STEVE KUHN
録音の音色をとやかく言わなければ、良いアルバムだと思う
"DEDICATION"
STEVE KUHN(p), DAVID FINCK(b), BILLY DRUMMOND(ds)
1997年10月 スタジオ録音 (RESERVOIR MUSIC RSR CD 154)

STEVE KUHNと言えば、沢山のアルバムが発売されているが、僕の所蔵盤と言えば、前掲の"1960"(JAZZ批評 303.)と "OCEANS IN THE SKY"(JAZZ批評 82.)の2枚しかない。今までにKUHNのアルバムを購入するチャンスはいくらでもあった。しかし、そのたびに"OCEANS IN THE SKY"と比較して今一歩ということで現在に至った。殊に、日本プロデュースのアルバムはスタンダードのオンパレードとヌードまがいのジャケットで「売らんがな」の姿勢が見え透いて、どうも買う気になれなかった。


今回のアルバムは、ご覧の通りKUHN、その人のアップ写真で、「まあ、いいか!」
このアルバム、レコーディング・エンジニアがRUDY VAN GELDERである。VAN GELDERと言えば、今までに数多くのジャズのレコーディングを担ったジャズ録音の第1人者と言われているのではないだろうか。
しかしである。僕はこのアルバムの、この録音が好きでない。非常に「電気の匂いのする」録音なのだ。このことは先に紹介した"OCEANS・・・"と比べていただければ直ぐに分かると思う。特にベースの音を聴き比べると"OCEANS・・・"の方は「アコースティックな木の箱の共鳴がある音」なのに対し、"DEDICATION"は「弦の振動だけをピックアップで拾ったという音」なのだ。あたかもエレキ・ベースそのものの音色なのだ。そういう意味ではピアノも部分、部分で電気ピアノと見紛う音色がしている。
この辺は好みの問題なので、如何ともし難いが、個人的にはそのことが「実に惜しい!」と思うのだ。

@"DEDICATION" 
出だしのピアノはあたかもエレピのような音だし、ベースのチープな電気音が悲しくもある。
A"THE ZOO" 
KUHNのオリジナル。ボサノバ調でなかなか良い曲だ。
B"I WAITED FOR YOU" 
C"EIDERDOWN" 
D"PLEASE LET GO" 
Cと同様にSTEVE SWALLOWの書いた曲。このS. SWALLOWは昔、アコースティックベースを弾いていた(JAZZ批評 74. "DUSTER")が、逸早くエレキ・ベースに転向したプレイヤーの一人だ(JAZZ批評 7. "SUMMERTIME")。VAN GELDERはそれを意識したわけでもあるまいに・・・。

E"IT'S YOU OR NO ONE" JULE STYNEの佳曲。この曲の名演と言えばJOHN HARRISON Vの"ROMAN SUN"(JAZZ批評 167.)が直ぐに想起されるが、この演奏もスイングしていてなかなか良い。
F"FOR HEAVEN'S SAKE" 
G"LIKE SOMEONE IN LOVE" 
H"BLUE BOSSA" 
イージーリスニングなボサノバ調。

RUDY VAN GELDERともあろう人が何故、このような録音をしたのか僕には理解できないが、もともとアコースティックな音色を狙っていたのではないのかも知れない。
個人的には、録音の音色をとやかく言わなければ、良いアルバムだと思う。3者のバランスもいいしスウィングもしている。肩肘張らずにリラックスして楽しめるアルバムだ。

同時に、STEVE KUHNのアルバムをお探しの方は是非とも"OCEANS IN THE SKY"を聴いていただきたい。ベースにMIROSLAV VITOUS、ドラムスにALDO ROMANOというサイドメンは凄い!アコースティック・ベースの音色に酔い痴れるアルバムでもある。聴けば分かる!
   (2005.11.03)



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独断的JAZZ批評 304.