名をご存知の方は相当、昔からジャズをお聴きになっていた方だと思う。こう言う僕もこのGRUNTZの名は30年ぶりに聞くくらいなので、なんとも気の長い話だ。GRUNTZの名前を見て1968年録音のPHIL WOODS & HIS EUROPEAN RHYTHM MACHINEの"ALIVE AND WELL IN PARIS"(JAZZ批評 52.)を思い出した。このアルバムは1900年代を代表するワン・ホーンカルテットの傑作と言って間違いないだろう。そのカルテットでピアノを弾いていたのがこのGRUNTZ。
更に、ベースを弾いていた
HENRI TEXIER(b)の1991年録音の"THE SCENE IS CLEAR"(JAZZ批評 274.)を紹介したのが今年の6月。
ドラムスの
DANIEL HUMAIRは1999年録音のANTONIO FARAOの"BORDERLINES"(JAZZ批評 97.)で共演している。
御大、
PHIL WOODSは2000年録音のGEORGE ROBERTの"SOUL EYES"(JAZZ批評 174.)で共演している。
いずれ劣らぬ好演盤だが、この4者が勢揃いした"ALIVE AND WELL IN PARIS"には叶わないだろう。今から38年も前の録音にも拘わらず、今聴いても瑞々しさ、激しさ、躍動感に溢れている。

翻って、このアルバムであるが、そのGRUNTZのピアノ・ソロ・アルバムだ。GRUNTZはその後、アレンジャーとして、また、ビッグ・バンドのリーダーとして活躍してきたそうだ。


@"MOVEMENT 1:POETRY OF WHEELS" 
A"MOVEMENT 2:POETRY OF LIGHTS" 
B"MOVEMENT 3:POETRY OF LINKS" 
C"ILL USED ILLUSIONS" 
D"ECARROO TAKE 1" 
E"MY FOOLISH HEART" VICTOR YOUNGの名曲。しっとりとしてリリシズムに溢れた演奏だ。
F"WELL YOU NEEDN'T" THELONIUS MONKのひょうきんな曲。

G"DELUSIONS REDEEMED" 
H"ECARROO TAKE 2" 
I"BLUE DANIEL" 
J"I LOVES YOU PORGY" GEORGE GERSHWINの名曲。これも美しさと哀しさが味わえる。
K"INTERMEZZO" 
L"UNDER ONE MOON" 
M"A NIGHT IN TUNISIA" DIZZY GILLESPIEの名曲。躍動感が溢れガッツある演奏。
N"MEETING POINT" GRUNTZのオリジナル。この演奏はとても良いね。とてもナチュラルだし、一番、感情表現が出来ているのではないだろうか。

このアルバムは、なんて言うか、全体的に「よそゆき」な感じなのだ。リリシズムが溢れ、なおかつ、冷静沈着な演奏で「危なっかしさ」がないのだ。贅沢を言えば、そこが物足りない。

1968年に"ALIVE AND WELL IN PARIS"で一緒にプレイした4人のミュージシャンがそれぞれの道を歩み、少なくとも1990年代までは各々が現役として頑張っていたようだ。ジャズ・ミュージシャンの息の長さを感ぜずにいられない。
これらの4人のアルバムをひとつひとつ揃えるのも良いが、ここは1枚、"ALIVE AND WELL IN PARIS"(JAZZ批評 52.)をラインナップに加えて、その4人の「凄さ」を堪能していただきたいと思うのだ。各々の力が100%、いや、120%発揮されたアルバムだと思う。裸の魂をぶつけ合ったそのインタープレイの凄さをジックリと味わっていただきたい。   (2005.11.10)



独断的JAZZ批評 305.